全道展の版画部門には「プロ」「ベテラン」と形容したくなる作家が多い。
小樽在住の森さんもそんなひとりだと思う。昔の「みづゑ」で図版を見たことがある。幻想的、といっても、下品なシュルレアリスムの作品のようにおどろおどろしい空想をほしいままにするのではなく、ちょっとしたイマジネーションが、銅版画ならではの精緻な画面におりたたまれている。まさにこの作者ならではの世界である。
そういえば筆者はお会いしたことがない。どうしてだろうと考えてみたら、札幌で個展をひらいたことがあまりないのでは-ということに思い当たった。少なくてもここ十年余りは、筆者が忘れているだけかもしれないけど、記憶にない。
そういう意味で、旭川での個展というのは、めずらしいなあと思った。
色鉛筆画2点をふくむ、25点ほど。「水まく人」なんて、だいぶ以前の全道展で見たような気がするけれど、記憶違いだろうか。
画面の周囲を枝が取り囲み、めがねをかけた黒いコート姿の男が正面を向いて立っている「冬の華」はユニークだ。男はドライフラワーにも見える花束を持ち、小さな鳥が2羽、花の周囲にはばたいているのだが、その鳥の顔が人間の女性になっているのだ。よく見ると、針葉樹の林が、画面の下方の左右に展開している。本来なら上のほうにあるものなのに、ふしぎと違和感がない。
また、「しっぽ」は、やはり正面を向いている男性が外套のえりもとに猫をしのばせている絵柄で、一見するとなんの変哲もない作品だが、よく見ると猫のしっぽはいったい何本あるのだろう? 首にも、外套の横にも、灰色の尾が出ているのだ。
小品には、猫を題材にしたものが多かった。
08年2月12日(火)-18日(月)10:00-18:00(最終日-16:00)
ヒラマ画廊(旭川市2の8)
□森ヒロコ・スタシス美術館 http://www008.upp.so-net.ne.jp/mori/
小樽在住の森さんもそんなひとりだと思う。昔の「みづゑ」で図版を見たことがある。幻想的、といっても、下品なシュルレアリスムの作品のようにおどろおどろしい空想をほしいままにするのではなく、ちょっとしたイマジネーションが、銅版画ならではの精緻な画面におりたたまれている。まさにこの作者ならではの世界である。
そういえば筆者はお会いしたことがない。どうしてだろうと考えてみたら、札幌で個展をひらいたことがあまりないのでは-ということに思い当たった。少なくてもここ十年余りは、筆者が忘れているだけかもしれないけど、記憶にない。
そういう意味で、旭川での個展というのは、めずらしいなあと思った。
色鉛筆画2点をふくむ、25点ほど。「水まく人」なんて、だいぶ以前の全道展で見たような気がするけれど、記憶違いだろうか。
画面の周囲を枝が取り囲み、めがねをかけた黒いコート姿の男が正面を向いて立っている「冬の華」はユニークだ。男はドライフラワーにも見える花束を持ち、小さな鳥が2羽、花の周囲にはばたいているのだが、その鳥の顔が人間の女性になっているのだ。よく見ると、針葉樹の林が、画面の下方の左右に展開している。本来なら上のほうにあるものなのに、ふしぎと違和感がない。
また、「しっぽ」は、やはり正面を向いている男性が外套のえりもとに猫をしのばせている絵柄で、一見するとなんの変哲もない作品だが、よく見ると猫のしっぽはいったい何本あるのだろう? 首にも、外套の横にも、灰色の尾が出ているのだ。
小品には、猫を題材にしたものが多かった。
08年2月12日(火)-18日(月)10:00-18:00(最終日-16:00)
ヒラマ画廊(旭川市2の8)
□森ヒロコ・スタシス美術館 http://www008.upp.so-net.ne.jp/mori/