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■小樽美術協会創立50周年記念/市立小樽美術館企画 小樽画壇の煌めき 描きつぐ伝統と発展ー描くを歩む。今も今までもこれからも。-(2018年6月5日~7月8日)

2018年06月13日 21時16分35秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 小樽美術協会50周年記念展が同じ建物内の市民ギャラリーで6月5日から10日まで開かれたのにあわせ、市立小樽美術館が企画して開いた、同協会の創立会員展。
 ただし、今回展示されているのは24人。創立会員44人のうち20人の作品は展示されておらず、会場内で言及もない。
 この20人について、あまり活躍しなかった画家ばかりであればまだしも納得できるのだが、道展会員で穏やかな風景画を描いた冨澤謙さんや、全道展の長老会員として健筆をふるう新覚吉郎さんの作品が見られないのは少し残念だ。会場の広さの都合もあり、やむを得ないのかもしれない。


 会場は

1 草創期の画家たち
2・3 水彩を描く喜びとともに
4 抽象のパイオニア
5 小樽を描いた風景画家たち
6 創作版画の息吹きをうけて

という構成。
 この美術館らしい、調査の行き届いて、簡にして要を得た説明文パネルが、鑑賞者の理解を助ける。


 1 草創期の画家たち

 このセクションには、北海道洋画史の初期のキーパーソンで、多くの後進を育てた三浦鮮治、それに平田豊策が展示されている。
 三浦の「静物(みかん)」は、陰影の付け方などに岸田劉生の影響を感じる。

 平田は1901年旭川生まれ。98年歿。
 年譜を見ると、白日、二科、旺玄(42年に会員)、一水会と、ずいぶんいろいろな団体に出品している。



 2・3 水彩を描く喜びとともに

 板倉力蔵(1907年根室生まれ、92年歿。道展会員)
 森田正世史(12年東京生まれ。90年歿。日本水彩画会、道展会員)
 坂東義秋(25年小樽生まれ。91年歿。日本水彩画会、道展会員)
 白江正夫(27年宗谷管内礼文町生まれ。2014年歿。日本水彩画会、道展会員)
 小山内純治(18年青森県生まれ、79年歿)
 氏家和夫(19年岩見沢生まれ、2009年歿。道展会員。大潮会を経て白日会会員)

 上から3人に、小樽運河の絵がある。
 森田の「妙見市場」も、小樽っ子には懐かしかろう。

 白江は腰の強い水彩画を追求し続けた画家。「小樽港(赤い屋根)」など、他の小樽の画家なら取り上げないような、派手な色の屋根を大きく手前に描いている。



 4 抽象のパイオニア

 若松六弥(1910年島野村=現後志管内岩内町=生まれ、69年歿。モダンアート展、道展会員)
 宮川魏(28年小樽生まれ、84年歿。道展会員)
 小松清(35年塩谷村=現小樽市=生まれ、82年歿。道展会員、モダンアート展北海道支部長)
 一原有徳(10年徳島県生まれ、2010年歿。全道展会員)
 千葉豪(32年小樽生まれ。道展会員)
 高橋好子(27年小樽生まれ。道展会員)
 藤巻陽一(33年小樽生まれ、2007年歿。道展会員)

 「小樽派」というと写実的な風景画を連想してしまうが、このセクションの充実ぶりが目を引く。

 東京美術学校(現東京藝大)出身で、60年に道展30周年記念大賞を取り、抽象画全盛期の象徴的な画家のひとりである宮川は「北辺断層 II」が心に残る。黒い部分が多く、小谷博貞さんの絵を曲線的にしたような重厚さがある。

 小松も高校生だった52年の道展で努力賞、53年には市展委員となるなど、早熟の画家だった。
 73年には北海道抽象派作家協会を渡辺伊八郎とともに設立するが、早世してしまう。
 「風声」はクリアな色彩と構図だ。
 
 一原はあまりにも有名なので、ここでは詳述しない。
 ただ、今回はじめて気づいたのは
「83年 川崎市営競輪場外壁のオブジェをデザイン」
とあること。
 けっこう経年変化が進んでいるおそれがあるので、機会があれば早めに見ておきたい。
(そもそも現存するのだろうか…)

 藤巻「時の流砂(茫漠の夢より)」は、95年の作品。
 道展会場かどこかで見たことがあり、懐かしかった。



 5 小樽を描いた風景画家たち

 矢野徳一(1914年札幌生まれ、84年歿)
 小川清 (34年小樽生まれ、2017年歿。道展、一水会会員)
 角江重一(12年小樽生まれ、83年歿)
 石塚常男(10年新潟生まれ、85年歿。道展会員、一水会委員)
 渋谷政雄(1900年札幌生まれ、81年歿。道展会員)
 小林剛 (08年小樽生まれ、88年歿。示現会会員)

 このセクションについては、会場パネルにあった説明文に、非常に共感を抱いた。

小樽の画家たちは、歴史を重ね古びて朽ちてゆくなかに、詩を見いだし、自らの哀惜の情を込めて、独特の美に昇華させた。


 地元タウン誌の表紙を数十年にわたって描き続けた小川はもちろん、角江の「トランスポーター」も懐古の情を誘う。
 また石塚は「運河画家」というイメージがあったそうで、75年の「運河(夏)」は、淡い青や緑を主調色に穏やかな風景を描いている。

 渋谷の「朝の海」は、岸辺に打ち寄せる波をテーマにした豪快な絵。波の白の動きがばらばらなので、見ていて飽きない。
 小林はメナム川など東南アジアの民俗を描いた異色の画家。なお、彼の略歴に「東京美術学校洋画科」とあるが、こういう学科がかつてあったんだろうか(一般的には「油画」)。



 6 創作版画の息吹きをうけて

 ここは金子誠治(1914年砂川生まれ、94年歿。道展会員)と千葉七郎(19年函館生まれ、2010年歿)の木版画家2人である。


 全体を通してみると、24人のうち小樽生まれが9人しかいないことが興味深い。
 また道展会員が16人もおり、全道展会員は一原有徳さんただ一人、新道展会員はゼロというのもおもしろい。
 このほか、会員までにはならなかったが道展に出品していたという人もいるから、小樽での道展の優位はひときわ目立つ。
 道内の他都市で同じような展覧会を企画した場合、これほど片寄った構成になることは、あまりないと思う(たとえば函館や旭川なら、全道展がかなり多いだろうが、ここまで差はつかないだろう)。


2018年6月5日(火)~7月8日(日)午前10時~午後5時(入場~4時半)、月曜休み
市立小樽美術館(色内1)
一般300(240)円、市内高齢者・高校生150(120)円、中学生以下無料。かっこ内は団体料金




・JR小樽駅から約710メートル、徒歩9分

・中央バス、ジェイアール北海道バスの都市間高速バス「高速おたる号」「高速ニセコ号」「高速いわない号」の「市役所通」から約700メートル、徒歩9分

【告知】小樽美術協会50周年記念展(2018年6月5~10日)と「小樽画壇の煌めき 描きつぐ伝統と発展」(6月5日~7月8日)


(長くなったので、この項続く) 
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