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ぽかぽか春庭「日本語のひまわり各国語のひまわり」

2012-08-22 00:00:01 | エッセイ、コラム
2012/08/22
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>ひまわり蘊蓄(4)日本語のひまわり各国語のひまわり

 ヒマワリの伝来、日本へは、17世紀にロシアを経て中国から江戸に到来したことを、お話ししました。
 スペインから秘密の花が流出し、フランスやロシアに咲くようになったのが16世紀末から17世期はじめなのですから、極東に至るまで、きわめて短期間での伝播だったことがわかります。

 中国にヒマワリが伝わった当初は「丈菊(じょうぎく)」と呼ばれていました。茎の長さが一丈(1.8m)くらいもあるための命名です。別名は「迎陽花」。

 1617年に書き表された、王路の著作『花史左編』によると。
 「其茎丈余亦堅粗毎多直生雖有傍枝只生一花大如盤盂単弁色黄心皆作窠如蜂房状至秋漸紫黒而堅劈而袂之其葉類麻而尖亦叉名迎陽花」
 (この植物の)茎は一丈に余り、堅く荒い茎はまっすぐに伸び、茎ごとに花がひとつ咲く。花はお盆のような大盤で、花びら一枚一枚は黄色一色である。黄色い花びらの中心には蜂の巣のようなものがあり、秋になるとしだいに黒紫色になり、堅くなる。葉は麻の葉のように先が尖っている。丈菊の別名は「迎陽花」である。(拙訳:春庭)
 
 ヒマワリを漢字で「向日葵」と書くのは、日本へひまわりを伝えた中国語の漢字名を、日本語の「ひまわり」という呼び方にあてたもの。
中国名:向日葵 xiang ri kui シャンリークイ、葵花(kui hua)クイファ

 同時代、1600年に南蛮ジャガタラ(現在のジャカルタ)から伝来したジャガタラ芋=ジャガ芋は、連作が難しいことと芽に毒があるため食用としては普及せず、紫色の花を観賞するために栽培されました。ジャガイモは飢饉の際の「お助け芋」であり、一般の日常的な食用として普及するのは、明治になって男爵いもなど品種改良が行われて後のことになります。
 ヒマワリも日本では食用としてではなく、鑑賞用として栽培されました。

 江戸時代は、園芸が盛んで、世界史的にみてもたいへん高度な園芸種開発が行われました。もともと徳川家康が大の薬草マニアで、本草学が大好き、二代秀忠は椿の新種作りに精をだし、三代家光は盆栽作りに執心、ということから武士階級の趣味として広まったのです。

 江戸時代の園芸栽培で最初に盛んになったのは、椿です。二代将軍徳川秀忠が愛好し江戸城内に椿園を作りました。その後、新種栽培の流行は、朝顔、菖蒲などでも競われ、各地で新種栽培が行われました。大名や旗本の「部屋住み」として捨て扶持で一生をすごす次男以下の武士や隠居の大名、公家たちは、新種の花を作り出すことに熱中し、それを博物誌として書き残すことが各地でなされました。
 たとえば、熊本藩では「武士のたしなみ」のひとつが園芸で、肥後六花(肥後椿、肥後サザンカ、肥後朝顔、肥後芍薬、肥後花菖蒲、肥後朝顔、肥後菊)は、今も熊本の名花として知られています。

 竹橋の国立文書館には、江戸城紅葉山文庫の蔵書がそっくり受け継がれています。将軍や大名達が熱心に集めた博物誌の展示を見て、すごい!と見入ったことを思い出します。

 これらの博物誌に描かれたヒマワリは、というと。 
 中村斎『訓蒙図彙』1666(寛文6)年には、ヒマワリ、ヒナゲシ、ギボウシ、イワレンゲなどの図が初めて描かれました。『訓蒙図彙』は、日本最初の百科事典といえる本です。
 ヒマワリについては、
 「丈菊」じょうきく・てんがいばな(天蓋花) 〇丈菊は一名ハ迎陽花という.日輪にむかう花なり.よって日車ともいう.花菊に似て大い也.色黄又白きもあり」と、説明されています。

 絵入り百科事典『訓蒙図彙』は、江戸の園芸家によく読まれ、版を重ねました。初版から120年たった1789(寛政元)年版の『訓蒙図彙』
 「丈菊 てんがいばな」の項

挿絵を描いたのは、下河辺拾水(生年不詳 - 1798(寛政9)日本版ボタニカルアートの嚆矢にあたります。

 元禄時代(17世紀末ごろ)には、「ひまわり」という名前が広まっています。
 伊藤伊兵衛『花壇地錦抄』(1695)には、「日廻(ひまわり)(中末) 葉も大きク草立六七尺もあり花黄色 大りん」また、1699年の『草花絵前集』には、「○日向葵 〇一名日廻り、〇一名にちりん草、花黄色なる大りん、草立も八九尺ほど亦は十尺ばかり、何所に植ても花は東へ向て開、八九月に咲。」と書いてあります。

 伊藤伊兵衛は、現在の豊島区駒込に住んでいた江戸一番と言われた植木屋で、当主は代々、伊藤伊兵衛を名乗りました。、1699年の『草花絵前集』を著したのは、元禄・享保期(1688-1735)に活躍した伊藤伊兵衛三之烝(さんのじょう)と伊藤政武(まさたけ)父子です。

 元禄から宝永と年号が変わった、徳川綱吉の時代の末期、1709年に貝原益軒が『大和本草』を出版。「巻之七 草之三 花草類」には
 「向日葵 ヒフガアオイ、一名西番葵.花史ニハ丈菊ト云.向日葵モ漢名也.葉大ニ茎高シ六月ニ頂上ニ只一花ノミ.日ニツキテメクル.花ヨカラス.最下品ナリ.只日ニツキテマハルヲ賞スルノミ.農圃六書花鏡ニモ見ヱタリ.国俗日向(ヒフガ)葵トモ日マハリトモ云.」
と、記しています。日向葵(ヒュウガアオイ)、西番葵、丈菊、など、ヒマワリの別名がたくさんあるということは、伝来後、各地への伝播があり、それぞれの地での呼び名があったことが推測されます。

 大名を博物学に駆り立てたのは、「趣味」でもありましたが、領内に有用な農作物を普及させたいという所領経営のねらいもありました。江戸時代後期には、各地に「博物学サークル」が出来て、薬品会、博物会も開かれました。平賀源内(1728 - 1779)は、そういう仲間のひとりでした。

 めずらしい種類の花が作り出されると、一鉢何百両(今の価格で数千万から1億)という値段さえついたということです。
 江戸時代後期になると、博物学、昆虫や魚の絵また植物画に熱中した大名や公家が、数多くいました。ヒマワリ絵画で紹介した酒井抱一も姫路藩お殿様の四男坊です。

 公家のトップ、近衞家熈(このえ いえひろ1667-1736)は、落飾後は豫樂院(よらくいん)と号しました。書画にすぐれ、『花木真写』は、陽明文庫(近衛家伝来の古文書、書画などの保管所)に残されました。2005年に『花木真寫-植物画の至宝』として、淡交社から編集復刻されています。

 近衛豫樂院の描いた日向葵


 日本語でヒマワリを表すことば。『日本方言大辞典』(小学館)『花の歳時記大百科』(北隆館)などから、各地のひまわりの呼び方を抜粋すると。

<太陽の花、太陽に向かう花の意>
日廻り、日回、向日葵(ひまわり)日向(ひむき)日向草(ひむきくさ)日向葵(ひなたあふひ)日向葵(ひゅうがあおい)照日葵(しょうじつき)日蓮草(にちれんそう)望日蓮 転日蓮 迎陽花など。

<丸い形、輪っか、車輪の形の花の意>
わっぱ花 日車(ひぐるま)日車草(ひぐるまそう)天車(てんぐるま)日輪草(にちりんそう)

<外来の花の意>
天竺葵(てんじくあおい)西半葵(さいばんき)西番葵

<その他>
天蓋花(てんがいばな)羞天花(しゅうてんか)ねっぱばな、めっぱ

 日本では、大陽にまつわる呼び名が各種ありました。各国語のヒマワリを調べてみると、ほとんどは「大陽+花」という意味の語になっています。でも、各国の方言をしらべてみれば、また違う呼び名があるのかもしれません。 

 世界各国の言語で、ひまわりをあらわすことば。
学名:Helianthus annuus L. (ヘリアンサス アヌウス)
属名は「helios 太陽」+「anthus 花」、種小名annuusは「一年生の」の意

・ロマンス語系
<「太陽を追って回る」の意>
スペイン語:girasol(ヒラソル・イラソル)girar= 回す、回る + sol(太陽)
ポルトガル語:girassol(ヒラソーウ)girar=回す、回る +sol(太陽 ソーウ)
イタリア語:girasol(ジラソル)girare=回す、回る+sole(太陽) girasole(ジラソーレ)
フランス語:tournesol(トゥルヌソル)tourne=tourner(まわる)の過去分詞 + sol(太陽) soleil(ソレイユ 太陽、日光、ひまわりの花)

・ゲルマン語系
<「太陽の花」の意>
英語: sunflower  sun(太陽)+flower(花)説と、sun(太陽)+following(追う)説がある。
ドイツ語:Sonnenblume(ゾネンブルーメ)Sonnen=太陽の +Blume=花
オランダ語:zonnebloem (ゾンネブローム)

・その他
エスペラント語:sunfloro(スンフロロ) (suno=太陽)+花
ギリシャ語:  ηλιανθος(イリアンソス)
ロシア語: подсолнечникパトソールニチニク

韓国語: 해바라기(ヘッパラギ)
マレー語: bunga matahari(ブンガマタハリ) ブンガ=花 マタハリ=大陽
タイ語: Dork-taan-tawan(ドークターンタワン)
スワヒリ語:alizeti(アリゼティ)

 ほとんどの国のことばで、「大陽の花」という意味になっています。

<つづく>
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2 コメント

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こんにちは (nannjyai)
2012-08-22 14:14:15
暑いですね・・・毎日!

太陽の花、太陽を向く花・・・この花ばかりは、世界広しと言えども共通のイメージで名前を付けていますね!

この頃はヒマワリ油なるものを目にすることもありますし、迷路にも一役買っている様子。
油は未だ使用してことありませんが・・・。
なんじゃいさん (春庭)
2012-08-22 23:31:59
最近のひまわり油にはオレイン酸が多く含まれていて健康志向なのだそうです。

お孫さんといっしょにひまわり迷路であそぶのもよさそうですね。
富岡市丹生のひまわり畑、来年夏のお孫さんとのふれあいで迷路で遊んでみてはいかがでしょう。

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