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■CAI02企画展 上遠野 敏 個展 ネ・申(さる)・イ・ム・光景(~8月27日、札幌)

2011年09月14日 08時18分03秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 8月11日に札幌で見た展覧会のエントリ3本目。
 ほんとに、ベタ遅れですみません。

 この個展のことは鮮明に覚えている。
 手短に言うと、道内外各地(道内が多い)に小さな古い地蔵を置いて撮影した写真パネルがメーンで、壁にずらりと並んでいる。そして、会場の床には、地蔵が何体か設置されていた。

 これは、もちろん、いわゆる「写真展」ではなく、あちこちで雪の上などに地蔵を置いた作者の行為の記録を提示しているととらえるべきだろう。

 上遠野敏さんの関心は近年、こうした古い民俗や信仰といったものに向かっている。
 大文字の「日本」を称揚するナショナリズムではなく、民衆に根付いたささやかな信仰とか、習俗の古層とでもいうべきことがらを、じっと見つめている。

 そしておそらく、上遠野さんは
「北海道に住んでいて、日本の古層を探る」
ことのうちにひそむ「ねじれ」について、自覚的であろうと思われる。

 以前もどこかで書いたけれど、北海道は「日本」のようでいて「日本」ではない。
 筆者がいま借りている3DKのアパートは、和室が一つもない。障子や畳のない家が普通にあるのである。まして、瓦屋根とか竹林とかを見ると、懐かしさよりも、異国情緒をおぼえてしまうのだ。
 いかにも和風的なものは、わたしたち北海道人の「帰る場所」とはちょっと言いづらい。

 洞爺湖を望む雪原の上に置かれた地蔵の写真は、美しいが、何かが違っているようにも見える。
 しかし、実は、微妙なずれを宿していない地域や個人なんて、虚構じゃないかとも思う。

 「日本らしさ、日本人らしさ」という言説に決して回収できない「何か」がある北海道。その微妙なずれが、たぶん、アートなんだろう。


 今回は、作家ご本人にはお会いできなかったので、勝手な感想をつづってみました。



2011年7月23日(土)~8月27日(土)1~11pm、日曜休み、8月12日(金)~17日(水)は夏休み
CAI02(札幌市中央区大通西5 昭和ビル地下2階 地図B)※地下鉄大通駅1番出口


 以下は、CAI02のサイトからのコピペです。

オープニングパーティー 7月23日(土)19:30~22:00
ゲストに小室治夫氏、露口啓二氏、伊藤隆介氏をお迎えし、対談を行います。
司会進行 端 聡
上遠野 敏によるアーティストレクチャー「自然神の現れと神々のお供え」: 7月30日(土)19:30~21:00
アーティストトーク: 8月20日(土)19:30~21:00
クロージングライブ「マイマイのDERI-CABA!」 8月27日(土)19:00~

主催:CAI現代芸術研究所
札幌ビエンナーレ・プレ連携企画 http://www.sapporo-biennale.jp/


上遠野 敏(かとおの さとし) 略歴
1955 Born in Fukushima, Japan 福島県生まれ
2006~ professor at Sapporo City Univesity 札幌市立大学で教授

●主な個展
2006「北の創造者たちー虚実皮膜・・その後・上遠野敏」 (札幌芸術の森美術館講堂)
2003上遠野敏個展「白妙」 (ドイツCAI、ハンブルク)
1994「芸術の森美術館 インスタレーション#4 上遠野 敏」(札幌芸術の森美術館)

●主なグループ展
2009「幌内布引アートプロジェクト」幌内布引炭鉱跡(北炭旧幌内・布引立坑、三笠市)2008「ASIA PRINT ADVENTURE 2008 in Otoineppu」(高橋昭五郎彫刻の館、音威子府)
「FIX・MIX・MAX!2 現代アートのフロントライン」ギャラリー門馬、宮の森美術館、CAI02
2006「FIX・MIX・MAX! 現代アートのフロントライン(最前線)」(北海道立近代美術館、札幌)
「Interactiom相互作用」(CAI現代芸術研究所、札幌)
2005「Interactiom」相互作用(エルンスト・バーラッハ美術館、ドイツ ■帰国展
2004「Beautiful Japanese Heart Project平和の旗」(札幌コンベンションセンター、札幌市)
「赤平炭鉱アートプロジェクト」(赤平住友炭鉱旧抗口浴場、赤平市)
2003「ASIA PRINT ADVENTURE 2003」(北海道立近代美術館、札幌)
「北の創造者たち展 虚実皮膜」(札幌芸術の森美術館、札幌)
2002「The Reassurance Found in Everyday Life」(CAI現代芸術研究所、札幌)
Northern Elements」(ギャラリー門馬、札幌)
2001「さっぽろ美術展2001」(札幌市民ギャラリー)
「A BRIGHT FUTURE」(CAI現代芸術研究所、札幌)
「メッセ21 アースワーク/上遠野 敏」(岡山、香川)
「An Answer From 43°4`N 141°21`E 北日本の5人の作家達」([k3]カンプナーゲル・ハンブルク、ドイツ)
「HIGH TIDE-ラディカルな意志の現れ」(北海道立近代美術館)札幌
2000「さっぽろ美術展2000」(札幌市民ギャラリー)
「アート&ガーデンスペース2000 in滝野」(滝野丘陵すずらん公園、札幌)
「第10回北の彫刻展」(札幌彫刻美術館)
「現代美術の断面HIGH TIDEの場合」(夢創館、恵庭)
「ア・ミューズ・ランド2001、アート・体験・ミュージアム(北海道立近代美術館)

●パブリックコレクション
東京芸術大学/いわき市/東京・銀座中学校/札幌駅南口/札幌市生涯学習センター「ちえりあ」


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