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浜田知明の版画「初年兵哀歌(歩哨)」は美術界の「レイテ戦記」に相当すると思う

2018年07月18日 18時33分00秒 | 新聞などのニュースから


 戦後を代表する版画家のひとり浜田知明さんが7月17日、死去した。100歳だった。
 新聞各紙によると、老衰で、熊本市内の病院でとのこと。

 北海道新聞の死亡記事には、次のように書いてあった。
 
 一兵卒として軍隊で5年を過ごし、戦場で「自殺のことのみ考えて生きていた」という。軍隊生活に絶望し、薄暗い兵舎で自ら銃で死のうとする新兵などを描き、世界的に評価された「初年兵哀歌」シリーズは、まさに自身の心に刻まれた戦争体験の写し絵だった。


https://www.hokkaido-np.co.jp/article/209466

 きのうは流政之さんの訃報があり、1日に2本の訃報をブログに書くのも気が進まなかったので、翌日に回した。

 浜田知明の版画は、神田日勝記念美術館の特別展で見たが、どの作品だったかは記憶にない。
 道内では、札幌宮の森美術館が所蔵しているという情報もあるが…。とにかく、道内ではあまり見る機会に恵まれなかった作家ではある(日本の戦後美術については浜田に限ったことではないが)。
 青森県立美術館で「初年兵哀歌」を見たことは覚えている。
 銅版画ということもあって意外と小さな作品だった。

 筆者はこの版画家・彫刻家について詳しく論じる言葉を持たない。
 ただ、戦後の日本文学は、先の戦争をさまざまに書き残し、記念碑的な小説や詩が生まれているし、映画にも名作がいろいろあるが、美術界にあっては浜田の「初年兵哀歌」シリーズがそういう作品に該当すると言って差しつかえないのではないかと思う。戦後美術の金字塔であろう。

 浜田はその後も核兵器や軍備拡張を笑う作品を作り続けた。
 筆者の記憶では自由美術協会にも晩年まで出品を続けていた。
 このような硬骨の作り手がまたひとり世を去るのはさびしいことだ。
 ご冥福をお祈りします。


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