経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

企業の強みと歴史的・文化的背景

2008-07-06 | 企業経営と知的財産
 IT Japan2008 で印象に残った話をさらにもう一つ。同じく中谷巌氏の基調講演からですが、「企業のブランド力」は固有の歴史や文化がその基礎を形成しており、日・米・欧ではその基礎を異にしているということ。以下、私の解釈も含まれていて、あまり正確に再現できていないかもしれませんが、
 米国企業は普遍性を基礎にしており、特殊な文化を排除して共通の基盤を形成していくのが得意である。マイクロソフト、コカ・コーラ、マクドナルド、いずれも同じパターン。先日のエントリとの関係でいえば、オペレーションレベルは現地化されているのでしょうが、その強みは「世界中で同じように使える、飲める、食べれる」ことにあり、そこに「文化」の色彩はあまりない。
 欧州企業は普遍化しにくい固有文明を基礎にしており、固有の文明の中で形成された商品のブランド力を強みとするものが多い。ルイ・ヴィトンしかり、ベンツ、BMWしかり。まさに「文化」の産物である。
 これに対して日本企業は、独自のこだわりの文化を強みにすることが多い。トヨタに代表されるモノ作りによく表れている。
 独自文化・固有文化をバックグランドとする日・欧の企業から普遍化した商品・サービスが生まれにくいのはこうした文化的な背景が影響しており、世界標準となっている商品やサービスを生み出すのは、他民族国家で特殊な文化を排除してきた米国が最も得意とするところである、といった話です。
 具体的な企業を考えてみると確かに納得させられる話で、そうすると普遍性の高い商品を世界展開する米国企業が最も知的財産権をうまくハンドリングしているというのも、ある意味、歴史的・文化的必然であるように思えます。(言い方はちょっと悪くなりますが)ある意味、文化的な深みのない商品やサービスは模倣が容易であり、それを画一的に展開するには法律的なバックアップがどうしても必要になる。それに対して、こだわり続けて簡単には真似できないような技術が蓄積された日本企業や、独創的かつ歴史的蓄積を裏付けとする欧州企業は、そもそも普遍性がないものだから、(偽ブランドみたいは話は別にして、その本質的な強みは)法律の保護に頼らなくても簡単に追随されるものではない。だから、日本企業では特許に対する思い入れみたいなものが米国企業より弱くても、それは歴史的・文化的必然で、まぁしょうがないことなのかもしれません。
 そこからまだ結論的なものが導けているわけではないのですが、日本企業の特許との付き合い方を考える上で、何か重要なポイントになりそうな話のように思えます。