北海道美術ネット別館

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■齋藤周個展「片鱗」 (2017年6月3~11日、札幌)

2017年06月11日 11時23分46秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 下のリンク先からもわかるように、齋藤周さんは、札幌でも最も精力的に制作・発表を続けている画家のひとりであることに違いありません。
 ただし申し訳ないことに、筆者はなぜかブログを書かずじまいのことが多いのです。近年も、2013年の個展「昨日からの眺め」、14年「斎藤洪人・齋藤周 親子展」、15年の個展「かたちの心地」、16年の個展「合図」と、会場を訪れているにもかかわらず、14年の親子展の際にツイッターでアップしただけで、これについては大いに反省しています。

 ごくおおざっぱにまとめておくと、90年代後半、道展に出品していた齋藤周さんの絵は暖色の色面がさまざまに構成された半具象画でした。ゼロ年代に入り、活発に個展を開くようになると、白を背景に黄緑など明るい色の面と、線描による人物画を組み合わせ、ポップな印象を与えるようになります。また、ギャラリーの壁に直接ペインティングを施したり、キャンバスを床の上に置いたりして、既成の絵画の枠にとどまらない発表形態を試みます。
 こういう活動から筆者は、なかばたわむれに「北海道のマイクロポップ」と呼んでいます(水戸芸術館で2007年に開かれた「夏への扉」展に引っ掛けた呼称)。

 ただし、昨年の個展「合図」では、そういったいっぷう変わった展示方法がひとつもなくなり、ふつうの画家になるのかなという予感もありました。
 もっとも、額装はしない、サインは入れないという特徴は変わらないわけですが。

 ところが今年は、古い民家をリノベした会場のあちこちに、ちいさな立体も含め70点もの作品をばらばらに展示するという、めったにないスタイルの個展になりました。
 さらに、やや暗めの色彩が多いこと、これまでのアクリル絵の具ではなく大半で油絵の具を用いていることなど、齋藤周さんの経歴のなかでも大きな転機となるような個展といえそうです。


 出品総数は70点。ペン3点、アクリル16点、残りは油彩で、バルサ材を削って作られた木片のような立体も油絵の具で着彩されています。


 左側画像は、大きな作品で「今 此処に在る」。
 今回の個展で最大というだけでなく、道展退会後のキャリアの中でももっとも大きな作品のひとつと思います。
 作者が2016年の個展で、三角屋根の家をかたどった立体小品をたくさん並べていたこともあって、筆者の目には家としか見えないのですが、どうも違うらしいです。

 右の2点は上から「余韻」「残像」。
 風景とも抽象ともつかない作品は今回多いですが、この「風景と抽象の中間」という位置づけは、亡くなった父の斎藤洪人さんの画風を思い出させます。


 続いて、冒頭画像。
 もちろん机やタイプライターは作品ではありません。
 タイプライターの前は「白い間」など5点の小品。
 また、壁の絵のうち、タイプライターの右側にあるのは「発酵」。その上にあるのは「ストローク」(右)と「意思」。
 さらにタイプライターの左上の壁に「堆積」。


 古い鉄の台に載っているのは「ゲレンデ」。
 斎藤洪人さんが遺した未使用キャンバスに描いたもので、彼がよく後志管内ニセコ町の山を描いていたことと符牒が合います。ニセコは日本有数のアルペンスキー場があるからです。

 左は先ほどの「余韻」「残像」。
 ほかに、右上から順に「片鱗(アンヌプリ)」「澱みから晴れ」「入江」「発酵」「サンクチュアリ」「基底」「同系」。

 いすの上に載っている白い立体は「家的」。
 白の立体はアクリルで着彩されています。
 丁寧な扱いをするのであればさわったり持ったりすることができます。バルサ材なので軽いです。

 こうしてみると、従来の作品にくらべると暗い抽象画的な作品が多いのですが、CONTEXT-S の石神さんが
「周さんの裏側が見たい」
というリクエストをしたのも一因のようです。
 石神さんは「モノトーンで」というお願いもしたそうですが、さすがにそれはかなわなかったよう。
 とはいえ、「こんなに黒に詳しくなったのははじめて」と作家が漏らすほど、これまでとは色調が変わっているのはまちがいありません。


 これだけの点数があると、いちいちキャプションを横につけた場合、うるさい感じを見る側に与えてしまいそうです。それが理由だと思うのですが、会場では、表側に作品の配置と番号を絵で描き、裏側には題名や画材を順番に記した紙を、来場者に手渡していました。
 もっとも、絵の横に番号すら付されていないため、

作品→紙の表で場所と番号を確認→紙の裏でタイトルを確認

という面倒くさいプロセスが必要になってしまいました。
 今回のような個展なら、個々の作品にタイトルが必要なのかという気もしますが、そうはいっても、題を見ると「なるほど」という場合もあり、なかなかむずかしいところです。
 ただ、タイトル確認をあまりマメにやろうとしないことが、スムーズな鑑賞のコツだと思いました。

 もうひとつ感じたのは、作品とそうでないものとの境界線って、案外あいまいなのでは、ということ。
 先ほど指摘した、額縁やサインというのは、「さまざまな色で塗られた平面」という物体を「絵画」という制度のほうへと引き戻す力をもっています。それらが存在しない齋藤周さんの絵は、抽象化が進むほど、物体(オブジェ)へ近づいていくように見受けられます。

 絵と什器は、室内の中でどう異なるのか。考え始めると、なかなか手ごわいテーマなのかもしれません。


2017年6月3日(土)~11日(日)正午~午後7時、7、8日休み
CONTEXT-S(札幌市中央区南21西8)

shusaito.com


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