(承前)
一方、「茶廊法邑(さろうほうむら)」には、大井敏恭、笠見康大、小林麻美、林亨、山本雄基、LESLEY-TANNAHILL(レスリー・タナヒル)の6人の絵画が展示されている。
レスリー・タナヒルと大井は、札幌とサンフランシスコの2都市を拠点とし、のこる4人は札幌在住である。
LESLEY-TANNAHILL「Mental Operations 07」
大井敏恭「DOUBLE HELIX,HEXAGON,10/08/SAP」「DOUBLE HELIX,HEXAGON,11/08/SAP」「DOUBLE HELIX,HEXAGON,9/08/SAP」
小林麻美「網目の景色(よく似た家)」
ほかに「夜の公園」「窓から」「網目の景色」「夜のカフェ」「傘越しの景色」
林亨「心を浮かべて」
笠見康大「つぶれる風景」。
ほかに「entopic」
山本雄基「みえないみえる」(同題7点)の1点。
乱暴なのを承知であえて6人の絵画をまとめるなら、「新しい奥行き感・遠近感の追究」ということになるような気がする。
言うまでもなく20世紀の絵画は、旧来の透視図法的な遠近法を排して、どんどん平面的になっていった。同時に、フォルムを失ってオールオーヴァーな画面が増えてきた。
しかし、それによって作品の純粋性は担保されるが、現実世界との接点は失われていってしまう。その「現実」というのは、社会的な次元というよりは、実際に奥行きを持った世界、というぐらいの意味である。
とはいえ、今さら古い透視図法の世界には直帰できない。そこで、いろいろな手法によって、本来平面であるはずの絵画世界に、絵画ならではの奥行き感を持ち来そうとしているのがこの6人であると、おおまかには、言えないだろうか。「いろいろな手法」といっても、かなりの隘路であることは確かなのだが。
タナヒルは、脳内のイメージを再現することで、概念や観念が「ことば」として形を成す以前の混沌とした未分化な世界を表現してみせる。
大井は、らせん模様とドットの交叉、さらに多角形の支持体により、前後に揺らめく空間を現前させる。一部的に具象に回帰した前回の「絵画の場合」展とは異なる路線である。
小林は、網目ごしに実際の風景と記憶をとらえることで、人間にとっての根本的な視覚とは何かを問いかける。
林は、麻キャンバスや墨を使用することで、西洋画(ペインティング)の持つ宿命的な重さのような感覚を、広く軽やかな方へと解き放とうとしているようにも見受けられる。
笠見は、「油展」のときと同じ題の作品を出しているが、画風は、「油展」以前のものに戻っている。サイトの平面的な画像では絶対に分からない、表面が分厚い透明な皮膜で覆われているかのような感じすら漂わせる奥行き感は、見るものを「始原の風景」へと誘い出す。
山本は、独特の「レイヤー絵画」とでも形容すべき、色と色の重なり合いによる計算され尽くした絵画である。今回は、白、藍、茶、薄茶、灰、水色、薄ねずみ、薄緑の8層からなるが、「FIX・MIX・MAX!2」のTAKEDA SYSTEMでは、さらに層の数が増えていたらしい。
1年の最後の最後に、たいへん見ごたえのある展覧会だった。
2008年12月20日(土)-29日(月)10:00-18:00(最終日-17:00)、火曜休み
茶廊法邑(東区本町1の1)
22日(月)-29日10:00-18:00(最終日-17:00)、火曜休み
品品法邑(東区本町1の2)
□札幌アーティストギャラリー http://www.sapporoartistsgallery.org/
□小林さんのホームページ http://www.tonden-street.com/kobayashi/
■On the wall/Off the wall 山本雄基、西田卓司、川上りえ(2008年9月)
■林亨展(2004年)
■林亨展(2002年)
■林亨展(2000年)
■小林麻美個展「風景が私をみている気がする。」 (2008年5月)
■絵画の場合(07年1月)
■アートあけぼの冬のプログラム(06年)
■札幌の美術2004
■お宝展(わたしのお宝交換プロジェクト)=03年、画像なし
■小林麻美個展(02年、画像なし)
■ふくらめる湿度(01年)
■絵画の場合(2007年1月、タナヒル、大井、林、小林の各氏出品)
■絵画の場合(2005年)
■第4回法邑ギャラリー大賞展(2008年8月、笠見さん出品)
■FIX・MIX・MAX!アワード入選作品展(2007年11月、笠見さん出品)
■アウトレンジ キタ 2007(笠見さん出品)
■笠見康大個展「背中の時間」(2006年)
■油展 北海道教育大学札幌校芸術文化課程美術コース油彩研究室展(2005年、笠見さん、山本さん出品。画像なし)
■山本雄基絵画展(2006年)
■第3回STEP(同。山本さん出品)
一方、「茶廊法邑(さろうほうむら)」には、大井敏恭、笠見康大、小林麻美、林亨、山本雄基、LESLEY-TANNAHILL(レスリー・タナヒル)の6人の絵画が展示されている。
レスリー・タナヒルと大井は、札幌とサンフランシスコの2都市を拠点とし、のこる4人は札幌在住である。
LESLEY-TANNAHILL「Mental Operations 07」
大井敏恭「DOUBLE HELIX,HEXAGON,10/08/SAP」「DOUBLE HELIX,HEXAGON,11/08/SAP」「DOUBLE HELIX,HEXAGON,9/08/SAP」
小林麻美「網目の景色(よく似た家)」
ほかに「夜の公園」「窓から」「網目の景色」「夜のカフェ」「傘越しの景色」
林亨「心を浮かべて」
笠見康大「つぶれる風景」。
ほかに「entopic」
山本雄基「みえないみえる」(同題7点)の1点。
乱暴なのを承知であえて6人の絵画をまとめるなら、「新しい奥行き感・遠近感の追究」ということになるような気がする。
言うまでもなく20世紀の絵画は、旧来の透視図法的な遠近法を排して、どんどん平面的になっていった。同時に、フォルムを失ってオールオーヴァーな画面が増えてきた。
しかし、それによって作品の純粋性は担保されるが、現実世界との接点は失われていってしまう。その「現実」というのは、社会的な次元というよりは、実際に奥行きを持った世界、というぐらいの意味である。
とはいえ、今さら古い透視図法の世界には直帰できない。そこで、いろいろな手法によって、本来平面であるはずの絵画世界に、絵画ならではの奥行き感を持ち来そうとしているのがこの6人であると、おおまかには、言えないだろうか。「いろいろな手法」といっても、かなりの隘路であることは確かなのだが。
タナヒルは、脳内のイメージを再現することで、概念や観念が「ことば」として形を成す以前の混沌とした未分化な世界を表現してみせる。
大井は、らせん模様とドットの交叉、さらに多角形の支持体により、前後に揺らめく空間を現前させる。一部的に具象に回帰した前回の「絵画の場合」展とは異なる路線である。
小林は、網目ごしに実際の風景と記憶をとらえることで、人間にとっての根本的な視覚とは何かを問いかける。
林は、麻キャンバスや墨を使用することで、西洋画(ペインティング)の持つ宿命的な重さのような感覚を、広く軽やかな方へと解き放とうとしているようにも見受けられる。
笠見は、「油展」のときと同じ題の作品を出しているが、画風は、「油展」以前のものに戻っている。サイトの平面的な画像では絶対に分からない、表面が分厚い透明な皮膜で覆われているかのような感じすら漂わせる奥行き感は、見るものを「始原の風景」へと誘い出す。
山本は、独特の「レイヤー絵画」とでも形容すべき、色と色の重なり合いによる計算され尽くした絵画である。今回は、白、藍、茶、薄茶、灰、水色、薄ねずみ、薄緑の8層からなるが、「FIX・MIX・MAX!2」のTAKEDA SYSTEMでは、さらに層の数が増えていたらしい。
1年の最後の最後に、たいへん見ごたえのある展覧会だった。
2008年12月20日(土)-29日(月)10:00-18:00(最終日-17:00)、火曜休み
茶廊法邑(東区本町1の1)
22日(月)-29日10:00-18:00(最終日-17:00)、火曜休み
品品法邑(東区本町1の2)
□札幌アーティストギャラリー http://www.sapporoartistsgallery.org/
□小林さんのホームページ http://www.tonden-street.com/kobayashi/
■On the wall/Off the wall 山本雄基、西田卓司、川上りえ(2008年9月)
■林亨展(2004年)
■林亨展(2002年)
■林亨展(2000年)
■小林麻美個展「風景が私をみている気がする。」 (2008年5月)
■絵画の場合(07年1月)
■アートあけぼの冬のプログラム(06年)
■札幌の美術2004
■お宝展(わたしのお宝交換プロジェクト)=03年、画像なし
■小林麻美個展(02年、画像なし)
■ふくらめる湿度(01年)
■絵画の場合(2007年1月、タナヒル、大井、林、小林の各氏出品)
■絵画の場合(2005年)
■第4回法邑ギャラリー大賞展(2008年8月、笠見さん出品)
■FIX・MIX・MAX!アワード入選作品展(2007年11月、笠見さん出品)
■アウトレンジ キタ 2007(笠見さん出品)
■笠見康大個展「背中の時間」(2006年)
■油展 北海道教育大学札幌校芸術文化課程美術コース油彩研究室展(2005年、笠見さん、山本さん出品。画像なし)
■山本雄基絵画展(2006年)
■第3回STEP(同。山本さん出品)