まなびの途中

色々な仕事をしてまいりました。
色々な出会いがありました。
勘違いもありますが、
学んだことを書いてまいります。

医療崩壊に関する本。学べます。

2006年07月28日 | 本・映画
正直、自分でも、どのように考えていったらいいのかわからない。
ただ、漫然と、不信感をもっている。
医療の進歩は、華々しく、一方で、この高齢者社会。寿命が延びる。
また我々も、この現代で、救われる若い命を、何度も見聞きしている。
高度医療は、生死の実態を、何か曖昧にもさせている気もする。

もちろん、深いダメージを与える「過誤」も多い。
残されたもの、未だその病から身を苛まされている者。
事が命に関わり、その人間の一生の問題にもなりうる、医療。
生半可な言葉で、到底語れるものではない。

医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か 小松秀樹著 朝日新聞社刊

小松氏は、虎の門病院泌尿器科部長という現職の方。
決して、医療側の立場から、一方的に書こうとしたものでもなく、
システムとして、どのように、「病」に立ち向かえるか、
具体的な事例をふんだんに、各国の現状を踏まえ、
現場の現状を細かく検証しながら、対策にまで踏み込んで書いておられます。

医療水準。この言葉ほど、この本を読んで、不明確なものはないんだと、
理解いたしました。
個々の人間の数だけ、症状があって、時代が進むほど、「病名」は加速度的に
増えていく。
一人の医者が、長きに渡ってその人生を歩む中で、過酷な労働時間の中で、
全部の医者が、同じ知識、技量を持ち合えるというのは、「幻想」である。

医療費抑制の為に、考えられないほど悪化した労働環境を強いられている病院。
離散する若い医師。「偽医師が年収2000万円」という報道の中で、
「病院」勤務者は、アルバイトをこなさなければ、家庭ももてない。
開業医を促進する「日本医師会」。

患者本意、医療費抑制の末、末期状態に陥った「イギリス」。
2000年英国犯罪調査によれば、看護従事者は保安要員についで2番目に
「暴行」を受ける危険度が高い。
患者と接する医療従事者は3殻年に一度は患者から「暴力」を受けている。
すでに「医師の士気の破滅的崩壊」が真剣に討議されている。
もちろん、看護士への成り手は、無い。

マスコミが「世論」という名の下に、システムに目をむけることなく、
医療過誤を引き起こした人間を「断罪」する。
深夜100もの病床で、2名の看護士。起こり得る「事件」。
捜査の名の下に、取調べと称して何日も身柄を拘束する警察。
多くの医療機関が、結果的に、医療過誤をシステム的に内包し始めている。

当然ながら、旧態依然とした「医局」の傲慢さ。
技量不足の医者。非常識な医療過誤。
救済されえなかった過去を持つ我々の怨念は、声を上げざるをえなかった理由を
持っている。
マスコミと警察による、現場「踏み込み」「犯人特定」。
喝采をあびることもあり、溜飲を下げることもあるが、
悲しい現実として、産婦人科、外科への成り手が、急減し始める。

あの「エイズ訴訟」。
安部被告、郡司被告を「悪の首謀者」として、断罪しまくった時期があった。
2005年に行われた「HIV感染症と血友病 回顧と展望」のシンポジウム。
東京訴訟の原告の中心であった川田氏。郡司氏。訴訟弁護団の徳永氏が参加。

 「産官学(産官医)が癒着して、エイズの被害が生まれた」という、いわゆる
 薬害エイズ神話は間違いであり、そこを乗り越えないと、真実も、今後に役立つ
 教訓も導き出せない、という点では、一致した。
 ジャーナリズムともども、犯人探しに終始してしまい、今もその後遺症が残る。」

厚労省も、専門的に「現場」を知らない。
ヒステリックな「後遺症」を抱えて、非現実的な対策しか講じられない。
行政も病院も、末期症状を呈している。

思った以上に「医者」は窮地に立たされている。
社会に投げかける言葉も持ち合わせていない。
最悪のタイミングで、最悪の医療過誤が発生する。
どんどん「下僕」に成り下がっている、士気が下がっている。
まるで、今の教育現場を見ている気がする。

何が、公共サービスを劣化、破壊していくのか。
そのものか、ヒステリックなマスコミか我々か?
真剣に育てていかねば、単なる「利用者」として、目をそらしていくと、
「格差医療」の侵入は、多分、防げないであろう。

教育も、その通り、格差教育が叫ばれて久しい。
金のあるものが、そのサービスを、「正当な対価」という名分で、享受する。
医療も、必ずや、今のままでは、そっちへ行く。

意外にも、マスコミの報道のあり方が、この国の「何か」を劣化、破壊していく
そんな歴史に、我々は、立ち会っているのかもしれない。

あらゆる意味で、押さえておきたい「本」です。
ちゃんと対策も提言されていて、参考になります。お奨めです。


 


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