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Smith, Chloris 10

ウィリアム・スミス (fl. 1596)
『クロリス』
ソネット10
(「わたしはメドゥーサか?」)

わたしはメドゥーサか? あの人がわたしから飛ぶように逃げるなんて?
わたしはナイル川で生まれたワニなのか?
愛しいクロリスは恐れているのか? わたしが
セイレーンの歌を歌って彼女を破滅させる、とでも?
もし、これらの理由であの人が
わたしを退けたいなら、(わたしはやましいところのない愛を誓っているのだが、)
わたしをただにらめばいい。それでわたしの悪しき幸せは防ぐことができ、
あの人が罪や汚名を着ることもない。
しかし、わたしが恐ろしい化け物ではないと知ってるのだから、
わたしが、他の男たちと同じような姿、
最高神ユピテル地上に降りてきて、変身して、
あの人を誘惑してもおかしくないような姿をしているとわかっているのだから、
どうしてあの人はわたしの心を悲しみで満たすのだろう?
常に愛し、仕えることを誓っているこのわたしの魂を?

* * *
William Smith
Chloris
Sonnet 10

Am I a Gorgon? that she doth me flie,
Or was I hatched in the riuer Nyle?
Or doth my Chloris stand in doubt that I
With Syren songs do seeke hir to beguyle?
If any one of these she can obiect
Gainst me which chaste affected loue protest,
Then might my fortunes by hir frownes be checkt,
And blamelesse she from scandall free might rest.
But seeing I am no hideous monster borne,
But haue that shape which other men do beare,
Which forme great Iupiter did neuer scorne,
Amongst hir subiects heere on earth to weare.
Why should she then that soule with sorrow fill,
Which vowed hath to loue and serue her still.

* * *
タイトル
Chloris
花の神の名(ギリシャ神話)。

(参照)
http://www.theoi.com/Nymphe/NympheKhloris.html

1 Gorgon
ギリシャ・ローマ神話に登場する三人姉妹の
いずれかひとり。髪が蛇でできていて、その姿を
見た人は石になる。三人のうち、ペルセウスに
殺されるメドゥーサがもっとも有名。彼女以外は
死なない存在。死んだ彼女の首は女神アテナの盾に。

(参照)
オウィディウス『変身物語』4巻。

4 Syren
= Siren. 女性と頭(と上半身)と鳥のからだを
もつ海の精。魔力のある歌を歌って船を難破させる。

(参照)
ホメロス『オデュッセイア』12巻
オウィディウス『変身物語』5巻

10-12
最高神ゼウス=ユピテルが、いろいろな姿に変身して
人間の女の子と関係をもったことへの言及。
(変身したのは、黄金の雨、白鳥、美しい牛などで、
ここの内容とは少し違うが。)

* * *
17世紀に入って恋愛ソネットが廃れた、というのは、
この手の作品にみんな飽きた、ということだろう。

* * *
英語テクストは次のページより。
http://www.luminarium.org/renascence-editions/
smith1.html

* * *
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