らんかみち

童話から老話まで

中野振一郎さんのチェンバロコンサート

2008年09月27日 | 暮らしの落とし穴
 友人を見舞った後、場末の飲み屋に顔を出したんですが、一年もご無沙汰していると、あんな店にもニューカマーの顔があったりして驚きます。マスターも常連客も老いていく一方ですが、客の新陳代謝はゆるやかに続いているようです。

 いつもの気のおけない飲み仲間(というより騒々しくて鬱陶しい)とは一年ぶりでも、たまにしか開かない店なので全く通常の雰囲気でした。 そんな中に、
「娘の手術が成功してね」
というニュースも聞けました。幼いころからずっと病院暮らしで、心臓と肺の同時移植しか助かる見込みは無い、とまで宣告されていた彼女だったのに、「牛の組織を使って心臓に隔壁を作った」という最先端の手術が上手くいき、移植をしなくても歩けるようなったと。これには沈んでいたぼくも、少し晴れ間が見えた気分でした。    

 今治に帰ってきて中野振一郎さんのチェンバロコンサートを聴きました。突発性難聴を患ってから音楽を聴くのが苦しかったんですが、日本が誇る世界的チェンバリストのリサイタルがたったの1000円ときたら逃す手は無いでしょう。この方の弟子であるチェンバリストのコンサートも関西で明日開かれるんですが、そちらは4000円。
 値段の問題じゃないんですが、さすがにもう一度あちらに行くエナジーは残ってませんでした。    

 それにしても中野さんのいつものトークは今宵も冴えまくり、ビギナー向きとはいえ大ホール一杯の客を沸かせてました。  
 落ち込んだときは音楽を聴くって習慣を忘れて久しく、ずっとうつむいて生きていたのを今夜のコンサートで気づかされました。音楽の力は哲学や文学を超えたところにあるんですね。