らんかみち

童話から老話まで

病院という姥捨て山

2011年07月15日 | 暮らしの落とし穴
 病室の母を訪ねて、ぼくの顔が分からなかったときのことを思うと、クリニックの階段を上る足取りも重くなるんですが、母はすこぶる元気でした。同室のお婆ちゃんが話し相手になってくれるだけでなく、母のことを尊敬しているのだとか。

 違うんですよね。そのお婆ちゃんは、三人部屋のうちの一人を仲間はずれにしようと企んでいるのかもしれません。部屋が暑いんだけど、一人だけ寒がりの人がいて、エアコンをつけさてくれない。1対1なら遠慮もあるけど、母を巻き込んで2対1なら、と目論んでいるのでしょう。

 まあ何にしても話し相手がいるというのはありがたい。家にいるときは兄が酒を飲みながら話し相手になったりするけど、「母ちゃんは飲み屋のホステスじゃないぞ、ええかげんに寝かさんかい」というまでやって、あれも良し悪し。

「お母さんは腹をくくっていると思うよ。息子に下の世話なんかさせられんから、施設に入るって」
 上の姉から電話があって、母は自分でそういったらしい。まだそんな状況には至っていないけど、早晩行き着くところだと。姥捨て山を思い出して、その言葉が胸につかえました。