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■鼓動する日本画 CONNECT ― MOVE (2019年9月7~16日、札幌/12月22日~20年2月11日、網走/2月16日~3月31日、倶知安)

2019年09月15日 16時31分23秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 道内の日本画家7人による実行委が主催し、道内外の日本画・書・立体造形・漫画・アニメーション・イラストレーションの作家7人を招いて開く展覧会。
 昨年11月の「鼓動する日本画~CONNECT~」展から10カ月しかたっていないこともあり、全体的には、前回の展覧会を踏襲した内容というという印象が強い。確認したわけではないが、一部の出品作は重複しているのではなかろうか。
 ただし、申し訳ないことに、筆者は昨年の展示について紹介の記事を書いていないので
「ハイ! 去年のを見てね!」
と簡単に片付けるわけにもいかない。
 逆に言えば、昨年のポルトギャラリーの展示を見ていない人にとっては
「えっ、これが日本画展なわけ?」
と、驚くことは必至なので、ぜひ足を運んでもらいたいと思う。

 顔ぶれは次の通り。

 実行委員:蒼野甘夏/朝地信介/上野秀実/紅露はるか/平向功一/水野剛志/吉川聡子
 招待:阿部啓明/久保奈月/外山光男/中村あや子/松浦しおり/三瀬夏之介/ヤマモトマナブ

 実行委員については、道内で脂ののった活躍を見せている中堅日本画家がそろっていると思う。


 いまさら筆者ごときがここで論じるまでもない話だが、「日本画」というのは、明治以降に成立した新しい概念であり、日本古来の枠組みではない。
 日本画をあえて定義づければ
「にかわと岩絵の具、墨を用いて、和紙や絹に描いた絵画」
というあたりになりそうで、そこに「日本」というナショナルアイデンティティーをあえて絡ませることは、よく考えると不思議なことではある。「日本画」と「日本絵画」は、いうまでもなく、全く異なる観念であるからだ。
 したがって、異分野の作家を招いて
あらためて,日本画って何?
と問う展覧会を組織するのは、或る意味当然の問題意識であるともいえるし、出品作品がいわゆる日本画の既成概念から外れたものになっていくのも、必然的だといえる。 

 そして、これは筆者の個人的な考えだが、別に絵画の分類に国名を持ち出さなくてもさしつかえないんじゃないかという気がする。
 「日本画」というジャンルは、そういう教育機関があり、団体公募展の分類があり、画商の市場があるから、存続しているというだけのことではないのだろうか。
 とくだん論理的な必然性があってジャンルが残存しているわけではあるまい。

 まあ、しかし、そう言ってしまっては身もふたもないので、少し追記すると、筆者が昨年のポルトギャラリーの展覧会で最も驚いたのは、上野秀実さんの作品だった。
 彼は、写実的な人物の絵などを描いたら道内でも洋画・日本画の枠を取っ払っても屈指の実力の持ち主なのだが、最近は、白い不定形の立体を制作し、もっぱら壁に掛けている。
 この立体の表面のキラキラしている雲母の光沢が、上野さんにとっての日本画的なるものであり、また、北海道の雪のイメージとも共通しているのだという話を、昨年のギャラリートークのときに聞き、さすがに驚いた。
 日本画のマチエールはよく議論になるけれども、こういうかたちで北海道に結びつける人はほとんどいないだろう。

 招待組では、今回初登場と思われる三瀬夏之介さんは、日本画があるなら「東北画」だって可能ではないか等々の問題意識を展開している重要な日本画家のひとり。
 3点の出品作は、附されたテキストの長さの割には実際の作品はふつうの抽象画という印象を受けたが、日本の歴史風土を「盆地のつらなり」によって見ようという視座には興味を持った。東北で言えば、弘前、盛岡、遠野、角館、米沢、新庄、山形、福島、郡山、会津若松、これらすべてが盆地にあり、それぞれに文化をはぐくんできたからだ。

 平向さんは、なんと昨年の立体作品が子どもに壊されてしまったそうで、外にあったキャタピラを内側に入れるなど改作したのが今回の作品だそう。
 もともと無国籍ふうな絵を描く人だったが、絵のモティーフが立体化することで、ますますその傾向に拍車がかかっていると思う。


 中途半端なテキストになっているが、いったん終了。


2019年9月7日(土)~16日(月)午前10時半~午後5時(入場4時半)、会期中無休
プラニスホール(札幌市中央区北5西2 ESTA11階)
・一般500円、JRタワースクエアカード会員400円、障がい者手帳呈示者と同伴者1人、中学生以下無料




2019年12月22日(日)~20年2月11日(火)午前10時~午後4時、月曜と祝日(最終日除く)休み、年末年始(12月29日~1月3日)も休み
網走市立美術館(南6西1)
・高校生以上200円、小中学生100円。網走市とオホーツク管内大空町の小中学生は土曜日無料



・JR網走駅から1.2キロ、徒歩16分
・網走バスターミナルから330メートル、徒歩5分
(札幌・旭川発の特急列車、札幌発の都市間高速バス「ドリーミントオホーツク」、いずれも終点です)



2020年2月16日(日)~3月31日(火)午前9時~午後5時(入館4時半)、火曜休み
小川原脩記念美術館(後志管内倶知安町北6東7)
・一般500円、高校生300円、小中学生100円。初日は無料



・JR倶知安駅から約2.3キロ、徒歩30分

・ニセコバス「倶知安役場前」から約1.1キロ、徒歩14分
・道南バス「喜茂別」「伊達駅前」行きで「白樺団地」降車、約400メートル、徒歩5分
※いずれもJR倶知安駅前から乗れます


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