らんかみち

童話から老話まで

二度漬けの誘惑に負け

2011年07月20日 | 酒、食
 串カツのソースと豚カツのソースはどう違うのかと問われ、自信を持って答えることのできる人が今治にどれだけおられるでしょう。というか、愛媛県に串カツの食文化は開花していない、とする説さえ聞かれるのです。

 かような事情により、ぼくが専門店で「串カツ」と呼ばれるものを初めて食べたのは大阪でした。小さな繁華街でも串カツ専門店が普通に存在するほど、関西ではポピュラーな食べ物だし、ジャンジャン横町なんて「串カツ通りか?」と思うほど多くの店が軒を連ねています。

 では大阪ならどこの店でも串カツが美味いのかといえば、もちろんそんなことはありません。どこがどう異なるのか、簡単なのに味の良し悪しに差の出る料理だと思います。
 名古屋では八丁味噌にみりんなどを加えた、見かけコッテリの「味噌カツ」が多いかと思いますが、あれって見た目から想像するほど濃厚な味ではありません。

 八丁味噌を付ける串カツも好きですが、関西は串カツ専用ウスターソースの壺に、串を手に持ってジャブ漬けするのが主流です。その壺の外にはたいがい「二度漬け禁止!」の注意書きがあり、「ということは、二度漬けするやつがいるんだ!」と、初めのうちは躊躇しながらソースにカツを漬して食ったものです。

 ところがこのソース、意外にも薄口で甘めということもあり、気がついたらうっかり二度漬けやりそうになって、仲間から「二度漬けお断り!」といった警告を受けたりするのです。
 そんなだから「いつの日にか二度漬けで串カツを食べてやる」と、長年にわたって屈折した野望を抱き続ける関西人は多いと聞くし、自分もその一人なのですが、ついに念願の時を迎えました。

    

 この商品、関西では普通に売っていますが、今治でこれを入手するのにどれほどの労を費やしたことでしょう。味は案の定、女子どもにも受けそうなフルーティーかつソフトに設定してあります。
 なるほどな、女の子たちがガイドブックやi-phoneなどを片手にジャンジャン横町を徘徊し「キャー、二度漬け禁止よ~!」みたいなパフォーマンスをやりたがるわけだ。関西が懐かしくなる味でした。