サン・ピエトロ大聖堂が今の姿になる以前はローマ教皇座が置かれていた、ローマ随一の教会です。
隣接する宮殿では教皇庁とムッソリーニのあいだでラテラーノ条約が結ばれて、
それによってヴァチカン市国が誕生したことでも有名ですね。
ファサードをデザインしたアレッサンドロ・ガリレイという人は、
パッラーディオ様式の影響を受けているのですが、
これはマデルノのサン・ピエトロ大聖堂のデザインを意識しすぎじゃないかなって気もします。
聖堂のシルエットをすべて隠してしまう巨大な書き割りのようなファサードの上に、
イエスを中央に聖人たちの彫像を配置するスタイル、よく似ていますよね。
アーチの開口部が大きくとられて、ジャイアント・オーダーが強調されているところは、
確かにパッラーディオっぽいと思いますけど…。
彫像のアップです。中央のイエスは間違いないとして、その脇を固めているのは、
向かって左から教皇クレメンテ12世(サン・ピエトロの代理)、洗礼者ジョヴァンニ、
サン・ジョヴァンニ(12使徒の)、サン・マッテオでしょうか。ポーズや服装、持ち物からの推理ですけど。
扉の前にはサン・ピエトロに負けない大きな柱廊があります。扉の写真を撮ってくるのを忘れてしまいました。
内部はボッロミーニの手で改装されています。
こういうのを見ると、ボッロミーニという人のすごさがわかりますね。
規則正しいアーチで身廊と側廊を分け、
アーチとアーチのあいだにニッチを設けて、12使徒の彫像を配置しています。
本来の教会の良さを残しつつ、自分自身のプランもうまく取り入れるのは大変な作業だったでしょう。
12人全員を紹介するときりがないので、とりあえずサン・ピエトロを。彼もここではどちらかといえば脇役です。
翼廊部分には、フレスコ画も残っています。このあたりには、ボッロミーニはあまり手を加えていないようです。
この教会が何度も改修を重ねてきたことがよくわかりますね。
教皇座の上の天蓋には、サン・ピエトロとサン・パオロの聖遺物が納められています。
ちなみに、これを作ったのはシエナ出身の人だそうです。だからこういうデザインなんですね。
主祭壇の下には、洗礼者ジョヴァンニの像があります。
今では2人のジョヴァンニにささげられているこの聖堂ですが、
洗礼者ジョヴァンニのほうが200年ほど先なのだそうです。
後陣のモザイクはさまざまな時代のものが組み合わさっています。
十字架のまわりに立っている聖人のうち、小さく描かれているのは、
聖フランチェスコと聖アントニオだそうです。つまり、13世紀より後のものだということですね。
こうやってみると、長い歴史を積み重ねて現在の姿になったこの教会自体が、
まるでさまざまな時代のモザイクのようだと思いませんか?