横須賀うわまち病院心臓血管外科

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腹部大動脈瘤のフォローアップと適切な手術時期・タイミング

2018-12-07 04:55:06 | 心臓病の治療
胸と腹に大動脈瘤が発見され、緊急性を要するとのことで胸の方を手術しました。手術後の経過は良好です。
発見からすでに4年半ほど経過していますが、腹部大動脈瘤のほうは、そのまま放置していても血管は問題ないのでしょうか?
違う視点で検査した方が良いことはありますか?



 腹部大動脈瘤は直径3cm以上の大動脈の拡張を診断されますが、手術適応とするのは、最低でも4cm以上です。特に破裂の危険性が高いのが5cmを超えた場合なので、積極的に手術を進めるのは一般には5cm以上です。年齢や患者さんの状態などによって小さいうちに手術を受ける患者さんもいますが、それは個別の判断になります。横須賀市立うわまち病院では、腹部大動脈瘤が発見される患者さんの多くは70代後半以後の方が多いので、今後経過観察して拡大した時の手術を受ける年齢がより高齢になるよりは小さめでも体力のあるうちに手術した方が成績が良いとの判断で4cm以上で手術を受ける患者さんも少なくありませんし、また形態的に部分的に突出する嚢状瘤の場合も小さいうちに手術することが多いです。

 この経過観察の中で、手術しましょう、と判断するのは、拡大傾向がある場合です。拡大傾向があり、それでもまだ手術するサイズに達しない場合は、観察期間を短くしてより注意深い観察をします。サイズの測定にはやはりCTが正確です。腹部エコーで観察していて拡大傾向がある、と判断され紹介されてくる患者さんも少なくありませんが、どうしても腹部エコーでは測定誤差が出やすいので、最終的にはCTで判断する必要があります。通常は半年から一年に一回の検査で十分と思います。

 胸部を早期に手術をして、腹部は経過観察している、ということは、適切に瘤の形態やサイズを判断しての結果でしょうから、その的確な判断を信じて定期的な検査を継続して受けていれば心配ないと思います。しかしながら、セカンドオピニオンといって他の専門医の意見も聞いてみたい、といって受診にみえる患者さんも少なからずいます。多くの場合は、現在診てもらっている主治医の判断を尊重して、「そのままで大丈夫です」とか「今の主治医のもとで治療をうけて間違いないです」との意見を伝えて安心されることが多いです。安心する為に他の意見も聞くというのも悪くありません。

 他に注意することといえば、腹部大動脈瘤が出来る、出来やすいことには多くの場合、原因や体質、基礎疾患があります。もし喫煙している場合は、他の動脈疾患の予防も考慮して禁煙が必要です。また高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病をお持ちの患者さんも多いので、こちらも検査治療が必要です。というのも、腹部大動脈瘤の治療を受けた患者さんは、長生きしていないことが多いのです。この最も大きな理由は、手術を受けた患者さんが高齢であるとことが多い為、癌などほかの病気にもかかりやすいということが多いということなのですが、もう一つの理由が心筋梗塞や脳梗塞、心不全などの循環器疾患に非常になりやすいということがあるためです。特に腹部大動脈瘤の原因には遺伝的体質も関係してます。兄弟の発症率は3倍とも言われている為、兄弟や親子に動脈疾患がないか、必ず聴取して場合によっては家族を検査することも少なくありません。また、手術後も、そうした循環器疾患にならないか、定期的に検査をしています。横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では、そうした疾患そのものだけではなく、総合的にその患者さんの人生が安心して送れるような観点から診療しています。
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