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画家・松樹路人さんが亡くなっていた

2018年01月12日 18時18分18秒 | 新聞などのニュースから
 北海道出身で、独立美術会員として活躍した洋画家の松樹路人さんの訃報が、ゆうべ(2018年1月11日)の北海道新聞夕刊文化面に、網走市立美術館の古道谷朝生 こ ど や とも お 館長の追悼文というかたちで載っていて、驚きました。
 これまで新聞やネットなどではまったく報じられていないようです。

 追悼文の末尾に付された文によると、昨年12月19日、東京都内で死去したとのことです。90歳。
 松樹路人 ろ じんさんは、本名「みちと」とよみます。
 生まれは1927年(昭和2年)、留萌管内羽幌町。その後、父親の転勤にともない留辺蘂 る べ しべ町(現北見市留辺蘂町)、女満別めまんべつ町(現オホーツク管内大空町)に転居し、旧制網走中(現網走南ケ丘高)2年のときに、一家で上京します。
 戦中から戦後にかけては、東京美術学校(現東京藝大)油画科の梅原龍三郎教室で学びました。

 独立展には1950年から入選を重ね、60年に会員に推挙されています。
 81年には安田美術財団「東郷青児大賞」を受賞。安井賞(画壇の芥川賞といわれた具象画の登竜門)の審査員を務めたこともあります。
 道内では、1997年に道立近代美術館で、2002年には網走市立美術館で大がかりな個展が開かれました。また、独立美術の北海道展(2008年)では、テープカットを担当したこともあります。
 このほか、近年新築された女満別小学校の校舎には、松樹さんの絵をもとに作られた陶板画が飾ってあるそうです。

 筆者が代表作として思い出すのは、北海道新聞社から発行されていたモノグラフのシリーズ「ミュージアム新書」の表紙にもなっていた「M氏の日曜日」です。この絵は道立近代美術館が所蔵しています。
 画家の一家とおぼしき男女4人がばらばらの方を向いて立っています。主人らしき男性はパレットを持っているので松樹さんの自画像でしょうか。少女は右側を持ち、上半身裸の少年はサッカーボールを手にしています。
 背後には家が描かれ、空には気球が浮かんでいます。
 道立近代美術館の個展の開会式には奥さまもいらしていましたが、この絵の女性にそっくりだったことを記憶しています。
 
 松樹さんの絵では、それぞれのモチーフは陰影もつけてわりあい写実的に描かれているのに、配置のしかたは現実をいったん離れて画家が自由に行っています。透視図法があえて無視され、テーブルの天板が真上から見たように描かれているのに室内に置かれているという作品も少なくありません。といって、シュルレアリスム絵画にありがちな不気味さはほとんど感じられません。郷土をなつかしみ、家族を愛し、現世を肯定するあたたかみとやさしさが、松樹芸術のキモではないかと、筆者には感じられます。

 松樹さんの作品で、いちばん容易にいつでも見られるのは、道立文学館(中央区中島公園)ロビーにある、網走あたりの海岸を縦構図で描いた風景画でしょう。
 知床連山や防風林、畑などが描かれながら、単なる写実にはならず、どのモチーフもいきいきと生命をたたえたかのように、画面におさまっています。東京と蓼科にアトリエを構え、独立美術を代表する画家のひとりになりながらも、心の目はいつもオホーツクの地を向いていたのかもしれません。

 ご冥福をお祈りします。


コレクション・ギャラリー 北の風景 (2013~14、帯広)
北見芸術文化ホールの緞帳
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