アラブのうわさ

アラビア語、アラブ文化、イスラーム(イスラム)等に関する話題を元留学生が等身大でお伝えします!

2大聖地の守護者って・・・

2006年12月22日 01時01分21秒 | Weblog
 サウディアラビアの国王の別称に『خادم الحرمين』(ハーディムルハラメイン)というのがあるのですが、日本語で『2大聖地の守護者』などというとんでもない誤訳を目にしたことがあります。一体、誰がこのような愚かで罪深い誤訳をしてしまったのか・・・
 アラビア語で『خادم』(ハーディム)というと、召使いとか奉仕者といった意味になります。守護者なら『حام』(ハーミン)あるいは『حافظ』(ハーフィズ)とならなくてはいけません。たぶん訳者は『国王の別称として奉仕者と表現するのはふさわしくない』と判断して『奉仕者』を『守護者』と意訳したのでしょう。
 ですがイスラームにおいて守護・護持といった力はアッラーの属性とされ、『私はハーミンです』とか『私はハーフィズです』などと言うと傲慢な響きが感じ取られます。国王はそのように名乗る気などさらさらなく、自分は2つの聖地を護るアッラーの僕であるという自覚、またそういった奉仕によりアッラーからアジュル(報酬)を授かるという謙虚な気持ちで『خادم』(ハーディム)を選んだのかと思います。
 アラビア語に造詣が深い人でも得意分野は異なるので誤訳は仕方がないとはいえ、このような間違いがこれからも起こり続けてしまうとすると由々しき問題ですね。