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■荒井善則展2021“センを擦る” (7月3~25日、札幌) 7月22、23日(7)

2021年07月25日 08時31分37秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
(承前)

 旭川と長野県を拠点に、版画やインスタレーションの制作・発表に取り組んでいるベテランの荒井善則さん。
 ことし1~3月には道立旭川美術館で「荒井善則展 無意識が世界を版にする」が企画・開催されました(関連動画が YouTube にアップされているので、下の方にはりつけてあります)。

 今回の個展は同美術館での発表後初の展覧会であり、また札幌での個展となるとじつに30年ぶりになるとのこと。
 旭川でも札幌でもさまざまな現代アートのグループ展に精力的に参加してきた作家ですが、札幌での個展がそんなに久しぶりだとは、意外でした。


 ところで、筆者が見てきたかぎりでは荒井さんは、自分の考えを述べたものなどをテキストにして会場に貼り出したり案内状につづったりといったことを、あまりしない作家ですが、今回はそれらの文章が全くないどころか、なんとタイトルすらついていません。
 この20年余り、荒井さんの平面作品の大半は
「Soft Landing to Season」
という題が附されていました。
 ときには「Season」のところに地名などが入るバリエーションもありましたが、まったく別種の題の作品は、見た記憶がないのです。

 上述の、道立旭川美術館での個展に際して発刊された図録は、こんどの個展を見る際の補助線になりうることでしょう。
 赤、黄、青(緑)の単純な色彩はそれぞれ、太陽、豊穣、自然を象徴しており、東洋思想の影響を受けていること、「もの派」の李禹煥 リ ウファンの影響を受けていることなどです。


 唯一ヒントになりそうな文言「センを擦る」ですが、センは木の種類。
 おそらく、センの板や棒にインクや墨をつけて、大工さんが墨壺の糸で材木に線をひくように、ゆっくりと紙の上におろしているのでしょう。
 それらの線は、いわゆるフリーハンドの線と違い、あくまで直線性を維持していますが、微妙なかすれやこすれが表現されています。
 いわば、フリーハンドとは異なったタイプの身体性が表出しているといえましょう。
 作品は版画ですが、モノタイプに近いものだといえると思います。


 ただ、図録を読んだ際も感じたことですが、引き算に引き算を重ねた上に成立しているような李禹煥の作品とは異なり、荒井さんの版画はにぎやかでポップな印象を受けます。
 このあたり、どういう脳内転換を経てこういうイメージが産出されるのか、不思議ではあります。


2021年7月3日(土)~25日(日)正午~午後6時(最終日~4時)
Gallery Retara(札幌市中央区北1西28 MOMA Place 3階)

□荒井善則展覧会情報 http://blog.goo.ne.jp/en-gallery


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北海道リモート・ミュージアム北海道立旭川美術館「荒井善則展 無意識が世界を版にする」


荒井善則制作記録(2020年11月10日撮影)




・地下鉄東西線「円山公園」駅(T06)・円山公園駅バスターミナルから約360メートル、徒歩5分
・同「西28丁目駅」から約540メートル、徒歩7分

・ジェイアール北海道バス、中央バス「円山第一鳥居」から約690メートル、徒歩9分
※小樽・岩内方面行き都市間高速バス全便(北大経由は除く)と、手稲、銭函方面行きの全便が止まります


(この項続く) 


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