映画「廃都」製作日記

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時間について

2016年10月09日 08時03分18秒 | 映画製作日記

ドキュメンタリーは状況のドラマだし、ドラマは役者のドキュメンタリーだと思う。

記録されたものは、現実であれドラマであれ、書かれた「本」と演出と編集の果に姿を見せる。

事実も真実も、曖昧な闇の中にある。

こう見たという闇。

こう思うという闇。

全ては、虚構の果に辿り着く地点にあると思うのだ。

翻案されないものがあれば。

そうではないだろうか、翻案され読み替えられないものがあれば僕たちはその前で

立ち尽くすこともできるのに。

事実といい真実といい、判断は当事者以外に委ねられる。

世の中は、絶えず見知らぬ他者によって裁かれる、とりとめもない裁判所のような

ものかもしれない。

金銭欲。名誉欲。支配欲。それらが果たされない時、他者へと向かう悪意は静謐で

激しいものではないか。

外部からは見えない感情の連鎖。

自分自身すらも欺くほど、人の心の奥深くに秘められたもの。

太古から変わらない人の心の無明。

時計の針はホボ同じように進むが、夫々の時間は違う流れをもっている、と思う。

時計の速さと、夫々の肉体が持つ速さには全く別なものがあるのだ、と思う。

昨日、駅前のロータリーで久しぶりにチンドン屋を見た。

ジンタでなくジャズを演じていた。

どこか違う国の言葉を話す一団が歩道いっぱいに闊歩している。

駅前広場の隅の方で、屋台の焼き鳥屋が出店していた。

焼き鳥屋は、人が通る側に背を向けて商っている。

歩道を駆けてきた子供が、ビタッと転んで大声で泣いた。

夫々の時間が通り過ぎる。

それぞれを繋ぐものは、その光景の中にいる其々の肉体か。

人が袖すり合うことで、あたかもそこが舞台の出来事のように見えいてく。

だが、しかし……

時間を揺るがせ。

時を裂け。

時に裂け目を。

 

 


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