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西宮市鳴尾浜の「看板に偽りあり」バス停(その2)

「看板に偽りあり」バス停(その1)はこちら 甲子園フェリーの旧発着場関連のブログ記事はこちら

西宮市鳴尾浜を巡る阪神バスの路線バスには、「木材センター」というバス停があります。ストリートビューはこちら

https://www.hanshin-bus.co.jp/pdf/rosenzu_all.pdf

名前からすると「鳴尾浜の中でも木材や建材を扱う業者が集中するエリアがあり、その中心に存在する進出企業の交流施設の最寄りバス停」のように取れますが、2023年時点でこれに該当する施設は鳴尾浜内にはありません。そして、周辺に立地する企業は食品関係が大半で、木材に関係するのはカリモク家具のショールームなど僅かです。

ただ、バス停のすぐ近くには「阪神木材港管理センター」と書かれた古びた標識があります。これが、「木材センター」というバス停の由来となった施設があった名残と思われます。但し、矢印の先に現実に存在するのは店舗ディスプレイ・什器・厨房器具などを扱う会社の大阪支店です。

探せば、他にも「阪神木材港」の名残のものが見つかりました。電柱とか看板とか・・・

そして、兵庫県が「2000年当時の鳴尾浜地区の工業用地の分譲のしおり」をネット上で公開してくれており、

https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk41/documents/000045558.pdf

こちらの2ページ目の「1999年2月時点の鳴尾地区周辺土地利用図」(この時点で航路廃止になっていた甲子園高速フェリーもそのまま載っています)を見ると、バスが走る臨港道路の東側に木材団地および水面貯木場があることがわかります。

かつては丸太の形で輸入されていた木材は1990年代以降現地製材で材木にしてから輸入するようにシフトし、各地にあった(東京の新木場とか大阪の住之江区平林とか)水面貯木場は遊休化し、場所によっては埋め立てられてしまいましたが、阪神木材港の場合は木材業者自体も撤退し代わりにリサイクル大手の大栄環境が進出し、木材センターも消滅したものの、バス停の利用者は周辺企業に勤める方ばかりなので「看板に偽りあり」でも誰も困らないのでしょう。

なお、鳴尾浜の埋立地は公的セクターではなく完全民間企業(阪神築港株式会社=現在の東洋建設)が手掛けたものです。阪神築港株式会社は、鳴尾浜を埋め立てて一大工業港を造ることを目的に1929年に山下汽船と南満州鉄道の共同出資で設立されたものです。ただその後の時勢の流れから埋立工事は長年中断しており、1966年に再開してから12年後の1978年にようやく「鳴尾浜産業センター」として東洋建設が本格的に民間向けの販売を開始し、1987年に事業が完了しました。

同社の公式サイトに経緯が詳しく掲載されています。

https://www.toyo-const.co.jp/history/phase1

https://www.toyo-const.co.jp/history/phase3

https://www.toyo-const.co.jp/history/phase4

https://www.toyo-const.co.jp/history/phase5

ちなみに、甲子園高速フェリーの運航は東洋建設が発案したもので、就航した1971年から数年間は同社は山下汽船の後身である山下新日本汽船の系列会社でした。

(この項おわり)

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