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■ミクニキョウコ展 秋とハモニカ(2018年10月5~14日、札幌)

2018年10月21日 20時34分36秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 アップが遅くなってすみません。

 下のリンク先を見ると、ミクニさんはひどく寡作のような印象を持たれる向きもあるかもしれないが、実際にはそんなことはなくて、これまで個展は4度ほど開いている。ただ、筆者とのタイミングが合わなかったのだ。
 「にかわ絵展」にも出品していたし、道展では会友である。
 道展では「油彩部門」に属しているが、これはおそらく便宜上で、ミクニさんは岩絵の具やアクリルなど、画材はいろいろ使っているはず。


 で、冒頭から4枚目の画像までは、メインとなる平面インスタレーション。端から端まで8メートル余りもある。

 ただ、個々のパーツは小さいので、威圧的な大作という感じではない。

 下半分を引き締めているのは、カンバスを切り抜いた山々の形。
 この稜線の形状を見て、札幌っ子、とくに中心部よりも南側で生活している人ならピンとくるだろう。左は藻岩、右は円山である。

 その上部には、雲の絵が15点ほど、矩形の小品も15点。

 それぞれ、ハーモニカを吹く少年だったり、薬屋さんでもらえるカエルのマスコットの指人形だったりを描いている。


 ほかに、小さな鍵盤楽器、緑色のテンプレート定規、黄色いバスなど。

 ミクニさんは「ひとつひとつに短いお話があるんです」と言う。
 もちろん、それを知らなくても、鑑賞にはさしつかえないだろう。
 ただ、単に身の回りのものをモチーフにするよりも、何とはなしに奥行きのようなものが感じられるのだ。



 正直なことを書くと、最初見たときには、ずいぶん微温的な世界だなと思った。
 でも、それはそれでいいのだと思いなおした。
 午後の光のような、短いまどろみのような、ちょっとした思い出のような、そんなアートがあること、それ自体はちっとも悪いことではない。

 正確な言い回しは忘れたけれど、ミクニさんは
「歩いていると、どこかの家から子どもが練習しているハモニカの音が聞こえてくることがある。そんな作品を作りたい」
という意味のことを話していた。

 共感する。
 村上春樹の「小確幸」のような、ささやかな幸福感。



 さて、会場の奥には、複数の小品をひとつの額におさめたシリーズが展示されていた。
「ちいさな空に」
「或る日の空」
「ピアノに落書き」
「2とハッカパイプ」
「ワニさんとハモニカ」

 「2とハッカパイプ」(画像の右端)は、「2」と書かれた木片?をハッカパイプとともに額におさめたもの。
 なつかしい世界ながら、数字の記号をそのままモチーフや題にしているあたりがちょっと過激というか、ふつうの絵にはない要素だと思う。


 いわゆる一般的なタブローは「午後の散歩」。
 緑色の本の中へとバクなどの動物たちが入っていくさまを描いた、楽しい絵画で、先にギャラリー門馬で開かれたグループ展「いきもの展」でも展示されていた。


2018年10月5日(金)~14日(日)午前11時~午後6時(最終日~午後5時)
ギャラリー門馬アネックス(札幌市中央区旭ケ丘2)

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