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旧北海道厚生年金会館(さっぽろ芸術文化の館)、来春から解体へ

2019年12月06日 20時01分54秒 | 新聞などのニュースから
 中央区北1西12のさっぽろ芸術文化の館(ニトリ文化ホールなど)が来春から解体工事に入るという。

 筆者は1970年春、北1西12・大通西12の、現在は札幌簡易裁判所などが入っているビル2棟が立っているところにあった官舎に引っ越してきた。
 このブロックには、6階建ての合同庁舎、3階建ての家庭裁判所、それに木造平屋のおんぼろ長屋の官舎があったのだ。
 間もなく、芸術文化の館の前身である「北海道厚生年金会館」の建設工事が始まった。
 いまほど防音などに意を用いる時代ではなく、ボーリングのつち音が夏の間、やかましく響いていた。



 ついでに書くと、日販北海道支社のあった北1西13には、アメリカ領事館があった。(大使館から訂正しました)
 クリスマスが近づくと、西13丁目通りに沿った針葉樹に電飾が取り付けられたものだ。当時は、大きなクリスマスツリーは珍しかった。
 その南側、いま札幌市教育文化会館のあるブロックには、木造2階建ての札幌地方裁判所があったが、ほどなく取り壊され、70年代前半は空き地だった。
 冬は雪山ができて、子どもたちの格好の遊び場だった。
 そのとなりの14丁目も、札幌拘置所が移転した後は、しばらく大半が空き地になっていた。
 北1西14のUHB(北海道文化放送)も会社設立前でまだ存在せず、「山形屋旅館」という古風な宿があった。

 東側に目を移すと、いまロイトン札幌がそびえている北1西11は、営林局の官舎があった。こちらは木造ではなく、団地だった。
 その南のブロックには厚生年金会館と同じころ、札幌地方裁判所が移転して新しく建設されたが、70年当時は、木造の凌雲中学校がたっていた。同校に通っていた生徒は、向陵中や中央中などに散っていった。
 いまは西11丁目駅の周辺にはオフィスビルが何棟も並んでいるが、地下鉄東西線が開業する前は低層の建物ばかりだった。
 東西線がないころは、北1条通はいまより狭い幅(片側1車線)だったが、札幌市営バスや国鉄バスがひっきりなしに走っていたのだ。


 1972年の札幌冬季オリンピックの前後には、市内に新しい建物がたくさんできた。
 札幌プリンスホテル(いまの円筒形の前の建物)や4丁目プラザなどと並んで、北海道厚生年金会館もその一つだった。
 北1条通りから見て右側(東側)のホール棟には、あまり入る機会はなかった(ただ、2014年のザ・ビーチボーイズ札幌公演を最前列で見たのは良い思い出である)。札幌コンサートホールKitara が落成する以前はクラシック音楽のコンサートもここで開かれていたし、札幌最大のキャパシティを有するホールとして貴重な存在だった(これより大きな規模の演奏会を開催しようとすると、きたえーるやグリーンドームなどになってしまうのだった)。

 左のホテル棟(西側)は、とりわけ雨天時は、私たち悪ガキの遊び場だった。
 なにかのPRチラシを紙飛行機にしてロビーで飛ばして、しかられたこともある。

 こちらの棟は途中で大規模に改装しており、完成当初の面影はほとんど消えている。
 車寄せの上に突き出している2階部分は、最初はなかった。
 ロビーは吹き抜けになっていて、上のフロアにちょっときれいなレストランがあった。
 家族で昼飯を食べに行き、夏なのにグラタンを註文し、なかなか出てこないわ、食べるのに時間がかかるわで閉口した思い出がある。

 しかし、3階以上には入ったことはない。
 映画の資料ミュージアムもあったが、一度しか足を踏み入れたことがない。

 一番の思い出は、1971年か72年の12月の土曜日、雪が降ったので、3人ぐらいで雪だるまをつくりながら小学校から帰ったこと。
 雪玉が相当大きくなったので、たまたま会館の前の広場にいた巡査に見せようとして
「ねえ、おまわりさん」
と話しかけたら
「なんだ~い?」
と予想しないオーバージェスチャーとともに返事されて、大笑いした。


 1970年。北大通りに歩道はまだなく、西12丁目通りや西14丁目通りは舗装さえされていなかった。
 大通公園西12丁目のバラ園も佐藤忠良の彫刻も、西11丁目の「マイバウム」もなかった。
 あのころと変わらず立っているのは、札幌市資料館(当時は札幌高等裁判所)、電車通りの薬局お茶の中村園、三誠ビルなど、ごく限られている。

 あれから半世紀。
 風景は、人の感傷など気にすることなく、変わっていく。


(なお、伊藤正の絵が館内にあったはずだが、パソコンの中から探し出せない。見つかれば、別に記事をアップします)



 北海道新聞2019年11月19日更新のサイト「どうしんウェブ」より。


 老朽化のため昨年9月閉館した札幌市中央区のさっぽろ芸術文化の館(芸文館、旧北海道厚生年金会館)=北1西12=の解体工事が、来春にも始まる見通しとなった。地元の建設会社3社による特定共同企業体(JV)が21億1970万円で落札。市によると、市有施設の解体工事では金額ベースで最大規模。28日開会予定の第4回定例市議会に関連議案を提案する。工期は2021年度までを予定している。

(中略)

 旧社会保険庁が1971年に北海道厚生年金会館として開設。同庁改革の一環で市に売却され、2009年にさっぽろ芸術文化の館と改称した。市有地約1万1千平方メートルに立地し、地上8階、地下1階の鉄骨鉄筋コンクリート造りで延べ約3万1千平方メートル。2300席のホールと120室のホテルがあった。



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