後藤一山(ごとういっさん)の『のぞきからくり』

思いつくままにつらつらと。
ブログタイトルで笑ってしまった人はかなりの○○オタクです(笑)。

公共工事悪玉論

2008-08-06 10:57:13 | 建築
大雨で下水道増水、5人流され不明…東京・豊島区(読売新聞)

何度もいいますが、水の恐ろしさについて一般の人は認識が薄すぎます。
下水道工事というものは衛生面の改善という側面もさることながら、治水という側面が大きいということをほとんどの方がご存じない。
かくいう私も役所入庁時に
「なんで河川課が下水道部に所属してるの?」
という程度の認識でしたから、大差ありません。
下水道は全てどこかの河川に繋がっていて、どこかの川があふれそうになったら下水道管に一気に放流されるわけで、その中はわかりやすくいえば放水時の消防車のホースの状態になっているのです。
しかもそういう状態は決して珍しい事態ではなくて日常的にほうぼうで起こっているわけで、目に触れることがないので意識されていないだけです。
大雨の後にマンホールの蓋のあたりから屎尿の異臭がすることがありますが、あれは近隣の河川から雨水が放流されたと考えてほぼ間違いありません。
映画「第三の男」のクライマックスシーンのような状態の下水道管を想像している人にとっては信じられないかも知れませんが、メンテナンスの必要性だけであのような太い下水道管が整備されているわけではないのです。
ですからお気の毒ですが今回のケースは全員お亡くなりになっていると思われます。

このように命懸けで働いているにもかかわらず、土建屋の評価って世間的には低いんですよね。
これは下水道のメンテナンスに当たっている公務員も同様なんですが、下水道管での作業をする人たちは予防接種を定期的に行なっています。
さまざまな感染症になるおそれがありますので。
そういう観点からいっても命懸けの仕事なんです。

公務員バッシングや土建屋バッシングがあまりにも跋扈するもので、愚痴も含めて書いてみました。

何でもかんでもメーカーのせいか?

2008-08-05 09:23:31 | 建築
国交省が同様施設に殺到防止策要請、ビッグサイトの事故受け(読売新聞)

怪我をされた方には同情しますが、これではメーカーや管理者が悪者で、エスカレーターに殺到した人の責任は一切問わないということなんでしょう。
しかしこれは明らかにおかしい。
幼稚園や小学校で同様の事故が起きたわけではないのですから。
こういうときにこそ「自己責任」という言葉を使うべきで、イラクで人質になった日本人に対して使う言葉ではありません(ああいう場合、思想的背景は関係なくて彼らが日本人である以上救出は国家の責任です)。
実態として国交省が望むような管理ができるはずもなく、上から締め付ければ何でも解決すると思っている官僚の傲慢以外の何ものでもなく、如何に国交省の役人が無能かということを繰り返し露呈しただけです。
うまくいけばこれで新たな利権を創り出そうとしている可能性もあり、われわれは注視が必要です。
平気で「(仮称)エスカレーター設置者管理財団」くらいは創りそうですからね。

何度もいいますが

2008-07-30 08:29:38 | 建築
河川の弱点重なる 神戸・都賀川4人死亡(神戸新聞)

治水ということに関して一般市民は舐めきっています。
姉歯のマンションなんかよりよほど危ない。
「脱ダム」なんて耳障りのいいことばっかり言っていたのでは駄目です。
この川にはダムは要らないでしょうが、都合のいいことばかり書き立てる新聞屋とはよほど気楽な商売なんでしょう。

間違いだらけの記事

2008-07-10 10:52:24 | 建築
壁崩れ、教室にキノコ「地震で死んでまう」 大阪の中学(朝日新聞)

記事中の数字は文部科学省の恣意的なデータ操作にごまかされています。
文科省のいう7.3%という数字は危機的な数字には違いありませんが、あまり意味のない数字です。
文科省の数字を私が独自で分析した結果、全国の自治体で最も校舎の耐震化が遅れているのは、茨城県のひたちなか市です。
先日地震のあった名護市もワースト七位にランクイン。
記事中の高石市はワースト八十八位です。

工事着工時期も間違いで、早くても再来年になります。
なので完成は下手をするとその翌年。
つまり今から三年後なので現在の中学一年生が卒業してからという間の抜けた話です。
これは補助金行政の関係でどうしてもそうならざるを得ないのです。
いわゆるお役所仕事の悪弊です。
自治体の文教施設の耐震補強事業は以下の三ヵ年(計画選定を入れると四ヵ年)に分かれます。

零 初年度
まず耐震診断をする学校を選定して耐震診断費の予算取りをした上で補助金を都道府県経由で国(文科省)に申請します。
都道府県によっては独自の補助金制度を持っていますので、その申請も同時に行います(以下同じなので都道府県の補助については割愛します)。

一 翌年度
耐震診断をした結果、耐震補強が必要だとされた施設について、耐震補強計画を策定し、外部判定委員の構造の判定(お墨付き)を得た上で、それに基づいて耐震補強設計をするため実施設計費を予算取りをして補助金申請をします。

二 翌々年度
実施設計を行います。
ここに到って初めて学校サイドの要望を聞きます。
そうすると前年度の判定(お墨付き)によって計画された耐力壁が授業の障壁となるなどの学校側からクレームがついたりするので、再度構造計算をやり直して計画変更を行い、それに基づいて耐震補強の実施設計を行い、もう一度判定(お墨付き)を取り直して工事費を積算し、工事費の補助金を申請します。

三 翌々々年度
工事の入札を行い、工事を発注して契約を締結し、着工します。

文章が冗長でわかりにくいかもしれませんが(役所仕事そのものが冗長だから?)、上記の「二」と「三」の過程がもっとも無駄な部分です。
はじめに「補助金ありき」「補助金の根拠ありき」というところからくる弊害です。
普通に考えれば計画の翌年度には発注できるはずです。

記事が出ることによって当該自治体が耐震補強を推進するきっかけになるのはよいことですが、大手新聞の記者クラブ詰の記者に取材能力や情報分析能力がないことがよくわかる記事です。

なお、私の分析は近いうちにどこかにアップします。

沖縄は地震に無頓着

2008-07-09 13:00:16 | 建築
沖永良部島近海でM6・0の地震、与論島で震度5弱(読売新聞)

「沖縄には地震がない」という半ば信仰のようなものがあり、学校の耐震化も全国で最低レヴェルです。
沖縄は車社会なのでマンションに駐車場は必須で、ピロティ方式のマンションが多いのですが、その柱の細さには驚かされます。
台風銀座なだけあって、建物の風対策は万全なんですが。
津波の問題もあり、台風以外の災害に対して最も危険な地域が沖縄県だと前々から感じています。
なお、行政的には「鹿児島県」沖永良部島ですが、地理的・歴史的には琉球・沖縄です。

事情は複層的

2008-07-03 09:50:32 | 建築
今も続く重層下請けが若者の現場離れを招く

根本にあるのは過度の価格競争です。
元請の価格低落が末端の業者や労働者に皺寄せとなるわけです。
公共事業の場合でいうと以下のスパイラルで価格が下がっていきます
安値落札が行われる
  ↓
翌年度の予算が削られる
  ↓
削られた予定価格を大幅に下回る安値落札が行われる
  ↓
翌年度の予算がさらに削られる
  ↓
(以下繰り返し)
地方において談合が事実上黙認されていたのは第一次産業を除くと主な産業は建設業だったからです。
特に農閑期の就業先として地域経済を支えてきたわけです。
いきなり正論を言われても・・・というのが経営者の本音だと思います。

安値受注が目立つようになったのは、談合防止の観点から一般競争入札が導入されるようになってさらに顕著になっています。
競争性・透明性を重視するあまり、役所工事の実績のない会社(=積算能力のない会社)が参入してきて、受注してから大赤字、というケースが多いようです。
その会社が赤字、というだけで済めばいいんですが、VEによって品質を落としたり、手抜き工事などをされたのでは結局被害をこうむるのは市民です。
談合撲滅も結構ですが、純朴な正義感だけで世の中が上手くいくわけではないという観点も発注者側はわかっていただきたいものです。

仕方がないのだが・・・

2008-07-02 16:12:43 | 建築
歌舞伎町火災、ビル会社役員ら5人猶予付き有罪…東京地裁(読売新聞)

こういう事案の場合、刑法上は業務上過失致死傷罪しかないのでこの程度の量刑と判決になるのは現行法上やむをえないのですが、不特定多数の利用する建築物の管理者や設置者に対する刑罰は、もっと厳しくするべきだと考えます。
この事故の後、消防法が改正されて罰則が厳しくなりましたが(「懲役一年以下・罰金五十万円以下」から「懲役三年以下・罰金三百万円以下」に)、まだまだきつくするべきです。
一般的に法定刑の最高が三年以下だと、初犯の場合執行猶予がつくことが多く(普通再犯はあり得ない)、いかに過失罪だとはいえ、発生する被害が甚大だからです。

かわいそう・・・

2008-06-26 13:49:48 | 建築
社長「350(万円)で」…代理人350円で落札(神戸新聞)

入札結果はこちら
お気の毒なまでに燦然と光り輝いています。
私の会社もこの種の間違いをやったことがあります。
うちの場合は指名停止の道を選びました。
別にその行政だけに依存していたわけではなかったからです。
でもこの会社はそういうわけにはいかなかったのでしょう。

私に言わせれば落札金額を間違えただけで契約不履行と同様に指名停止にするという行政処分は、あまりに厳しすぎるような気がします(ほとんどの行政がそうなんですが)。
指名停止はやむをえないとしても最短六ヶ月という赤穂市の規則は酷に過ぎると思います。
契約をしたのに履行しないというのとは明らかに落差があるのではないか。
私はそう考えます。

よくわからんが

2008-06-20 10:21:58 | 建築
管詰まりガス逆流、渋谷・温泉爆発から1年(朝日新聞)

こういうのが設計瑕疵でしょう。
なんで施工者の名前が出て設計者の名前が出ないのかがわからん。
施工者が大手だから叩きやすいので記事にしたの?
という風に読めてしまいますよね、この記事。

東京・渋谷のスパ爆発:ガス抜き配管、開業前に設計変更 苦情で直線→U字(毎日新聞)
見えぬ責任長い1年 『シエスパ』爆発事故(東京新聞)


毎日の記事は「設計施工」、東京の記事はより明確に「設計」と書いてあります。
朝日のこの記事を書いた記者は勉強不足だったということですね。

耐震診断のむなしさ

2008-06-18 11:25:34 | 建築
岩手・宮城内陸地震:大崎市立上野目小、普通校舎の被害深刻 別棟で授業再開 /宮城

ここでしつこいくらいに繰り返していますが、結局のところこういうことです。
06年度に同市が行った耐震診断では、構造耐震指標(Is値)が1・0で「危険性が低い」に該当。耐震化工事の対象にならなかった。(中略)
県教委によると、Is値は阪神大震災直後の95年10月に制定された耐震改修促進法に基づく指標で「倒壊または崩壊の危険性」を示す。0・6以上が「危険性が低い」に該当する。建物の強度や老朽化の程度に基づき判断するため、地盤の固さなど地形の特徴によって0・6以上でも被害が大きくなる場合もあるという。文部科学省施設助成課は「0・6以上でも倒壊や崩壊した例はある」と説明している。
これは耐震診断を行った設計事務所が間違えていたわけでも、施工者が常軌を越える手抜きをしたわけでもないと思います。
すなわち、「形あるものはいつかは壊れる」という当たり前のことを再認識することです。