北海道美術ネット別館

美術、書道、写真などの展覧会情報や紹介。毎日更新しています。2013年7月末、北見から札幌に帰還。コメントはお気軽に。

近美コレクション 北の美術家群像 (2018年7月7日~11月11日、札幌)

2018年12月07日 13時53分38秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 
 基本的に、とくにアーティストに対する批判や悪口は書かないでおこうというのが、このブログのスタンスです。
 それは「批判がよくない」と思っているからではなく、「これを見に行って」と読者に促す方が先であり、それさえもちゃんとできていない現状では、その手の記事を書いている暇がないからです。
 とはいえ、この展覧会は、作品はともかく、キュレーティングがさすがにどうかと思われたので、書いておきたいと思います。

 この展覧会は
「北海道美術史を彩り、大きな存在感を放ってきた美術家たち20名の代表作を展覧します」
とのことです。
 20人の最初を飾るのは、林竹治郎です。
 この洋画家が、札幌を中心として見た場合に北海道洋画史の最初の一ページを飾る偉大な画家であることは否定できませんが、それはあくまで「札幌中心の北海道洋画史の始まり」であって「北海道美術史の始まり」ではないことについては、これまでも書いてきましたからここでは繰り返しません。
 道立近代美術館がオープンした1977年の頃は
「洋画イコール美術」
というのは、大げさにしても、業界での洋画の存在感は圧倒的でした。
 いま、東京の美術館や、各種国際芸術祭などで、洋画を見ることは、かなり珍しいです。洋画がアートの本流だった時代はとうに過ぎ去っていると思います。

 今回の20人は、日本画4、写真1、陶芸1、彫刻2、グラフィックデザイン1、版画2、洋画9という内訳です。
 さすがに洋画は半数を切っていますが、平面というくくりだと、版画や日本画も含めて14人に上っています。

 まあ、それはいいのですが、この20人を五つのグループに分けているのが、さっぱりわからない。

 そのグループは
「紡ぐ」
「見つめる」
「挑む」
「生きる」
「立つ」
です。

 画像2枚目は「挑む」のグループに入れられている難波田龍起の「湖」「青」「不思議な国 D」です。


 次は、やはり「挑む」の中に入っている小谷博貞「八月の原野」「風景・地から」「北の人」。

 「見つめる」グループに入れられている日本画家だけが、見つめているわけではなく、美術家は誰でも見つめているでしょうし、「立つ」のセクションに展示されている5人以外は、いつも座っているわけではないでしょう。

 こうして見ると「挑む」には抽象画家が入っているようですが(あとの1人は一原有徳)、他のグループにもいないわけではありません。
 こういう動詞を導入することで、見る人の理解を助けることになるのでしょうか。


 いちばんわからないのが「生きる」。
 ここには、砂澤ビッキ、木田金次郎、神田日勝、田辺三重松の4人がカテゴライズされています。
 ほかの16人が生きていないわけではないと思うんですが。

 画像は砂澤ビッキ「樹華」。
 彼が北海道の彫刻を代表する存在であることは異論はないでしょう。
 また、この20人では唯一のアイヌ民族です。

 その右奥に見えているのは田辺三重松の風景画です。

 この4人がひとくくりにされている理由がすごいのですが、それは後で書きます。 


 「立つ」に入っている、中谷有逸「碑・古事記」シリーズ。

 中谷さんは帯広の版画家で、つい先日も札幌のさいとうギャラリーで個展を開催し、80歳とは思えぬ旺盛な創作意欲をみせています。


 おなじく「立つ」に入っている唯一の写真家、露口啓二「地名」シリーズ。
 露口さんの写真は35点もあります。
 「発足ハッタリ」「大誉地オヨチ」など、ぞれぞれの地名で2枚一組(一定の期間をおいて、同じ場所をもう一度撮影する)なので、70枚の写真が並んでいます。

 左奥に見えるのは中江紀洋と下沢敏也の作品。
 「北の美術家群像」の中で、下沢さんの4点中3点だけが、作家蔵の作品。あとの86点はすべて美術館の所蔵品となっています。

 あらためて出品作家を書いておきましょう。

「紡ぐ」
林竹治郎 国松登 花田和治 栗谷川健一

「見つめる」
北川聖牛 本間莞彩 岩橋英遠 片岡球子

「挑む」
一原有徳 小谷博貞 難波田龍起

「生きる」
砂澤ビッキ 木田金次郎 神田日勝 田辺三重松

「立つ」
百瀬寿 中谷有逸 中江紀洋 下沢敏也 露口啓二



 ちなみに、2階は「みんなのアート 1,2,3」という題で所蔵品展が行われていました。
 画像は、椎名澄子「風の子」「木の子」ですが、椎名さんの彫刻作品2点だけは作家蔵でした。
 このほかは、版画、エコール・ド・パリの油彩、浮世絵、日本画など、いろいろな分野にわたる展示になっています。

 「生きる」の話に戻りますが、みなさんはこの4人の共通点が何かわかるでしょうか。
 ビッキは旭川→上川管内音威子府村、木田は後志管内岩内町、神田は十勝管内鹿追町、田辺は函館と、いずれも札幌以外の地方で創作に取り組んだと。これが答えらしいのです。
 別に札幌や東京にいると死人になるということでもないと思うし、「立つ」の中谷さんは帯広、中江さんは釧路、「挑む」の一原さんは小樽が拠点であり、先の4人だけをひとくくりにする意味がまったくわかりません。

 なお、国勢調査で、札幌の人口がはじめて函館を抜いて道内一になったのは、1940年(昭和15年)です。
 田辺三重松が生まれてから40年以上も、函館は道内最大の都会でした。
 いいかえれば、田辺三重松の生まれ育った時代は、札幌のほうが函館や小樽よりも田舎だったわけです。

 こういう歴史を考慮に入れずに、札幌以外の地方をひとまとめにされてもなあ―という感想を抱かざるを得ません。


2018年7月7日(土)~11月11日(日)午前9時半~午後5時(入場は30分前まで)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)
『北海道』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
« 12月6日(木)のつぶやき その2 | トップ | ■小樽・鉄路・写真展 (2018... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

展覧会の紹介-複数ジャンル」カテゴリの最新記事