らんかみち

童話から老話まで

メタボを官僚機構が心配してくれた結果はこうです

2009年08月05日 | 暮らしの落とし穴
 島から童話講座の開かれる福山市への往路は朝日と対面しながらバイクを走らせます。「しまなみ海道の多島美を愛でながら、ささやかな旅ではあっても爽やかさがうらやましい」みたいなことをおっしゃる方もおられるし、実際そう感じる幸せな瞬間もあります。渋滞で停車を余儀なくされるまでは……。
 問題は復路、いえ往路を含め全体を通して最も辛いのは、西日に抗いながら無事に帰り着いた翌朝、目の周りだけが日焼けしている我が狸面を鏡が映し出した瞬間なのです。フルフェイス・ヘルメットの窓の部分だけが日光に当たるので、目も当てられない惨状になるんですが、その面でもってメタボ座談会に出かけました。

 メタボ座談会というのは、メタボ対策講座(自治体主催で無料)を受講した成れの果てが集まるOB会、と銘打ってはいるものの、その実態は保健師さんたちによる受講者の追跡調査。どうしても出なくちゃならないってことはないし、爺ちゃん婆ちゃんの中に長く身を置いて、そこに馴染んでいる自分を発見しておののきたくもないしぃ……。
 なのに保健師さんから電話がかかってくるんですよね、行かないと。「オレはもうメタボじゃねー!」と断れるほどスリムじゃないし、彼女たちとは今後も顔を合わせる機会があるので無下にもできません。

「タヌキだ、タヌキが来た」
「しかもメタボのタヌキだ」
「ポンポコ・メタボだ」
 遅れて座談会に出席すると、ぼくの面に関するひそひそ話しが燎原の火のように広がっていくではありませんか。同じメタボのくせに、そういうことは陰で言わんかい、と無礼にもほどがあろうってもんです。
 かくしてポンポコ・メタボなる異名を冠され、童話講座の副作用はこんなところにまで! と、おののいてしまったのでした。

 メタボ講座なんていくらやっても医療費の削減につながるもんか、そんなことやるより診療報酬の不正請求に目を光らせた方がなんぼか効果的に違いない。だれもがそう感じていたとしても、目を光らせる側と不正請求を繰り返す側が同じメタボのタヌキならぬ同じ穴のムジナなら、穴そのものを掃除せんか! などとよく知らない制度の話はさておき、実はすごい効果の現れたお爺ちゃんがいたのです。その爺ちゃんには保健師さんたちも驚かされました。
「講座が終わったのにまだグラフをつけている、しかも歩いた日の天気まで、すごい!」
 爺ちゃんは1日に2時間歩き、その日の食事や天気まで記録していて、子どものころ「夏休みの友」をサボっていた記憶の蘇ったぼくは、「後で写させてね」と思わず口走ってしまいました。

 爺ちゃんは見た目がすっきりしたばかりでなく、運動するから酒を飲んでも美味しいんだそうで、いびつに体重の減ったポンポコメタボのぼくとは大違いの成果があったようです。
 メタボ講座が官僚の机上のシミュレーションだったとしても、それなりの結果が出たのなら、願わくば保健師さんたちの採取したデータのみならず、現場の声を汲み取る度量が官僚機構にあれかし。