らんかみち

童話から老話まで

お遍路さんのお接待に蕎麦を打つならまずは種まきから

2009年08月25日 | 酒、食
 四国八十八箇所といってもウドン屋巡りじゃなく、お寺の巡拝、つまりお遍路さんのことですが、かつて歩いて回ったとき多くの『お接待』に与ったものです。金銭であったり車に乗せていただいたりといったお接待なんですが、それはお遍路さんと同行二人(どうぎょうににん)で歩いてくれるお大師様=空海に対してのもだと考える人もいれば、今を生きて遍路道を歩いている一人の人間に対しての敬意と考える人もいるようです。(あるいは両方)
 
 そういうのが心の負担になるからといって断る人もいるし、何かプライドのようなものが邪魔をする人もいるでしょう。またお接待する側の気持ちに立って喜んで受ける人もいるでしょう。最初の頃はぼくも戸惑いましたが、いつしか喜んで受ける側に立つようになったのは、金銭ならいつかお返しすればいいことで、車なら歩き直せばいいんだろうと安易に考えたからです。
 
 ですが住所氏名も判らない方にいただいたものは返しようがない、かといって判っている方に返そうとしても無理なんです。やってみましたよ、下手なことをしたら更なるお接待で返り討ちにされるのが落ちです。
 
 それで、お返しするという考えは捨てました。だって「あなたにあげたんじゃなく、あなたと共に歩いておられるお大師様に差し上げたのです」といわれたからといって「じゃあぼくは、あなたの後ろに憑いている背後霊にお返しします」などと答えようものなら、これはもうほとんど売り言葉に買い言葉。喧嘩売りにきたんか!
 
 ぼくにできることは、お接待をして下さった方々の志を継ぐこと。どこの誰か分からないお遍路さんに見返りを求めないお接待をすることで、名も知らぬ方にいただいたお接待に報いることにもなろうし、返り討ちにしてくださる方にも納得していただけるのではないでしょうか。
 
 そんなわけで、来年の島四国八十八箇所には手打ち蕎麦のお接待などさせていただこうか、と口にするや「お盆開けに植えなさい」と蕎麦の種を下さる方もあり、ご近所さんに畑を借りたいと申し出ました。すると快い返事をいただいたばかりか、ミニトラクターも貸してくださるし、一緒に畑を耕してくれたのです。
 
 
 
 畑を耕すのは草を刈ってミニトラクターで土を掘り返すことなんですが、勝手にトラクターがやってくれると思ったら大間違いでした。何年も耕してない畑は土が固くしまっていて、放っておいたらトラクターが何もしないで走り去ってしまうんです。最初は押さえつけておかないといけないんですが、3回目を走らせてようやく勝手に耕してくれました。
 
 
 
 夕方にはなんとか必要な土地の半分が耕せたのですが、熱中症になりそうなほど疲れました。お接待って、生易しいもんじゃないんですね。