「葬式鉄」
ということばがあります。
路線や列車が廃止されたり駅がなくなったりする日にプラットホームや沿線に現れて、カメラを構える人たちのことです。
こんなに大勢の鉄道ファンが集まってくるのかと、新聞などで見て、いつも驚かされます。
車で乗りつけて駅の廃止の写真を撮って、そして帰っていく人たち。
彼らは、鉄道会社には1円も落としていかないし、その地域にも経済的な利益をほとんどもたらしてゆきません。
これだけ多くの人がふだんからこの路線や駅や列車を利用していれば、廃止されずに済んだかもしれないのにな~と、苦々しい思いが脳裡をよぎります。
「生野」という駅がJR石北線にありました。
オホーツク管内遠軽町の生田原駅と安国駅のだいたい真ん中あたりです。
駅といっても、国鉄がJRになるまでは仮乗降場でした。
駅員はもちろんおらず、駅舎もありません。
簡素なホームが1面だけ。短いため、1輛ぶんのドアしかあけることができません。
駅の周辺は牧場や畑の広がる純農村地帯で、農家が点在しています。
止まる列車は上りが朝7時42分発の1本のみ、下りが午後1時15分と4時25分の2本だけ。
特急はもちろん、普通列車も多くは通過していきます。
こういう駅なので、遠軽高校に通う生徒が4年前に卒業して以来、利用者はほとんどいませんでした。通学以外の用途で利用しようのないダイヤでした。
筆者もいつ廃止になってもおかしくないと思っていましたが、なにせ極端に到達困難な駅なので、最終日まで利用できずに来てしまいました。
(目の前を並走する国道に、1日3往復=土日は2往復=の路線バスが走っており、生野駅前に「豊原54号」という停留所がありますが、列車の発着する時間の前後に走る便はありません)
生野駅前に駐車場でもあれば、乗り捨てて列車に乗り、後で自家用車を取りに行くという手段もとれたのですが、そういう、一般の人が考えるような「駅」ではなかったのです。
JRのダイヤが3月13日に「改正」されるのにともない、生野駅は12日かぎりで廃止されることになりました。
筆者は最終日の最終列車に乗りました。
16時4分、遠軽駅発、生田原行きの普通列車です。
この列車もこの日が最後の運行でした。
なぜか。
1輛のディーゼルカーには、筆者のほかに5人しか乗っておらず、しかもそのうち2人はかつて通学で利用していたので記念に乗車したという女性、男性2人は「さよなら生野駅セレモニー」という町の制作の映像の撮影などのために乗車していた役場職員だったのです(映像はYoutube に上がっており、このブログの最後に貼っておきました)。
のこる1人は遠軽高校生で
「おっ、彼は純粋な地元利用者か」
と思って
「どこで降りるの?」
と聞いたら
「生野です」。
ふだんは、遠軽の次の安国までの汽車通生ですが、この列車には間に合わないことが多く、1本後の列車を利用しているそうです。
ということは、通常の利用者数は、生野駅はゼロ、この列車もゼロということになりそうです。
ちなみに、次の安国駅で2人が乗ってきました。
先ほどの女性の知り合いで、やはり記念の乗車のようです。
ところが、地元の住民が行ったささやかな「さよなら生野駅」のセレモニーには、なんと60人以上が来ていたのでした。
ホームには乗り切れないほどの人がひしめいています。
反対側でカメラを構えている人の姿も目立ちます。
次の画像を見れば、国道から駅周辺まで駐車の列が並んでおり、車で来た人の多さが一目瞭然です。
女性が花束を運転士に手渡すと、運転士はいつもより心持ち長めに汽笛を鳴らして、次の終着駅である「生田原」へとディーゼルカーを走らせていきました(北海道のローカル線普通列車はすべてワンマン運転です)。
それにしても…。
記念の乗客がもうちょっといると思ったんだけどな。
一桁だもんなあ。
高校を卒業すると、ほんとに列車に乗らなくなってしまう人が多いことに、あらためて驚かざるを得ません。
たしかにこのあたりの鉄道は決して便利だとはいえません。
だからといって、乗らないでいると、この列車のように廃止されて、ますます不便なダイヤになってしまいます。
JR北海道は、なんらかの手助けがないと、石北線は残せないと言ってきています。
「鉄道のないマチ」にしないためにも、時には自家用車を置いて、公共交通機関を利用してもらいたいと、切に願います。
列車やバスはいいですよ。
居眠りしてもビール飲んでもオッケーなんだから。
石北線は遠軽町内に
(奥白滝)ー(上白滝)ー白滝ー(旧白滝)ー(下白滝)ー丸瀬布ー瀬戸瀬ー(新栄野)ー遠軽ー安国ー(生野)ー生田原
の駅がありましたが、かっこのついた駅は近年廃止になりました。
(さらに、遠軽から分岐した名寄線に「北遠軽」という駅もあったので、13駅がいまや6駅と、半分以下になってしまったのです)
最後の画像は、2020年1月、通過する下りの列車の先頭車輛から撮影した生野駅です。
ふだんは、誰もいない静かな駅なのです。
ただ、9月にはあたりに肥料用のヒマワリが一面に咲いて、美しいものでした。
最後に遠軽町役場が複数のカメラとドローンを駆使して撮影・制作した力作動画のYoutube を貼っておきます。
14分の大作ですが、どうぞごらんください。
(筆者もちらっと映っています)
2021.3.12さよなら生野駅セレモニー
ということばがあります。
路線や列車が廃止されたり駅がなくなったりする日にプラットホームや沿線に現れて、カメラを構える人たちのことです。
こんなに大勢の鉄道ファンが集まってくるのかと、新聞などで見て、いつも驚かされます。
車で乗りつけて駅の廃止の写真を撮って、そして帰っていく人たち。
彼らは、鉄道会社には1円も落としていかないし、その地域にも経済的な利益をほとんどもたらしてゆきません。
これだけ多くの人がふだんからこの路線や駅や列車を利用していれば、廃止されずに済んだかもしれないのにな~と、苦々しい思いが脳裡をよぎります。
「生野」という駅がJR石北線にありました。
オホーツク管内遠軽町の生田原駅と安国駅のだいたい真ん中あたりです。
駅といっても、国鉄がJRになるまでは仮乗降場でした。
駅員はもちろんおらず、駅舎もありません。
簡素なホームが1面だけ。短いため、1輛ぶんのドアしかあけることができません。
駅の周辺は牧場や畑の広がる純農村地帯で、農家が点在しています。
止まる列車は上りが朝7時42分発の1本のみ、下りが午後1時15分と4時25分の2本だけ。
特急はもちろん、普通列車も多くは通過していきます。
こういう駅なので、遠軽高校に通う生徒が4年前に卒業して以来、利用者はほとんどいませんでした。通学以外の用途で利用しようのないダイヤでした。
筆者もいつ廃止になってもおかしくないと思っていましたが、なにせ極端に到達困難な駅なので、最終日まで利用できずに来てしまいました。
(目の前を並走する国道に、1日3往復=土日は2往復=の路線バスが走っており、生野駅前に「豊原54号」という停留所がありますが、列車の発着する時間の前後に走る便はありません)
生野駅前に駐車場でもあれば、乗り捨てて列車に乗り、後で自家用車を取りに行くという手段もとれたのですが、そういう、一般の人が考えるような「駅」ではなかったのです。
JRのダイヤが3月13日に「改正」されるのにともない、生野駅は12日かぎりで廃止されることになりました。
筆者は最終日の最終列車に乗りました。
16時4分、遠軽駅発、生田原行きの普通列車です。
この列車もこの日が最後の運行でした。
なぜか。
1輛のディーゼルカーには、筆者のほかに5人しか乗っておらず、しかもそのうち2人はかつて通学で利用していたので記念に乗車したという女性、男性2人は「さよなら生野駅セレモニー」という町の制作の映像の撮影などのために乗車していた役場職員だったのです(映像はYoutube に上がっており、このブログの最後に貼っておきました)。
のこる1人は遠軽高校生で
「おっ、彼は純粋な地元利用者か」
と思って
「どこで降りるの?」
と聞いたら
「生野です」。
ふだんは、遠軽の次の安国までの汽車通生ですが、この列車には間に合わないことが多く、1本後の列車を利用しているそうです。
ということは、通常の利用者数は、生野駅はゼロ、この列車もゼロということになりそうです。
ちなみに、次の安国駅で2人が乗ってきました。
先ほどの女性の知り合いで、やはり記念の乗車のようです。
ところが、地元の住民が行ったささやかな「さよなら生野駅」のセレモニーには、なんと60人以上が来ていたのでした。
ホームには乗り切れないほどの人がひしめいています。
反対側でカメラを構えている人の姿も目立ちます。
次の画像を見れば、国道から駅周辺まで駐車の列が並んでおり、車で来た人の多さが一目瞭然です。
女性が花束を運転士に手渡すと、運転士はいつもより心持ち長めに汽笛を鳴らして、次の終着駅である「生田原」へとディーゼルカーを走らせていきました(北海道のローカル線普通列車はすべてワンマン運転です)。
それにしても…。
記念の乗客がもうちょっといると思ったんだけどな。
一桁だもんなあ。
高校を卒業すると、ほんとに列車に乗らなくなってしまう人が多いことに、あらためて驚かざるを得ません。
たしかにこのあたりの鉄道は決して便利だとはいえません。
だからといって、乗らないでいると、この列車のように廃止されて、ますます不便なダイヤになってしまいます。
JR北海道は、なんらかの手助けがないと、石北線は残せないと言ってきています。
「鉄道のないマチ」にしないためにも、時には自家用車を置いて、公共交通機関を利用してもらいたいと、切に願います。
列車やバスはいいですよ。
居眠りしてもビール飲んでもオッケーなんだから。
石北線は遠軽町内に
(奥白滝)ー(上白滝)ー白滝ー(旧白滝)ー(下白滝)ー丸瀬布ー瀬戸瀬ー(新栄野)ー遠軽ー安国ー(生野)ー生田原
の駅がありましたが、かっこのついた駅は近年廃止になりました。
(さらに、遠軽から分岐した名寄線に「北遠軽」という駅もあったので、13駅がいまや6駅と、半分以下になってしまったのです)
最後の画像は、2020年1月、通過する下りの列車の先頭車輛から撮影した生野駅です。
ふだんは、誰もいない静かな駅なのです。
ただ、9月にはあたりに肥料用のヒマワリが一面に咲いて、美しいものでした。
最後に遠軽町役場が複数のカメラとドローンを駆使して撮影・制作した力作動画のYoutube を貼っておきます。
14分の大作ですが、どうぞごらんください。
(筆者もちらっと映っています)
2021.3.12さよなら生野駅セレモニー
鉄道問題、どうしたらいいんでしょうね。
私は車の運転をしないので、公共交通機関を利用していますが、JRを積極的に使っているかというと、そこまでではありません。
札幌の地下鉄駅付近に住んでいるので、そうなります。
JRに乗りたくなる時は、旅行や近郊の美術館に行くときになりますが、なかなか乗りづらくなってきました。
以前だと、一日散歩きっぷで小樽・苫小牧・江別(と周辺美術館)を組み合わせるのは比較的容易だったのですが、
最近では美術館の観覧時間を相当短くしないと難しくなっています。
利用者減と便数減のマイナススパイラルですよね。
もう少しJR北海道に改善して欲しいとしたら、何かなあ。
・一日散歩きっぷをもう少し安くして欲しい。空気を運ぶより良いでしょう
・一日散歩きっぷって、例えば苫小牧で売っていないのはおかしい(乗車区間内で切符の自動販売機もあるのに)
・バスや札幌は市営地下鉄と乗り継ぎ料金を設けられないか
・一日散歩きっぷを旭川まで行けるようにして欲しい。札幌~旭川間で乗降自由なら、使いごたえがある
・札幌近郊だけのコンパクトな1日券を出して欲しい
・1日券だけじゃなくて、24時間券を作ってほしい(近郊に1泊する余地が生まれる、24時間券は名古屋の市営地下鉄にあり)
一日散歩きっぷへの私の不満をぶつけるだけになってしまいましたが、もう少し工夫の余地があると思うんですよ(結論はありません)。
もっと根本的な問題は、鉄道事業を独立採算で何とかしようという国の姿勢です。
道路は税金でどんどん造って、維持管理もすべて税金なのに、鉄道は運営も保守も自前でやれという。こんなバカな話がまかりとおっている国は欧洲にはないでしょう。
思えば分割民営化も、民営化も問題はありますが、分割しすぎなのは明らかです。その後、NEXCO や NTT などが、これほど細かい分割をしてないことで、国もそれは薄々感じているのでしょう。
もともと分割民営化の際に、東日本などはともかく、北海道など3島の会社は採算が合わないので、基金を積んで、利息で会社を存続させていくという方針でした。ところが、記録的な低金利政策で、この方針はすでに破綻しているのです。低金利をえんえんと何年も続けていること自体、国の経済政策の失敗なのですから、国が責任をもってJR北海道を救済しなくてはスジが通りません。
そして民主党政権は、高速無料化を掲げて、鉄道事業を困らせる政策に走りました。
ほんとうにひどい話です。
私は普段あまり車を使わないので、あらゆる箇所に国費をじゃぶじゃぶ投入して道路整備をするのはなんだかなぁ、と思います。
それはともかく、JR北海道の鉄道事業に対するあまりのやる気のなさにも、むかっとしておりまして…
しかし、もう鉄道事業を続けるメリットもないので、それも当然なのかもしれませんね。
2021.3.12さよなら生野駅セレモニーを見て、 じーんときました。時々見に来ます。
ブログを読んでいて、渡辺 一史/著 『北の無人駅から』がダブります。運転ができない私には、行きたい場所に連れて行ってくれる足ですので、廃止は寂しいものです。
ホームの右端にいるのが筆者です(笑)。
利用者が減る→
本数や駅を減らす→
利用しにくくなってますます乗る人が減る
この悪循環をなんとかしなくてはと思います。