北海道美術ネット別館

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■ある人々の心をめぐる旅 服部篤浩展 (2014年5月6~11日、札幌)

2014年05月16日 21時57分11秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 
 実寸大をはるかに上回る大きさで描かれた人物画が6人分、並んでいる、珍しい絵画展。しかも、首から下に対して頭部は複数あり、展示期間中に入れ替えも行ったという。

 これは、心身二元論でも、着せ替え人形のコンセプトでもない。
 「私が感じ取った主観的な大きさで人間の姿を描き出したいと思ったからだ」
と画家は記す。
「対象を認識する時のイメージの大きさと絵画が表す対象との距離の関係について考えることが本展覧会のコンセプトである。作品を通じて心までの距離の存在が感じ取ることができればと思う」

 これを書き写していてハッとしたのだが、実は、大きな絵を見ようとするほど、人は絵から離れざるを得ない。
 絵が大きいからといって、イコール「親しい」ということにはならないのかもしれない。
 ただ、それはやはり、どちらかというとひねった見方であろう。
「『心までの距離』の存在を感じながら、人生を旅することができるのなら、面白いと思う。そんなふうに旅をするならば、人は実存しているサイズよりもっと大きい存在かもしれない。これが今回の作品の制作を始めたきっかけである。」
というのが、一般的で素直な受け取り方だろう。




 6人の登場人物の傍らには、風景などの絵が掛けられている。
「私が登場人物を思い起こすときに浮かぶ場面である」
 上の絵では「シロクマ 悠悠と」。
 そのとなりは自画像で「河川敷のポルノ 日常の隙間」。

 これは、共感できる。投げ捨てられたポルノ雑誌などは、予想していない場面で現れる。まさに不意打ちなのだ。

 


 登場人物Aは、「バルセロナの昼食 パラソルの下で」という絵が添えられている。
 服部さんと一緒にスペインを旅した際、偶然、アントニオ・ロペスがスケッチをしている現場と遭遇して大興奮だったという。



 それぞれの風景画(静物画)の一部はグレーで塗られている。
 この絵で言うと、フライドポテトのようなメニューの一部。
 「このグレーは登場人物の心に近づくために塗られている」
と服部さんは書いているが、筆者にはむしろ、絵に異化効果を持ち込むことで、単なる写実的な絵であることを拒否しているような意思が感じられた。




 この絵は「登場人物B」に添えられた「深夜のサービスエリア 黒の湿度」だ。
 こういう絵こそ、10年以上前にグループ展で見た服部さんの絵と共通する良さがあると、筆者には思われて仕方がない。
 「リアルな絵」「写実的な絵」を描く人はいっぱいいるが、多くの場合はそれは「技術」に過ぎない。そうではなくて、現代の都市生活と、そこからにじみ出てくる生活者の心情を、粘り強く描いている画家は、実は意外なほど少ない。筆者は、写真で撮っても別にあまり変わりないような、山野の風景画とか、アトリエの一角の静物画なんて、油絵の具で描いてどうするんだろうと思うのだが、服部さんの絵は、そのような、テクニックを外したら何も残らない絵ではない。いまを生きる私たちにとっての「リアル」が描かれているのだと思う。

 入り口の近くには「3本のバラ」「友人」「林と煙突」という小さめの絵が展示されており、それぞれ、不思議なグレーの塗られ方をしていた。




 服部さんは日高管内浦河町生まれ。
 北見工大などをへて、多摩美大大学院修了。現在は東京西郊にアトリエを借りている。
 筆者は、今回の個展を見るまで、札幌市民ギャラリーのメーン展示室で個展を開けるということを知らなかった。団体公募展やその支部展などに優先的に貸すものだとばかり思っていたのだ。
 服部さんによると、年末年始に帰省した際、問い合わせたら、3月と5月のこの時期がたまたまあいていたということだ。
 今回の個展は、この会場でなければ開けなかったであろうことは想像に難くない。こんなに天井の高い会場は、おいそれとは見つからないからだ。

 比較的オーソドックスな具象絵画でも、まだまだ可能性があることを感じた個展だった。詳細に記されたコンセプトといい、日英併記の題名といい、道内でのんきに暮らしている身にとっては新鮮であった。



2014年5月6日(火)~11日(日)午前10時~午後5時(初日午後1~6時)
札幌市民ギャラリー (中央区南2東6)


atsuhiro-hattori.com

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2 コメント

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服部篤浩です。 (服部篤浩)
2014-05-19 15:57:44
先日はお忙しい中ご来場いただきまして誠にありがとうございました。また、このような形で記事を掲載していただきましたことを重ねて御礼申し上げます。
今回久しぶりに地元北海道で個展をしてみて感じたことは、当たり前のことかもしれませんが、作品を通じて人とつながるという一つ一つの出来事に場所の違いはあまり関係無いということです。もちろん鑑賞者の数の多少はあるでしょうが。作品を楽しんで味わってもらえる人がいたなら企画した甲斐もあります。これからはもう少し短いスパンで北海道で展示をして行けたらと思いました。またお会いできる機会を楽しみにしております。
服部さんありがとうございます (ねむいヤナイ@北海道美術ネット別館)
2014-05-19 19:17:50
遅くなって申し訳ありません。
最近は、展覧会を見て回る時間以上に、ブログを書く時間が足りず、閉口です。
それと、サイトの方に大きな文字でご紹介いただき、ありがとうございました。
なんだかつたない文章で恐縮です。
また、見ることができる機会があれば、と楽しみにしております。

「企画」は、なかなか難しいですよね。といって、今回のような巨大な作品は普通のギャラリーで展示することはできないわけで、何かうってつけの作戦があれば良いですね。

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