
昨年の「All Japan Under 40 Collections」を発展させたグループ展。道内外から、さまざままジャンルの若手20人が出品している。
グループ展というのはよくあるけれど、二つの会場で同時というのは、この展覧会が
「そんじょそこらの規模じゃないですよ!」
というのを自己主張しているようで、イイ感じだ。
まず、ほくせんギャラリーivoryへ。
こちらは、道外在住作家の作品が多い。
冒頭の画像で、手前にうつっている塊は、佐々木仁美「不変」の一部。
ブロンズ鋳造の7点組だ。
彼女は自ら鋳造することにこだわりがあるらしい。ふつうの彫刻家は原型を作るところまでが仕事で、ブロンズの扱いなどは、専門家に任せることが多いのだが。
彼女は札幌在住ときいている。
奥の壁、左側にある版画は三重県出身の平野直也のリトグラフ。
最大の作品は「標本縛-アシカショー」。
ほかに「標本縛-'10」「標本箱-クイズショー」「標本箱-コンビ」。
なんとなくおかしみが漂う。「関西のノリ」とくくってしまうと、いけないのかな。
右側は道都大中島ゼミの新進版画家、川口巧海のメゾチント。
「discipline」は、人体にロープがまいてある奇妙な作。
ほかに「清らか」「朝露」「雨上がり」「千の祈り」。銅版画ならではの静かなたたずまいが感じられる。

小崎慎介(埼玉出身)「a guidepost-1-」「a guidepost-2-」「a guidepost-3-」「a guidepost-4-」「a guidepost-5-」「a plainsphere 1」「a plainsphere 2」「a plainsphere 3」 バブルジェット、阿波和紙
わははは。おもしろい。こういうの、好きです。
わざと、だと思うが、露出不足ぎみのカラー写真にうつっているのは、夜の温泉街や商店の店先。
それも、コンビニエンスストアなどではなく、昭和52年撮影といわれれば、そうかな~と思ってしまうほど、古いたたずまいのお店なのだ。
店の周囲が闇に包まれていて、いっそう想像力をそそるのもイイ。

東影智裕(兵庫生まれ)「kangaroo(K-001)」「kangaroo(K-002)」「kangaroo(K-003)
」「cow(S-001)」「cow(S-002)」「cow(S-004)」 エポキシリジン
リアルである。
しかし、「リアル」と言ってそこで終わってしまっては思考停止である。
まず、上あごから上側しかないことに注目したい。全身や首を、なーんも考えずにこしらえると「置物」になってしまう危険性が高い。実物のようでいて、実物ではあり得ない存在の様態なのである。
さらに、ひげやまつげがない。
「まつげは一時いろいろ試してみたんですけど、やめたんです」
と東影さん。
実はこれらの作品は、写真を元に制作したものなので、細部や、写真にうつっていない側は、実物と大幅に異なっているかもしれないという。そうなると
「そもそも、リアルとは何か?」
という問いがわき上がらざるを得ない。なかなか考えさせられる作品なのだ。

黒石美奈子(山形出身)
「待ってるの」(エッチング、メゾチント、キャンバスに雁皮を裏打ち)
「どこまで行こうかしら」「∞」「何かをすかして見る」「べぇ」(エッチング、メゾチント、雁皮刷り)
ご本人のコメントに
「旅をして印象深かった風景と、幼い頃の心象風景を重ねて制作しました」
とある。
確かに、そういう画風なのだが、筆者は、「待ってるの」=画像の左手前=に、別の仕方の反応をしてしまった。
これは、アウシュビッツの前ではないのか。
高い柵があり、その中央の建物に線路が吸い込まれていく情景は、「夜と霧」の口絵や、映画「シンドラーのリスト」を、思い出してしまう。
作家はそんなつもりはないんだろうけど。

カトウタツヤ「無題」
札幌在住、6枚組みの絵画。
昔の日本絵画は、遠近法のつじつまが合わないところや、詳細を描けない部分などには、雲をたなびかせてごまかしていたが、その手法を現代によみがえらせて積極的な意味合いを持たせようとしているのが、カトウさんの絵だと思う。
つまり、ごまかす手段ではなく、西洋的な透視図法とは別の、空間の表現につながる「何か」を、出そうとしているのではないだろうか。

平井うらか(熊本出身)
「帰り道」「夢」「よあけ」。上の画像にはないが「ここにいる」の、油彩計4点。
メルヘン調の絵はこの世に多いが、単なるイラストじゃなくて、ちゃんと絵画的な世界を構築している作品は意外と少ない。
とくに「夢」は、カーテンを巻き付けたような形をしている木々といい、葉のあたりが夜空になっている点といい、ふしぎな世界だな~と感服。

奥の壁面、左側はヒグチリサ「パ・パ・パ・パン」「色菜」。
釧路出身のイラストレーター、ヒグチさんは、平面インスタレーションふうに作品を展開している。
その手前の細長い立体は、児玉陽美「親切なひと」。二十歳になったばかりという、道都大在学中の学生。もちろん、この展覧会では最若手だ。
右側は佐藤美紀子「手の詩001~008」。紙粘土、アクリル、その他。

拡大してもあまりよくわからなくてすいません。砂のような下地に、立体の両手が置かれているというシリーズ。
手のほかに、魚や星が置かれているものもある。
このほか、芦野公平(秋田県・イラスト)、野嵜貴子(千葉県・油絵)の両氏も出品している。
「たぴお」会場の模様は、次のエントリで。
2010年2月1日(月)-6日(土)11:00-7:00(最終日-6:00)
HOKUSEN Gallery ivory(同区南2西2 NC HOKUSENブロックビル4階 地図B)
□loop http://loop-art.info/index.html
■All Japan Under 40 Collections(2009年2月)
ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館 地図A)でも同時開催
□カトウタツヤ「1500cc」 http://tat1500cc.com/html/
■「グロウ アップ【GROW UP】」若手作家応援プロジェクト(2009年12月)
■加藤達哉作品展(2007年)
■版画三人展 (2009年8月)
■道都大学中島ゼミ 版's SEVEN (2008年)
■第6回学生STEP(2008年)
=川口さん
□ヒグチリサさんのサイト http://lisa.rakurakuhp.net/
□芦野公平blog http://fromjungle.exblog.jp/
□のざらし(野嵜貴子さんのサイト)http://www.atelier.cc/~no818/
札幌は良いですね。美術館やギャラリーがいっぱいあって。私は深川在住で、深川の美術館といえば東洲館があるんですが、こういう作風の若い人の作品展を私の町でもやって欲しいなあと思いました。あんまり深川ではこういうのはやらないので。。
でも、こうやってブログの中で絵が見れるだけでも幸せです。
どんどん遊びに来てくださいよ。
音江のほうの方でしたら、バスもあるし。。。
東京などだったら間違いなく通勤圏内の近さだと思います。
あと、東洲館のワタナベさんは、いろんな企画を意欲的に手がけている方です。
ほいほいさんが企画して持ち込めば、「やろう!」ってことになるかもしれませんよ。