☆ 茎立や県を分かつ潮煙 齋藤梅子
この時季はいつも口端にのぼる一句である。
何年間かお世話になった俳誌の主宰である。
数年前にお亡くなりになった。
上掲の句。
取り合わせの妙と言うべきか。
春になって風の強い日は海が荒れて波頭が立ち、潮煙があがる。
陸では冬の菜にとうが立つ。茎立ちだ。
海の県境といえば鳴門の向こうは淡路島。そこには海鳴りのする鳴門の渦がある。
大きな景色を詠みこんでいる。対比する茎立ち。
先生がたくさん残した句の中で最も得意とした取り合わせの一句である。
俳句は季語が命。
一句が生きるのも死ぬのも季語にかかっている。
この句の季語の茎立ちの斡旋の的を得ていることよ。
昨日に比べると少し弱いと思う風の中を歩いた。
前方には光る海が見える。
畑では白菜や、冬菜の茎が立っている。
収穫のタイミングが遅れた農家の畑には黄色い花が咲いていた。
★ 鳥帰るオオバシのみの池となり
★ 春の雪しまく讃岐であろうとは