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■伏木田光夫油絵個展 (10月24日まで)

2009年10月24日 07時34分43秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 永遠は、ない。
 しかし人は、永遠を求め続ける。
 その営みが、美を、支えているのかもしれない。

 永遠がないことを、伏木田さんの個展の案内をいただいたときに、あらためて知った。
 伏木田さんは毎年、時計台ギャラリーの2階の3室すべてを借りて、100点前後に上る新作絵画を展示した個展を開いている。
 その旺盛な仕事ぶりは、とにかく他の追随を許さないものだ。
 しかし、いつもダンディーで若々しい伏木田さんも70代なかば。
 個展の案内に、三十数年つづけてきた時計台ギャラリーでの毎年の個展は今回限りとし、次回は2年後の開催になることが記してあった。
 そりゃそうだろうと、理屈ではわかる。とはいえ、そういうときが来たのだなあ、とあらためておどろく自分がいる。

 A室の入り口に飾られた2点の絵「斜光の中の鰊」「秋の葡萄」を見るために、もう一度、時計台ギャラリーを訪れた。
 毎年の個展をやめるのであれば、あるいは枯淡の境地のような風情が画面に表れているのではないか・・・。そんなことも予想していたけれど、実際のところは、色彩はよりみずみずしく、明るくなっていた。「斜光の・・・」の、あざやかな群青と、落ち着いた茶色との組み合わせは、以前は見られなかったものだと思う。色のエッジがきわだっている。
 昔は、刻々と移り変わる光に追いつこうと筆が先走り、下地の色と上の層の色が混じり合って濁ってしまうこともないとはいえなかったが、今回は、色数が絞られ、それぞれの作品作品での統一感がいつになく高まっているように感じられた。
 また、まったくおなじ構図で配色だけを変えた連作が4点ないし5点並んでいるところもあり(「空間のオルガノン」「空間のフーガ」)、やむところのない「空間の追究」には、あらためて脱帽だった。

 それらの静物画では、モティーフの主調色と背景の色が互いに浸潤しあっているというか、おなじ色が配されている。であれば、机だの果実だのといったモティーフは、背景に溶けてしまって見分けがつかなくなる道理であるが、そんな事態にはなっていない。
 輪郭線はひかれてはいるが、ルオーやゴーギャンのようにモティーフをきわだたせるまでの太い線ではなく、あったりなかったりといった強さ。むしろ、モノの存在を確かなものとしているのは、筆触(タッチ)なのだろう。

 ただし、C室にあった、クリスマスを題材にした絵だけは、蜀台(キャンドルスタンド)のろうそくもきれいに塗り分けられ、モティーフが独立して見えた。

 どういうわけか、風景画はどれも正方形のキャンバスに描かれている。
 それが、とてもスタティックなムードをかもし出している。
 そして、静物画ほどにはクリアな色彩ではなく、アンティームで落ち着いた、曇天のような雰囲気が、画面全体を包んでいるようだ。
 
 永遠はない、それは、頭ではわかっている。
 でも、わたしは、伏木田さんには、永遠に筆を走らせていてほしいような気がする。
 それほどまでに、世界は、解き明かされるべきなぞに満ちているからだ。筆の一走りだけが、空間の秘蹟に近づく方途だからだ。あるいは、伏木田さんは、もうかなりのところまで、世界の秘密に迫っていて、ただ見る側がそこまでたどりついていないだけなのかもしれないが。
 今回は、お客さんが多くてゆっくりお話ができなかったのが、残念。



 出品作は次の通り。

母と娘 (SM)
編物をする女 (SM)
本を讀む女 (SM)
手紙を讀む人 (SM)
母と息子 (0号)
窓辺の姉弟 (SM)
秋の女 (0号)
腰かける女 (0号)
立てる裸婦 (デッサン)

斜光の中の鰊 (20P)
秋の葡萄 (20F)
母子像 (SM)
鰊のある静物 (20S)
煎餅焼器のある空間 (20S)
楕円の静物(A) (20M)
楕円の静物(B) (20M)
空間のオルガノン(D) 70×45
空間のオルガノン(A) 20S
空間のオルガノン(C) 40P
空間のオルガノン(B) 20S
秋の花々 20F
空間のフーガ(A) 20F
空間のフーガ(B) 30P
空間のフーガ(C) 40P
空間のフーガ(D) 40M
空間のフーガ(E) 30M
港のピエータ 150P
豆腐と油揚 30S
A夫人の肖像 50M
H夫人の背中 40P
水槽のなかの豆腐 20F
斜光の中で 12F

アラベスク(A) 80P
横向きの裸婦 70×35
アラベスク(B) 80M
札幌資料館と噴水 12S
札幌資料館風景 15S
薔薇色の裸婦 80M
座るR夫人 80P
午後の支笏湖 12S
朝の支笏湖 12S
樽前山の見える支笏湖 15S
樽前山と支笏湖 15S
スケートをする子供のいる風景 12S
冬の札幌中の沢風景 30F
早春の静物 20F
知事公館庭の四阿 12S
知事公館の四阿 15S
最後の夏(余別) 12S
高くて蒼い空(余別) 12S
夏の終り(余別) 12S
夏の余別 12S
トマトのある空間 6F

白い男 4M
母と息子 4F
鰊 6F
赤い裸婦 4P
手紙を讀むH夫人 6M
瓶と水槽 30P
秋の斜光 30M
鰊のある机 15F
厨房のテーブル 30P
薔薇色の空間 20F
赤い紅茶缶 8F
瓶と紅茶缶 8F
ブルーのなかの瓶と缶 8F
草上の音楽 4F
音楽 8P
ターバンを巻いた女 4F
聖夜のための椅子 30M
聖夜のための燭台 40M
リースと燭台 30P
聖夜の椅子 15M
シッタールダ 12F
S夫人の肖像(デッサン)
横たわる裸婦(デッサン)
瓶のある空間(デッサン)


2009年10月19日(月)-24日(土)午前10:00-午後6:00(最終日-午後5:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)

2008年の個展
伏木田光夫油絵個展(2007年)
06年の個展(画像なし)
03年の個展
02年の個展

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