経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

想定外のリスク(商標編)

2006-10-15 | 知的財産と金融
 商標権を担保にした融資について、報道されています。特許に比べると商標は対象がわかりやすいので、その点からは担保として評価しやすい側面があるのでしょう。
 担保とは、債権回収が困難になった場合に、債務者の約定返済に代えて残存債権に充当するものです。つまり、その時点では、債権者の経営状態に問題が生じていることが前提になります。ここで何故経営状態に問題が生じたかによって、商標権の担保価値は大きく変わってくることになります。
 商標権の対象となった事業自体が傷んでしまっている場合(例えば「ヒューザー」、「雪印」みたいなケース)は、担保となっている商標のブランドイメージも毀損していることが通常なので、商標権を売却して債権回収に充てることはかなり難しい状況にあると思われます。それに対して、商標権の対象となる事業はしっかりしているものの、他の部門の問題から経営が傾いてしまった場合(例えば「カネボウ」みたいなケース)は、十分に担保価値を有することがあり得るということになります。
 特許の場合は、過去の持主のイメージが悪くても、技術がよければそれと切り離して事業化することが考えられますが、商標の価値は、それを用いて行われていた事業のイメージと切り離すことができません。そうすると、担保評価を行う際には、ブランド価値を毀損するような事件のリスクを織り込まなければならなくなるので(担保権の実行が必要となるケースのうち、相当程度はこちらのケースに該当しそうなので無視はできないと思います)、これを定量化するのはかなり大変そうです。
 尤も、知的財産権を担保にした融資の殆どは、本音ベースでは「無担保融資・&知的財産権担保付き」であろうと思うので、実務上はさして意味のある議論ではないのかもしれませんが。
 ところで、IPDLで「ヒューザー」と検索してみると、住友電装が電子機器類で、帝人が化学品関係で商標登録をしています。これって、そのまま使用しているのでしょうか??? いずれにしても、こういったリスクまでは全く想定外ですね。