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国産ワクチンの重要性

2021-07-30 | 日記

国内でのワクチン開発を取材した番組を見ていたら、日本国内のMERSコロナウイルスに対するワクチン研究・開発が数年前に治験一歩手前まで漕ぎ付けていたことを知った。そのRNAワクチンという新しいタイプのワクチン開発は、MERS感染の終息による国の支援の縮小によって、そこで止まってしまったのだという。その時にもう少し先に進んでいたら、今回の新型コロナ感染拡大に当たって国内のRNAワクチン開発は海外に並行して進んでいたかも知れない。

 「いつものこと」と言えばそれまでだが、やはり日本政府の先見性の欠如を確認した思いだ。RNAワクチンの特徴を科学的に捉え、その実現が従来のワクチンに比べてどのような優れた点を持つのかを理解していれば、それが新規の病原体に対して従来よりも早く開発・生産できる可能性を分かったはず。さらにウイルスの変異に対してもRNAの配列を変異に合わせて変えるだけで対応できることも当然理解できていたはずである。そのような新しいワクチンの製造法を確立するためには、MERS終息後でも他のウイルス、特に変異しやすいウイルスなどを対象に開発援助を続けるべきだったと思う。

 今回の新型コロナ・パンデミックを受けて、それも1年近く過ぎてから「ワクチンを国の安全保障対策と位置付けて・・・」と言い出すような感覚では、とても科学分野で世界をリードする国には成れるはずもない。明治時代に、戦場での飛行機の有用性を想定して模型飛行機の飛行成功と原理を示して「動力装置を備え人を載せる飛行器の開発」に資金援助を求めた二宮忠八に対し、日本陸軍が「まず、それに成功してから来なさい」と答えたという話がある。もし彼に資金援助をしていれば、ライト兄弟より先に日本で「人を載せた飛行器」が発明されていた可能性は十分にあると思う。

 結局、彼は自力で資金を得る必要を悟り、約十年をかけてその目途を付けた矢先にライト兄弟の成功を知ることになった。英国王立航空協会は自国の展示場へ忠八の「玉虫型飛行器」の模型を展示し、彼のことを「ライト兄弟より先に飛行機の原理を発見した人物」と紹介しているという。国産RNAワクチンの必要性についての日本政府の態度も、「成功してから来なさい」という態度に通じるところがあるように感じる。先見性と実現性を論理的に考察し、その研究開発の重要性と一日も早い実現を支援すべきだという理念が完全に欠落しているのは日本政府の「伝統」なのだろうか。「目先の利益にだけ投資する」というよりも、当面の政治課題への目先の非難を避けるためにだけ、研究支援を行っている「ふりをする」という態度が見える。そのように思える例は、ワクチン以外にも耳にしてきた。

 かつて別の政権下で行われた自業種分けの際、スーパーコンピューターの研究開発に対して「一番じゃなきゃダメですか? 二番ではダメですか?」と政府側が訊ねた話は有名だ。だが、それを訊ねる政治家よりも、答える政府事務官の過失が大きいと感じた。かれらは予算の必要性を示すべき責任があるからだ。答える側は政府の事務官僚も「世界で一番なんです」の繰り返ししかできないように思えた。それが如何に重要な技術で、将来の日本の在り方をどのように変える必要不可欠な技術となり得るのか」を説明しようという姿勢は感じられなかったし、「先進技術の研究開発を止めないことの重要性」の認識が欠けていたと感じる。必然的に「世界一になれるんです」「一番じゃないとダメなんですか?」という水掛け論になったのだ。莫大な予算を請求しておきながら、科学技術省としてその計画を進める「重要な意義」を十分に理解できていないと感じられた。

 今や当時よりも数十倍以上の性能を持ったスーパーコンピューターは気象の解析や予報、感染症拡大の予測、様々な情報解析に不可欠なものとなっており、その有用性は明らかだ。その有用性を説明できなかった時点で、科学技術省の官僚は「コンピューターの性能に関する順位付けにしか興味が無いのだ」と感じた。官僚が科学技術の有用性を説明する時に、「自分は科学者・専門家じゃないから」という言い逃れは効かない。彼らの役割は科学技術の原理を説明することではなく、「その機器の性能や技術の必要性と、実際的に何ができるようしたいのか」を説明するなのだ。日本の国の進むべき方向を考える点において、彼らは間違いなく最高レベルの責任を担う「専門家集団」であり、専門家として受け答えする責任を負っている。

 何か起きた時にいつも、彼らは「科学技術の世界的順位付け」「ノーベル賞の授賞者が何人」「金メダルが何人」などの表面的な所だけが関心事であり、科学や教育の実質的でより重大なところについては理解もせず責任も担おうとしない人々だと感じられてしまう。感染症へのワクチン政策も、世論が沸騰して止む無く「態度」を示したということだろうか。それでは「同じことの繰り返し」なのだが・・・。

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