初めの方ですごい展示に出合ってしまい、それはそれでもちろん良いことなのだが、正直なところ
「このペースで続いたら、こっちの身がもたんなあ」
という気持ちも少しあった。
だから、モニカ・メイヤーの次が、この人の作品でかなりホッとした。
へんてこな(ほめ言葉です)陶芸ばかりが並んでいたからだ。
見て回りながら、クスリと笑ってしまう。国際芸術祭にはそんな作品も必要だろう。
冒頭画像の左端は、壺と五重塔が合体している。
壺も五重塔もこれまでおびただしい数が作られてきただろうが、わざわざ一緒に造形した例はほとんどあるまい。

20世紀後半に入って日本では走泥社や鯉江良二らの試みなどがあり、陶芸の表現も飛躍的に広がってきている。
ただ、正面切った前衛ももちろんいいが、こういう
「何か、ヘンだぞ」
と笑わせてくれる陶芸も、あってもいいのだ。
桝本佳子の作品は、これまでの陶芸の歴史を否定した上で新たな試みをしたとか、他のジャンルに寄せていったとか、そういう方向性ではなく、従来の陶芸を踏まえた上で、それをちょっと変えて、その上で新たな作風を生んでいると思われる。
2019年秋の旅さくいん