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■風間雄飛個展―ろてん― (2014年4月16日~28日、札幌)

2014年04月28日 21時31分42秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 
 古い写真アルバムを思いがけず目にすると私たちの心は乱れ、さざ波だつ。
 はるかかなたに薄れていった記憶が、不意打ちのように、鮮明に、目の前に出現するからだ。

 しかし、そもそも人の記憶というのは、輪郭のはっきりしない不鮮明なイメージなのではないか。
 膨大なイメージが印刷物や映像やインターネットにあふれる時代になり、つい人は誤解してしまっているのではないか。本来、記憶の中のものごとは、そのような鮮明な映像で再現されるほうが、むしろ不自然なのではないだろうか。

 そう考えてくると、風間雄飛さんの作品は、私たちの記憶の、本来のありように、とても即したかたちで存在しているといえよう。
 霧の向こうの人影のように、ぼんやりとして、とらえどころのない世界。でも、よく見ると、淡い色彩と、不分明な形態のなかに、たしかに存在しているもの。
 何もかもがはっきりと見える状態の方が、ほんとうは嘘くさいのだと、筆者は思う。

 もうひとつ。
 風間さんの作品は、写真に撮りづらいのが特徴だ。
 ここに掲出した画像は、ちょっと色が強調されていて、実物とは異なる印象を受ける。
 だから、実物を見てほしいと思うのだ。




 さて、風間さんは昨年、3カ月間ほど、東京・あきる野市の版画工房に滞在して制作した。
 今回の個展は、そのときの制作物を中心にしたものだ。
 また昨年は、トウキョウワンダーウォールにも、笠見康大さんとともに選ばれて展示しており、その際の出品作も…あったはず…。

 これまでは主に油彩インクを使ってきたが、あきる野市では、環境への影響を顧慮して水彩インクを使っていたとのこと。
 風間さんは、茫漠とした雰囲気を出すため、表と裏からインクを滲透させる手法を用いてきた。
「水彩インクで裏から色を出すのは大変でした。でも、これからは、水彩にシフトしていくと思います」

 冒頭画像の大作は「どんたく」。
 自らこうぞを漉いて作った紙に刷っている。

 2枚目の右は「らじお」。古い感じが出ている。


 左は「ろてん」。
 湯気がもうもうとたつ露天風呂というのは、たしかにこんな感じだ。

 ほかの出品作は次の通り。
うもう
みちくさ
とったり
ごっちん
すたこら
おむかえ
はしふり
はいはいはいはい
はいはい
スイミー
でいむん

「はいはいはいはい」は、同じ型で、障子型の支持体に繰り返し(32枚)刷ったユニークな作品。


2014年4月16日(水)~28日(月)午後1~10時、火曜休み
ギャラリー犬養(豊平区豊平3の1) 

□ツイッター https://twitter.com/yuhi_kazama‎

風間雄飛個展(2009)




・地下鉄東西線「菊水」から約600メートル、徒歩9分
・中央バス「豊平橋」から約140メートル、徒歩2分(ただし、途中に低い柵あり。いったん豊平2条通まで遠回りしたほうがいいかも)
・地下鉄東豊線「学園前」1番出口から約1キロ、徒歩13分


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (yuhi kazama)
2014-04-29 09:16:23
先日はご来場ありがとうございました。
そしてご紹介していただきとても嬉しいです。
自分以外の目からみての作品の印象や分析を文章にしてもらえるというのはとても新鮮で、自分が無意識に作品にこめていたことにも気づかされます。
その上でまた制作を行い、また一層作品に深みが増していくように感じます。
また展覧会に足を運んでいただければ嬉しいです。
次回は遅れず招待状を送らせていただきます 笑
風間さん、ありがとうございます (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2014-04-29 19:22:17
コメントどうもです。
もうちょっと早くアップするつもりだったんですが、すみません。
なんだか、気どった書き出しになってしまい、文章を書くことの難しさをあらためて実感しています。今後ともよろしくお願いします。

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