北海道美術ネット別館

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ハコトリ(6) 弥生町・蔵で野又圭司、田村崇、塩田千春、田口行弘の作品を見る (8月30日まで)

2009年08月28日 00時05分00秒 | 展覧会の紹介-現代美術
駅前大門地区の続き

 「元町・西部地区」と総称される、函館山のふもと一帯。
 函館ではもっとも早くから開けた地区である。

 このうち、市電の停留所でいうと、「十字街」「末広町」のあたりは観光客でにぎわうが、その先の「大町」「函館どっく前」(終点です)のあたりは、名所といっても外人墓地ぐらいしかなく、ほんとうにひっそりとしている。
 時の流れが止まってしまったかのようだ。 

 この地区で、地図には「A」という記号で載っている会場「弥生町・蔵(三日月工房)」は、そんな古い住宅地の一角に、ほとんど倒れそうな風情で建っていた。
 ここでは、野又圭司・田村崇・塩田千春・田口行弘の4氏の作品が見られる。
 道内関係者は野又さんだけだが、道外勢となんら遜色なくならんでいるのが道産子としてはうれしい。
 というか、道内関係者だからとか、中央の作家だからとか、そういうものを取っ払ったフラットな展示というのが、もっとあっていいんじゃないかと痛切に思う。


 野又さんは「思考実験[20XX 日本再鎖国]」「遺跡」の2点。
 後者は、北海道立体表現展などで発表したインスタレーションで、塀で囲われた中に大きなビルが立ち並び、その外側にはみすぼらしい家が点在しているという、貧富の格差をストレートに撃ったかのような作品だ。ちなみに、それぞれの家は銅でできている。
 あらためて見ると、もちろん高層ビルのほうがりっぱなわけだが、どっちの住民がはたして幸せなんだろうかと考えてしまった。ビルはいいけれど、塀の内側じゃないか。あるいは貧乏でも自由があるのかもしれない、などなど。

 前者はわりとちいさな作品で、透明な半球の中に、風景が模してある。円形にレールが一周しており、太陽電池で列車が動く仕組みと思われるが、列車は動いていなかった。
 そして、日本がもう一度鎖国したらどうなるか考えてみてください-という意味のことが書いてあり、見に来た人が思考の結果を記せるようにノートが置いてあった。

 筆者が書いたのは
「今が鎖国中なのだ、精神の。これから開国だ!」

 若い人のネトウヨ的な排外主義やナショナリスティックなうごきには断固反対だし、「KY」なんていうことばに象徴されるように集団主義的な風潮はぜんぜん弱まってないし…
 という思いであります。

 古いはしごをのぼった部屋で見たのが塩田千春さんの映像。
 予告記事でもふれたけど、第1回の横浜トリエンナーレで最も印象的な大作インスタレーションを発表していた若手作家であり、すでに国立の美術館で個展がひらかれているという、すごい人なのだ。
 映像は、モノクロで、音声は鈴というか鐘のような音だけ。
 急角度に傾いた寝台。女性が寝ている映像と、白い寝具だけが載っているときの映像。そして女性の手や顔のアップが、断片的に繰り返されるというものだった。
 寝台の周囲には白い煙がたちこめ、なんだか古い家のなかのようでもあり、古い家の中で古い家の映像を見ているようでもあった。

 田村崇さんの彫刻は和室に置かれてあった。
 非常にリアルなネズミで、女性が悲鳴をあげそうだ。
 そのネズミが、米がびっしりと敷き詰められた長持ちや、和だんすのひきだしのなかに横たわっているのだ。
 大好物の中で死んでいるみたいで、なかなか皮肉なものを感じた。

 田口行弘さんは映像「moment-peformative installation」(2分25秒)「moment-peformative spezieren」(4分30秒)の2点だが、これが傑作で、何度もわらってしまった。個人的には、ハコトリグランプリを贈呈したいぐらいである。

 古い建物の床板を取り外し、部屋の中で立てかけたり、積み上げたり、組み立てたり、さまざまな形態にしたのを、コマ取りアニメーションに似た技法で、映像で展開している。
 2本目では、その床板が窓から街路へと飛び出し、街角や公園、さらには地下道で、三角錐になったり、動物のように先へと進んだり、とにかくユーモラスなのだ。
 やっていること自体は川俣正とか菅木志雄と似ているのだが、映像にしたことでとてもおもしろく見られるし、随所に、組み立てた床板でテニスをしたりパーティーを開いたりしている映像が挿入され、深刻さをすり抜けている。
 あらためて考えると、重たい床板を動かすのは、たいへんな労力が必要であろうが、映像はその重さを感じさせず、床板は生き物のように自由に動いている。そこがおもしろい。

 「リノベーション」というテーマで、この映像と会場は共鳴し合っているのだ

 この会場は、高水準の作品が集まっており、ハコトリに来た人は、大門の「旧カメラのニセコ」とあわせてぜひ訪れてほしい会場である。


この項続く


□公式ブログ http://hakotri.blogspot.com/

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2 コメント

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ギャラリー三日月 (怜な)
2019-07-02 14:17:36
こんにちは。

以前に私も「ギャラリー三日月」に行ったのですが、いつだったか? ネットでギャラリー三日月の閲覧で画像から「寺井浩一展」の作品が出てきました。クリックしたら北海道美術ネット別館でした。(2015,3.29) それで、私が観に行った日も分かりました。

ネットで確かめたい時には、美術ネット別館がすぐ出てきますね。 いつも いつも こちらのブログに助けていただいてます。 感謝しています。
怜なさん、いつもありがとうございます。 (ねむいヤナイ@北海道美術ネット別館)
2019-07-03 12:50:52
怜なさん、こんにちは。
こちらこそいつもありがとうございます。

最近はなにを検索してもこのブログが上位に出てくることが多くて、それでいいのかなと思ったりします。

この会場で寺井さんの絵を見るのはすてきな体験だったと思います。私もいつも案内状をいただくのですが、なかなか見に行けず、残念に思っています。

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