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■畑江俊明個展 on the line, at the surface 線と面の上での[デキゴト]  (2018年3月16~21日、札幌)

2018年03月21日 08時29分37秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 地下鉄南北線の真駒内駅を降りて、まっすぐ正面に向かって歩き、ラルズプラザ(スーパーマーケット)やセブンイレブンが見えてきたら、丁字路に突き当たります。それを渡って、すぐ左側にある円筒状の建物が、ギャラリー・カモカモです。
 オーナーが工芸の作家であるせいか、工芸・デザイン系の作者の個展によく使われています。

 畑江俊明さんは、昨年は2度個展を開きました。
 金属の棒を熔接して作ったシンプルな形の立体が中心でした。
 今回も、同様の作品は
「半円の構成」
「三角柱の構成」
「四角形の構成」
などが並んでいます。半円をいくつかゆるく束ねて、自由に置き換えたりずらしたりして鑑賞できるというもので、ちょっと見ると、知恵の輪の親玉のようにも見えます(はずして楽しむパズルではないのですが)。

 また、モビールも、天井からいくつもつり下がっています。

 溶接の作業は、自宅の玄関前で行っているとのことで「あまり大きな作品はできないんです」。


 しかし、なんといっても会場で目立っているのは、さまざまな色に塗り分けられた正方形の抽象絵画です。

 正方形を三つの部分に分割して、それを白や黒の正方形の上に、少しずつずらして配置した作品も並んでいます。
 壁のいちばん上部には、それらの部分そのものの形を、白い樹脂を切り抜いて貼り付けています。これらは、厚みがあるので、半立体といったほうがいいかもしれません。

 このギャラリーは、メインの壁にはニッチ(へこんだところ)があるし、手前側は窓と壁が交互にあって曲面をなしていることもあって、絵画を発表する人はあまりおらず、おもしろい眺めです。

 ニッチのある壁面のほうの絵は、似たようなかたちの紙片を組み合わせていろいろな作品に仕上げた、ある種の思考実験のようにも見えます。色合いも、鮮やかなものではなく、微妙な中間色で、あまり物のない簡素な室内空間やカフェなどに置くと、落ち着きが良さそうな感じがします。
 一方、壁側にある、3枚をひとまとめにして掛けてある絵画は、2色の配置のバリエーションによるもの。
 折り紙を2枚ずらして重ね合わせたものをいろいろ並べてみた、というふうにもみえます。こちらもシンプルで、思考実験のような楽しさがあります。

 いずれも、計算されつくした色の配置の絶妙さや、仕上げの丁寧さなどは、さすがグラフィック・デザイン畑の作者らしい見事なものです。
 ところが、畑江さんはこれがご自身で不満のよう。会場にあった小冊子にも
「(前略)制作の根底には常にデザインということがあったと思います。デザインぽいカタチと色彩というものから少しでも手業が感じられるようにとは思うのですが「見せる技」や「ほどよいゆるさ」が不足していてなかなか難しいのです」
と書いておられます。
 会場でも
 「アートの人なら、自由にポンと点を打ったりできるんだろうけど、自分はなかなかそれができなくて」
という意味のことを話していました。
 完成度の高いものをきちっと作り上げる―というのも美質のひとつだと筆者は考えますが、このあたりが畑江さんの向上心というか、制作の原動力になっているかもしれません。


2018年3月16日~21日(水)午前11時~午後6時
GALLERY kamokamo(札幌市南区真駒内幸町1)


ワークショップ・マスタード

関連記事へのリンク
畑江俊明個展 swinging with…/揺れるモノたちと… (2017年3月)

つながろう2016 Hard/Soft

Six in October (2013)






・地下鉄南北線「真駒内駅」から約720メートル、徒歩10分
・じょうてつバス、中央バス「南区役所前」から約200メートル、徒歩3分 (札幌芸術の森からの帰路、この停留所で降りると近いです)


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