愚ダメ記、真誤付き、思い津記

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宇宙船外作業の難しさ

2022-03-30 | 日記

何かの番組で宇宙での船外作業の困難さや、宇宙船のアームで目標物を捕まえる難しさを解説していた。そんな時に必ず聞くのが「時速2万数千キロのスピードで飛びながら・・・」とか、「時速2万キロを超えるスピードで飛ぶ目標物に接近する・・・」という解説だ。例によって「時速2万8千キロで並走する・・・」と解説し始めた。

それを聞いていて、「縁側でおばあさんが繕い物をしようと、針に糸を通す姿」を思い浮かべた。おばあさんも、針も糸も、実は地球が回転する速度で一緒に廻って(並走)している。緯度によるが、赤道近くにいるとすれば地球一周4万キロを24時間で一周する速度、つまり時速1700キロくらいで移動している計算になる。宇宙から(例えば月から)見れば、おばあさんは糸や針と時速1700キロで並走しながら「針の穴に糸を通す」という至難の技に(勇敢にも)挑戦し、さらにその後は針と指を至近距離で複雑に動かしながら布を縫い合わせる作業すらもこなしている。

 また「戦闘機の空中給油の映像」をも思い出す。時速360kmという低速でも秒速100mの風に相当する空気抵抗を受け、飛行機の機体や給油ノズル・パイプの少しの変化が巨大台風以上の風によって瞬時に上下左右に振られる危険の中で、それは行われている。2機の飛行機が繋がったままで秒速100mの暴風に浮かんでいるなんて、空気の大きな抵抗を受け時速数百キロで飛ぶ2機の間で行う空中給油の危険性は、はるかに高いと感じる。

 宇宙船が持つ2万数千キロというスピードは地球に対しての速度であって、捕まえようとする目標物との相対速度では無い。そもそも宇宙を飛ぶ物体は対地球速度によって軌道の高さが決まるはずなので、同じ軌道にある時点でそれほど大きな速度の違いは無いはず。気道の高さが同じでも、軌道の向きが異なれば相対速度はかなりの大きさになるが、もし秒速数十メートルという相対速度で移動していれば「テレビでよく見る映像」の画面内を数秒も掛からず通り過ぎてしまうだろう。ゆっくりと近づき捕まえる映像など撮れるわけが無い。もし相対速度の大きな質量を捕まえれば、宇宙船のアーム自体が損傷するか、目標物の運動量によって宇宙船の軌道にも影響しかねない。

 この国の報道に関わる人々は何故その「当然のこと」に気付かないのだろう。宇宙での作業の危険性は「宇宙船の小さな破壊・損傷も、真空の宇宙では重大な空気漏れに繋がる」ことだろうし、船外作業の危険性は「宇宙服の損傷の危険」に加えて「無重力では小さな力がそのまま自分や物体の加速に変わってしまう(つまり少しでも宇宙船を押せば、自分が弾き飛ばされ宇宙に漂う)」ことと考えるが、そちらの方にはほとんど触れようとしない。

「時速2万キロ以上」という言葉がインパクトを持つと想像して選ぶのだと考えるが、「問題は相対速度にある」ということを、少し考える力が有る小学生なら知っている。なぜもっと真実味の高い解説をしないのかと感じてしまう。見せかけの言葉の仰々しさより、実際的な「本当の危険性」を正しく伝えることに注力して欲しい。日頃、政府などに対して「もっと根拠を示して科学的に説明しろ」と口をそろえる割には、自分達がより科学的に説明する責任については「随分と疎い」。「それがこの国の報道の実態だ」と、もうそろそろ気付いて欲しいのだが、それは「そんなにも難しい?」ことなのだろうか。

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