新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言が道内に出ていますが、キース・ヘリング展は予定通り、会期中は無休で開かれています。
キース・ヘリングの絵は2019年にも札幌芸術の森美術館の「球体のパレット タグチ・アートコレクション」でも展示されましたが、まとまった展覧会となると2000年以来21年ぶりとなります。そのときの紹介記事が、artscape でいまでも読める!( https://artscape.jp/museum/nmp/artscape/recom/0005/hokkaido/yoshizaki.html )ので参考にしてください。
(ちょっと話はそれますが、2000年のウェブ記事なんて、大半がリンク切れしているので、当時のままいまでも読めるというだけで素晴らしいことなのです)
で、上にリンクを貼った記事でも、吉崎元章学芸員が
「いまさらキース・へリング?という意見もないこともないが」
と書いているのですが、キース・ヘリングといえば1980年代のスター的イラストレーターで、アート業界の一般的な認識とすれば、ソーシャル・エンゲイジドアートやビデオインスタレーションといった現代アートの流れとはちょっと外れたところの流行り物といった位置づけだったと思うので、歿後30年以上(彼がエイズで亡くなったのは1990年)たってもこうして個展が開かれるのか~、というのが新鮮な驚きだったりします。
ここに掲げた写真は、来日時に東京の街路のアスファルトに絵を描いている場面で、ストリートや地下鉄駅の落書きから世界へと飛び出した彼らしい一枚だといえるでしょう。
展示室の入り口に飾ってありました。
80年代の美術界を席巻したニュー・エキスプレッショニズム(日本では「ニューペインティング」と呼ばれた)は、近年は言及されることも少なくなっていますが、おなじ時代に活躍したキース・ヘリングの人気はまだ根強いっていうことなんでしょうか。
誰が見ても「この人だ!」とわかる画風ではあります。
次のネオンサインも、展示室入り口にあったもの。
犬が口を開けたり閉じたりするのですが、この犬もラディアント・ベイビー(光る赤ん坊)と並んでキース・ヘリングの代表的アイコンですね。
彼の作品は抽象絵画などと異なり、一見「わかりやすい」と思われているかもしれません。
しかし、よく考えると、赤ちゃんが光ったり人体に穴が開いたりUFOが飛来したり、どういうストーリーがそこにあるのか、わからないんですよ。
そのあたりは見る人の想像力に委ねられている部分が大きいといえるのではないでしょうか。
また、この展覧会が
「アート×コミュニケーション」
を掲げているのは、タブローが周囲の環境や見る人からあたかも独立して存在しているかのように並んでいる従来のアートとはちょっと異なる在り方を示唆しているようにも思われます。
作品は、見る人や社会との相互関係のなかに在るというスタンスです。
もちろん、キース・ヘリングは早世していますから、彼が変わったということではなく、やはりアートとそれをめぐる環境や思想が変化したということなのでしょう。
今回展示されているのは、山梨県にある中村キース・ヘリング美術館が所有する絵画、版画、立体、ポスターなどのコレクション約160点。
経営母体が同じレストラン・宿泊施設がニセコ近傍の後志管内蘭越町にあるそうで、そこではステーキなどの食事をしながら、キース・ヘリングの作品が楽しめるとのことです。
ところで、不思議だったこと。
版画のエディションナンバーやサインはふつう、作品の下の隅に書かれているものですが、今回の出品作を見るといずれも右下に、90度傾けて書いてありました。
コレクターや美術館が絵の天地左右を間違えているとも思われず、キース・ヘリングの単なる癖なのかもしれませんが、いったい何のため?
2021年7月17日(土)~9月26日(日)午前9:45~午後5:30(入場は閉館の30分前まで。9月は5時閉館)
札幌芸術の森美術館(札幌市南区芸術の森2)
観覧料 一般1500円(1300円)、高校・大学生800円(600円)、小・中学生500円(300円) ※( )内は前売、または20名以上の団体料金
※65歳以上は当日料金が1300円
告知記事
・地下鉄南北線「真駒内駅」から、バスターミナルの2番出口(上の地図の場所)を出発する中央バス(どの便でも可)に乗り継ぎ、芸術の森入口で降車
キース・ヘリングの絵は2019年にも札幌芸術の森美術館の「球体のパレット タグチ・アートコレクション」でも展示されましたが、まとまった展覧会となると2000年以来21年ぶりとなります。そのときの紹介記事が、artscape でいまでも読める!( https://artscape.jp/museum/nmp/artscape/recom/0005/hokkaido/yoshizaki.html )ので参考にしてください。
(ちょっと話はそれますが、2000年のウェブ記事なんて、大半がリンク切れしているので、当時のままいまでも読めるというだけで素晴らしいことなのです)
で、上にリンクを貼った記事でも、吉崎元章学芸員が
「いまさらキース・へリング?という意見もないこともないが」
と書いているのですが、キース・ヘリングといえば1980年代のスター的イラストレーターで、アート業界の一般的な認識とすれば、ソーシャル・エンゲイジドアートやビデオインスタレーションといった現代アートの流れとはちょっと外れたところの流行り物といった位置づけだったと思うので、歿後30年以上(彼がエイズで亡くなったのは1990年)たってもこうして個展が開かれるのか~、というのが新鮮な驚きだったりします。
ここに掲げた写真は、来日時に東京の街路のアスファルトに絵を描いている場面で、ストリートや地下鉄駅の落書きから世界へと飛び出した彼らしい一枚だといえるでしょう。
展示室の入り口に飾ってありました。
80年代の美術界を席巻したニュー・エキスプレッショニズム(日本では「ニューペインティング」と呼ばれた)は、近年は言及されることも少なくなっていますが、おなじ時代に活躍したキース・ヘリングの人気はまだ根強いっていうことなんでしょうか。
誰が見ても「この人だ!」とわかる画風ではあります。
次のネオンサインも、展示室入り口にあったもの。
犬が口を開けたり閉じたりするのですが、この犬もラディアント・ベイビー(光る赤ん坊)と並んでキース・ヘリングの代表的アイコンですね。
彼の作品は抽象絵画などと異なり、一見「わかりやすい」と思われているかもしれません。
しかし、よく考えると、赤ちゃんが光ったり人体に穴が開いたりUFOが飛来したり、どういうストーリーがそこにあるのか、わからないんですよ。
そのあたりは見る人の想像力に委ねられている部分が大きいといえるのではないでしょうか。
また、この展覧会が
「アート×コミュニケーション」
を掲げているのは、タブローが周囲の環境や見る人からあたかも独立して存在しているかのように並んでいる従来のアートとはちょっと異なる在り方を示唆しているようにも思われます。
作品は、見る人や社会との相互関係のなかに在るというスタンスです。
もちろん、キース・ヘリングは早世していますから、彼が変わったということではなく、やはりアートとそれをめぐる環境や思想が変化したということなのでしょう。
今回展示されているのは、山梨県にある中村キース・ヘリング美術館が所有する絵画、版画、立体、ポスターなどのコレクション約160点。
経営母体が同じレストラン・宿泊施設がニセコ近傍の後志管内蘭越町にあるそうで、そこではステーキなどの食事をしながら、キース・ヘリングの作品が楽しめるとのことです。
ところで、不思議だったこと。
版画のエディションナンバーやサインはふつう、作品の下の隅に書かれているものですが、今回の出品作を見るといずれも右下に、90度傾けて書いてありました。
コレクターや美術館が絵の天地左右を間違えているとも思われず、キース・ヘリングの単なる癖なのかもしれませんが、いったい何のため?
2021年7月17日(土)~9月26日(日)午前9:45~午後5:30(入場は閉館の30分前まで。9月は5時閉館)
札幌芸術の森美術館(札幌市南区芸術の森2)
観覧料 一般1500円(1300円)、高校・大学生800円(600円)、小・中学生500円(300円) ※( )内は前売、または20名以上の団体料金
※65歳以上は当日料金が1300円
告知記事
・地下鉄南北線「真駒内駅」から、バスターミナルの2番出口(上の地図の場所)を出発する中央バス(どの便でも可)に乗り継ぎ、芸術の森入口で降車