らんかみち

童話から老話まで

韓国人「恨」の感情

2006年11月11日 | 酒、食
「韓国料理を食いに行くって、いったいどこに連れて行くつもりやねん?」
 友だちのTEL師がそう文句を言うのは無理も無い。彼に送ったメール の内訳は、
「土曜日、二駅となりの町に韓国料理を食いに行きませんか?」
と、それだけだったのだから。しかし文句を言う前に、ホイホイついてくる無防備極まりない方もいかがなものか。

 ぼくに対する信用が絶大というわけでもないのに、足元の悪い中を朝も早くから出てきたのは、彼が暇をもてあましているからではなく、 何か良く分からないもの、そこはかとない冒険心みたいなものの琴線を、ぼくの舌足らずなメールが爪弾いたからだろうか。実は、彼を連れて行った行った先は、在日韓国人のオモニが多く入所している特別養護老人ホームだったのだ。

 特別養護老人ホームなんて行ったことが無いぼくだが、TEL師は実働はしてないにしても、ケア関係の会社の専務という肩書きを持っているやに聞いている。 つまり彼は、「そろそろケアしてもらわにゃいかんな」という年齢でありながら、「ケアして欲しいなら我が社にお任せあれ」といわねばならない、時間のみに解決を委ねることのできる葛藤を抱えている御仁で、 早い話が入所していても不思議ではない人なのだ。

  朝の11時に開会式が始まって、韓国から招いた舞踊団の踊り子が歌や踊りを披露してくれたが、一時間あまりの歌舞音曲の最後に歌われた「アリラン」のころになると、入所しているオモニたちばかりでなく、歌っているプロの歌手まで泣き濡れているのを見て、「ああ、これが『恨(はん)』という感情なのかな?」 と、ぼくはどこかで聞いた解説を思い出していた。

「恨」というのは、「うらみ」という意味ではなく、「心がそこに留まる」という意味だったと思う。情念とか、思い入れとかいった感情で、日本人には簡単に 感情移入できるものではなさそうだ。それはつまり、日本人の「わび、さび」の感覚を外国人に分かってくれというのに似ているのかもしれない。

 最後にもう一度「アリラン」を皆で合唱して、ふとTEL師を見たら、泣いてるやん! どうやら彼には「恨」の感情が理解できるみたいだ。どのみちルーツを同じくしている日本人と韓国人なのだから、古い人ほどこの辺のことが共感できるんだろうか?  とりあえずぼくは、美味しい韓国料理でお腹いっぱいになって、「満」を知った。

ええ加減にせんかい、NHK!

2006年11月11日 | 暮らしの落とし穴
 こらっ! NHK、昨日の「プロフェッショナル・仕事の流儀」を観たけど、誤解をまねくような構成にするんじゃない。そりゃ、あのウィスキーのブレンダーは立派だろうが、あのウィスキーメーカーまでが立派な会社のように聞こえるじゃないか。
 
 確かにあのメーカーは株式の公開をする必要の無いほど儲かりまくっている超優良企業だろう。ひょっとして、規模は世界一のウィスキーメーカーかもしれん。だけど販売している商品の中には、首をひねりたくなるほど節操のない味付けがされたものが多い気がする。それなのに、■瓶という名のウィスキーは、ビールで言えばアサヒのスーパードライ並の圧倒的な売り上げを誇るのだそうだ。
 
「■瓶を買うお客さんはね、皆さん『これだけは昔とおんなじ味がするな~』とおっしゃいます。何にもわかっとらんのですな」
 酒屋のオヤジさんがそういって苦笑した。確かに昔と良く似た味を維持しているが、その製法はまるっきり違うものらしい。つまりブレンダーが非常に優秀なのは分かるが、企業理念は褒められたものでもないのだという。
 
 童話教室の先生は、ドキュメンタリー作家としても名をはせているのだが、
「ドキュメンタリーだから嘘は書きませんが、事実を羅列しただけでは読み手を感動させることは出来ないのです」
と、おっしゃっておられた。つまりそれが構成の妙というもので、腕の見せ所なのだろう。そういった意味で、昨日の番組は上手だと思う。が、あのブレンダーの苦しそうな、申し訳なさそうな表情はどうよ! そんな立派なことばかりしてるんじゃないんですよ、と顔に書いてあった気がしたのは、ぼくのS社に対する偏見だろうか。