経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

不可逆的な流れ

2009-09-03 | 知財業界
 昨日の日経・経済教室の御厨東大教授の「‘自民党的なる日本’が崩壊」という論説は、なかなか読みごたえのあるものでした。民主党か自民党かという表面的な結果だけでなく、政治家・官僚システム・財界がかみ合った間接給付型の仕組みを‘自民党的なるもの’と捉え、これを止めましょうというのが民意の本質であり、そこに直接給付型を提示した民主党が受け皿として嵌った、この‘自民党的なるもの’からの脱却は不可逆的であり、単純に二大政党間で揺り戻しあうような性質のものではない(=自民党再生には脱‘自民党的なるもの’が必要)、というのが論旨です。確かにそこを本質と捉えると、先の郵政選挙では、民意は「自民党による‘自民党的なるもの’からの決別」を支持したことになり、今回の総選挙を単純にドミノ現象と評してしまうのは表面的な分析に過ぎず、実は根底の部分で民意に大きな変化はない、と考えることができそうです。
 さて、ここからが主題なのですが、なんでこんな政治ネタを持ち出してきたかといいますと、この論説を読んでこんなことを考えました。社会現象として何らかの変化が見られた場合に、表面的な事象だけに囚われることなく、その奥で崩壊が進んでいる本質的なものは何かということを考え、揺り戻しがあり得るものと不可逆的な流れをしっかり選別しなければいけない。昨日届いた弁理士会からの定期便には、中小事業者向け資金繰り支援の制度融資のパンフレットが同封されていました。今年の特許や商標の出願件数は、ピーク時の3割減くらいの水準で推移しているようです。知財部の予算や人員が削られた、知財関係のセミナーに人が集まらない、という話も耳にします。こうした変化はたぶん、景気の波でそのうち揺り戻しがくるよ(多少はあるのでしょうが)、というような性質のものと捉えるべきものではなく、そこには不可逆的な流れがあって、おそらくこうした現象の裏側では‘特許事務所的なもの’とか‘特許部的なもの’というある種のシステムの崩壊が進んでいるのだと思います。崩壊が進んでいるものの本質は‘特許事務所’ではなく‘特許事務所的なもの’、というこの微妙な違いがたぶん重要なところで、‘特許事務所的なもの’や‘特許部的なもの’に変わる新しい価値観を認識し、それを仕組みにしていくことが、知財業界のプレーヤーに求められているということなのでしょう。「経営課題に成果を上げる」というのも、たぶんその価値観の一つと位置付けられると思います。抽象的な話になってしまいましたが、とりあえず今日はこんなところで。


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