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■木滑美恵自選展 (2014年5月27日~6月1日、札幌)

2014年06月01日 16時25分33秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 
 旭川の画家、木滑きなめり美恵さんが、札幌では12年ぶりとなる個展を開催。さいとうギャラリーの両室をフルに使って1980年代から近作までの大作を中心に並べ、見ごたえがある展覧会だ。

 入り口近くには小品を展示するほか、90年代に道展で受賞した際の作品を陳列している。

 例えば、次の画像の、左奥にある「しじま」(F100、90年)は道展新人賞を受けた作だ。

 この作品、描写力やデッサン力の高さをあらためてうかがわせる。
 しかし、木滑さんがほんとうにすごいのは、その描写力の高さばかりに頼るのではなく、むしろ写実的な面をいくらか抑えて、ダイナミックに画面を再構築することに主眼をうつしたことにあると、個人的には思う。
 裸婦や静物、室内風景を組み合わせた絵画は、団体公募展の作品としては「無難」かもしれない。しかし、技術面は高いけれども画風は普通、というところから一歩進んで、背景を暗転させたり、激しいタッチで人物を描いたりといった描法を取り入れることで、木滑さんの絵は、彼女ならではの個性を獲得していったのだと思うのだ。

 冒頭の画像は、96年に道展会友賞を受けた「黙示22章12節」(油彩、F100)。
 演劇が上演されているような、背景が暗い舞台で、人間模様が繰り広げられている。その場面ところは必ずしも明確なわけではないが(そして、明確でないのがむしろ絵画の美点なのだが)、ただならぬ感情が表現されているということは、こちらに強く伝わってくるのは間違いない。


 次の画像、右は「A Stage set II -闇から光へ―」(F100)。
 2002年の道展、03年の新制作展出品作。

 色数を抑え、バックを暗くして、群像を浮かび上がらせている。



 左は「祈り―ドミッテラのカタコンベ」。
 F150の大作。イタリア旅行の際に取材したもの。
 キリスト教が帝政ローマで弾圧されていた時代、信者たちは地下に集まった。その跡(カタコンベ)が今も残っているのだ。
 信者の木滑さんらしい心持ちにあふれた作品だ。




 「一粒の麦」(F150)。
 ヨハネによる福音書第12章24節のことば「本当にはっきりとあなた方に告げる。一粒の小麦は地に落ちて死ななければ,それはそのままで残る。しかしそれが死ぬなら,たくさんの実を生み出す。」に由来し、アンドレ・ジッドの代表作の題「一粒の麦もし死なずば」にもとられている。
 はりつけにされたイエスが絵では美しく描かれていることに違和感を抱いていた木滑さんが、グリューネヴァルト「イーゼンハイム祭壇画」にインスパイアされて制作した作品。
 手前のイエスやマリアは昔ながらの絵だが、背景に横たわる人物などは現代ふうだ。人物はさまざまな角度、位置に配されているので、構図に複雑性と厚みが増している。
「現代の聖画を描きたいんです」
と、木滑さんは力をこめて話していた。




「聖堂(ラヴェンナにて)」(左)と「福音書記者I マルコ」。
 欧洲取材の成果があらわれた作品。この2作は、陰影を大胆につけるのではなく、率直な筆遣いで彫像を描いている。

 木滑さんは道展会員で、新制作では「協友」。
 旭川では、教室展は毎年開催している。また、旭川・富良野の友人たちと「ローギュラート展」というグループ展を開いていた時期もあったが、個展は久しぶりで、そのぶん、力の入った個展となった。

 上記以外の出品作は次の通り。
刻の向こう側 F4(油彩、コラージュ)
イタリアの子供 20×28センチ水彩
オランダの子供II(ゴッホ美術館前) 22×26センチ 水彩
オランダの子供I(ゴッホ美術館前) 17×15センチ 水彩
見守る女性(部分模写) 14.5×12.5センチ 水彩
あなたの若い日に 64×49センチ水彩・パステル
あなたの若い日に… 46×35センチ 水彩・パステル
りつえの居る風景 P100 94年
しじま
舞台装置 O氏にささげる詩篇140篇 F120
A Stage set III(舞台装置)-罪 120号
空(―彼方へ) F50
心を騒がしてはならない F100
湯灌
The days of your youth(あなたの若い日に…) M100
向きを変える F50
あなたの若い日に…(洗礼の朝) S100
あなたの若い日に… F100
白いリボン F6
ありし日の母 F6
A stage set V(舞台装置) F150
姦淫の女
佳日 F120
天使のエチュード
天使のエチュード

休憩
楽士 I
共に生きる


2014年5月27日(火)~6月1日(日)午前10時30分~午後6時30分(最終日~午後5時)
さいとうギャラリー(中央区南1西3 ラ・ガレリア5階)

ローギュラート展(2006年、画像なし)
ローギュラート展(2003)
木滑美恵展 (2002、画像なし)
斉藤順子・木滑美恵・長岐和彦・吉中博道・盛本学史5人展 (2001、画像なし)


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