経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

知財活動の成果

2007-01-25 | 企業経営と知的財産
 知財活動に多くの予算を割くようになると、経営側から「その成果を数字で説明せよ」という要求が知財部門に出されることが少なくないようです。
 知財活動の成果というのは数字で示すのが難しい性格のものなのですが、これを何とか定量化しようと、「知財経営××指標」的なものもいろいろ提案されるようになっています。
 ところが、こういった定量評価を行った指標を示して説明をすると、「本当にそうなのか?」「都合よく数字をいじっていないのか?」といった疑問を払拭できるかどうかが問題になることはないでしょうか。知財経営ランキング的には高いレベルだと言われても、結局のところ経営者にとっては、企業の価値をストレートに示す「株価」以外は実質的には意味がないものであり(知財指標が高いといっても、それが買収防衛策になるわけでも、株主還元になるわけでもありません)、経営者に知財活動の意味を実感してもらうには限界があるように思います。
 
 そこで、少し視点を変えて、経営陣にももっと感覚的にわかりやすい数値で、知財活動を捉えてもらう方法が考えられないでしょうか。例えば、知財活動に要しているコストを製品グループ毎に配分し、1製品あたりの知財活動コストを算出してみる。例えば、10万円で販売している商品に1個当たり1,000円の知財活動コストがかかっていたとして、その1,000円を支出しなかった場合に、価格競争がより厳しくなって1,000円以上値下がりすることはなかったか。或いは、ライセンス料の支払や設計変更などで1,000円以上原価が上昇することはなかったか。これらを数値として正確に算出して比較しようとすると難しいですが、知財活動にどの程度コストを使っているのか、それが意味のあるものであるかどうかを、経営者が感覚的につかみやすくなるのではないでしょうか。ビックカメラで「500円で1年間保証が付きますがどうしますか?」と問われるのと同じようなイメージで、経営者も実感をもって判断しやすくなるのではないかと思います。


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (大阪の弁理士受験生)
2007-01-29 15:33:59
会計学等に明るくないので的確なコメントでないと思いますが・・・
私のこれまで知財部門の経験から考えると、
「知財活動の成果」を数字で明確に表すことはできないと思います。
それは、あくまで、知財活動は開発活動に付随するもので、知財費は開発費に応じて変化していくものだからです(開発が中止になったときは当然、その開発費とともに知財費も泡となって消えます)。
以前の企業にいた時には、知財は『保険』と言ってました。知財を生命保険に即して考えると、
「企業が存続していく上で必要な経費であるが、多くも少なくもできる。」ということになるのではないでしょうか(生命保険の掛け金が各個人の判断で違うように…)。
もし、成果を説明する必要がある場合には、『競合他社が開発費の中で知財費をどれだけ掛けているから、自社もこの程度、掛ける必要があります。』というように「相対的」に説明していくほかないと思います。
返信する
Unknown (土生)
2007-01-29 23:09:47
大阪の弁理士受験生さん、
こんばんは。
ご指摘の事項は、まさにこの記事で言わんとせんことと同じです。「保険」なので「いくら儲かった」という話ではないけれど、その保険が高いか安いかを判断するために、例えば製品1個当たりこれくらいの保険料(知財コスト)がかかっていますよ、と定量的に説明してみると、保険をかけておくべきかどうかが感覚的に判断できるのではないか、と思います。
返信する
Unknown (大阪の弁理士受験生)
2007-01-30 13:16:29
すいません。
価格競争の話や原価の話をされていたので、「1製品あたり」の話では、逆に分かり難いのではないかと思い、上のようなコメントを書かせてもらいました。
結局は、同じような形になるのですね。了解しました
返信する
Unknown (土生)
2007-01-30 18:28:07
大阪の弁理士受験生さん、
「1製品あたり」とした意味は、ご指摘の「知財は保険です」という説明において、保険料が高いか安いかを感覚的にわかりやすくするためです。「1製品あたりで知財はいくらの付加価値を生む」とかいうと、本当にそんなもの算出できるの、ということになってしまいますよね。
保険の営業も「みんな入ってますよ」だけでは売れない時代になっているので、「1日あたり~円で保障が得られるけどどうですか」という説明に変えてみる、というイメージです。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。