経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

需要を創る

2009-12-17 | 新聞・雑誌記事を読む
 今週の日経ビジネスで「銀行亡国~『再建』放棄が日本をつぶす」と題した特集が掲載されていますが、そのタイトルとは正反対の鹿児島銀行の記事に目を惹かれました。融資先へのサービスとして、営業支援に積極的&システマティックに取り組んでいるという話で、ここまでやっている‘銀行’があるのか、とちょっと驚きでした。
 金融機関の‘貸し渋り・貸し剥がし’については、ここのところ何度か地域金融機関の現場の状況をお聞きできる機会があったのですが、どうも某大臣のパフォーマンスでイメージ先行の部分があるのではないかという印象を持ちます。鹿児島銀行の記事もそうですが、いくつかの信用金庫で仰っていたのが「地域で個々人の顔まで見える信用金庫で、そんなエゲツない貸し剥がしなんてできませんよ」とのこと、確かに転勤といっても地域を離れることはない信用金庫の性質を考えるとよく理解できる話で、そのあたりはどうも‘金融機関’として一括りに論じられるべきものではなさそうです。
 そうした中で、ある信用金庫の方から‘知的資産経営評価融資’についてこんなご意見をお聞きしました。「今考えなければいけないことは『融資先をどう評価するか』ではなく、それ以前の問題として『融資が必要になるような資金需要をどうやって創り出すか』ということだ。」
 全くもってそのとおりで、設備投資資金や増加運転資金などの前向きな資金需要が出てこないと、腰を据えて‘評価’なんて話にはなってきません。そこで、資金需要を創り出すために、経営相談やマッチング、販売支援などの取り組みに力を入れているそうです。そこまでやれば、資金需要が生じて融資申し込みとなった際には、改めて「知的資産のヒアリング」なんて形式をとらなくても、もう会社のことは財務諸表以外の部分も十分わかっているよ、ということになります。融資の際に知的資産や知的財産を評価して、って話は景気がよく資金需要が旺盛な時期に意味を持つものであって、今のような状況では評価がどうこうというより、知的資産や知的財産についてもそれをどうやって顧客支援に生かせるか、ってところで意味をもち得るものなのでしょう。
 話は変わり、これは昨日、ある知財関係の集まりでお聞きしたのですが、知財予算の削減云々の前に研究開発予算がカットされてしまっているため、知財部門が頑張ろうと思ってもそもそも発明を創出する活動が大減速してしまっている。これも銀行が遭遇しているのと同じような状況で、知財業務で腕を振るう前に需要をどうやって創るかというところが本質的な問題、という話です。
 需要そのものが減退し、サービスセクターとしては需要の創出そのものまで踏み込まないと始まらない、って状況になってきた。これはサービスの質を高めることとは異質な領域なので大変難しい仕事だと思いますが、過去に金融機関が不動産バブル・証券化バブルを生み出した歴史を考えると、需要を創ればよいというものではなく、創り出す需要の‘質’、そこに真面目に取り組まないと同じことを繰り返しかねない。やはり「知財屋として何ができるか」という問いから逃げることはできません。