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■名木野修絵画展 (8月23日まで)

2009年08月22日 20時35分00秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 
 札幌在住の画家、名木野(なぎの)修さんが3年ぶりの個展をひらいています。

 名木野さんは身近な風景を題材に、写実的な絵を描きます。
 よくある風景画とも見えますが、光と影をとらえる確かな伎倆は、見れば見るほど味わいが増してきます。

 ところで…。

 よく印象派の概説書や画集などに、影の部分は黒っぽいだけではなく黄色や緑が入っていてナントカカントカと書いてありますが、あれってみなさん、ほんとだと思いますか?
 筆者には、アタマではわかっても、ちょっとしんじられない。
 モネやルノワールの雪景色がなんとなく暖かみを帯びて、どうもうそくさいのは、その印象派理論で描いているからではないのかと思うのです。
 影に色をつけるのはいいんですよ。ただ、そう見えるから色を載せるんじゃなくて、絵全体のトーンを考慮して色を加えるのであれば意味がないと思うんです。

 今回の名木野さんの絵で目立つのは、青の美しさです。
「よく言われますが、コバルトブルーとセルリアンブルーというありふれた絵の具しか使っていないんですよ」
 空や海だけではなく、影などに用いれば、画面全体が神秘性を増してきます。
 そして、冬景色の影は、すくなくとも筆者の目には、ほんとうに青みがかって見えるのです。
 名木野さんの絵が、写真のようにすみずみまで精緻に描写しているのとは異なって、全体のトーンが適切であるために、とてもリアルに見えるのは、そのへんにも理由があると、筆者には思われます。

 冒頭の画像、手前は「月寒公園」で、これは青はあまり使われていませんが、水面の描写が見事。波がなく、鏡のように空を反射しているところと、さざ波が立っている部分との描きわけには、大いにうなずけます。
 近景のガクアジサイとおぼしき花も、効果的です。




 右は、額のガラスに反射があって見づらいのですが、「小樽舟見坂」。
 全体を群青が覆い、いかにも雪が舞う夕闇の雰囲気が出ています。
 遠く海と空はおなじ青に溶け合っているようです。

 そのとなり「冬日」は、教室の生徒さんたちと空知管内月形町の水田地帯のほうへスケッチ旅行に出かけたときに取材したもの。
 ここでも白と青がたくみに配されて、冬山の厳しさが強調されています。
 一方、中央を流れる用水路は濃い緑に描かれているのがユニークです。


            

 中央は、今回で最も大きい「十勝岳連峰」。
 手前のいすに載せられているのが「十月の北大農場」。
 農場施設のトタン屋根の赤は、絵を壊すほど派手でなく、といって埋没してしまうほどには地味でもありません。色の彩度や配置に関して、名木野さんがいかに熟達しているかがわかる1枚です。

 このほか、近景の畑の畝のカーブがおもしろく、見る人の目を自然に中景・遠景の川へとみちびく「千歳川」、籐いすや観葉植物の質感がうまい「五月の室内」など。
 今回は水彩画やデッサンもあります。「秋の果実」などは、小包の包装などにつかう茶色の紙をいったんしわくちゃにしたものを使っています。「レトロな感じが出したかった」と作者。

 見どころの多い個展です。


 出品作は次の通り。FとPの読み間違えがあるかもしれませんが、ご容赦ください。

F100 十勝岳連峰
M30 冬日
P20 道庁
F15 窓辺
P15 月寒公園 五月の室内
M15 八月の古河講堂 十月の北大広場
P12 山河 千歳川 ゆりが原公園
P10 北大のイチョウの並木 滝野の渓流 リンゴの静物 小樽舟見坂
M10 道庁の睡蓮
10変 初雪の公園
F8 樹氷とナナカマド サッポロビール園 花ウド 赤ワインのある静物 資料館
F6 水辺のポプラ 赤いバラ 白いバラ 雪解けの川辺 植物園にて 秋の果実 ぶどう 西洋人形 北の運河
F5 道庁 バイオリンを持つ女 家路 教会とナナカマド
M5 アジサイ
F4 黄色いバラの静物 雪モミジ ゆりがはら公園 千歳・空港
F3 シュガーポットの花 ナナカマド 人形 黄色いバラの静物


2009年8月18日(火)-23日(日)10:00-18:00
スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B)


名木野修油彩展(2006年)
名木野修油彩展(2003年)


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