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2014年06月29日 | Weblog
先日から、雑誌「一個人」のwebサイト内のブログコーナーで、「「後藤元気が語る! 将棋の世界」というのが始まりました。
内容的には、NHK将棋講座テキストに連載している「渋谷系日誌」を、もうひと回り緩くした感じでしょうか。軌道に乗ってきたら図面を使って簡単な講座風のものもやっていこうと思ってます。講座といっても難しいことではなく(と言いつつ本当は一番難しいことなのかもしれないけど)、将棋の根本的な考え方や判断基準などをうまいこと表現できたらなぁとか。
ブログの反響が大きくなれば、もしかしたら本誌でも将棋の特集を組んでもらえるかもしれません。
まあそれとは別に、「一個人」は幅広いジャンルの趣味を取り扱う雑誌なので、この機会に新しい趣味を見つけるのも楽しいかと思います。

もちろん当ブログも緩々で続けます。僕は天邪鬼なので、むしろこっちの更新が増える可能性すらあります。変わらずご愛顧のほどお願いいたします。
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NHK将棋講座2011年5月号 渋谷系日誌

2014年06月09日 | Weblog

【某月某日】
 第69期A級順位戦の日程がすべて終わった日。深夜……いや正確には翌朝の新宿で、関係者数人がワイワイ騒ぎながら次々にホッピーやらハイボールやらを空けていた。その面子には久保利明二冠がおり、ついさっきまで森内俊之九段もいた。
 ほんの数時間前に目を赤くしながら盤を挟んでいた二人が同席するのは珍しいが、勝った森内九段は羽生善治名人への挑戦権を獲得。久保二冠は敗れたものの、他局の結果により残留が決まるという幸運があった。
 いや、積み重ねてきたうえでの結果だから、幸運という言葉は適切ではないのかもしれない。6月から始まり3月に終わったリーグ戦を振り返ると、盤上だけでなく盤外の様々な言葉、表情もひとつの線になっていたように思えてくる。

【某月某日】
 昨年末のこと。タイトル戦の対局場へ向かう新幹線で、木村一基八段と席が隣になった。ちょうどこの頃は「将棋世界 for iPad」が発売されたばかりで、僕が取り出した文明の利器に木村八段は興味津々の様子。
 ご存知ない方のために補足すると「iPad」とはパソコンを小さめにしたような機械。直感的に触ったままで操作できるため「3歳児でも猫でも使える」という挑発的な売り文句で登場し、実際に猫が楽しんでいる映像も公開された。
 この「iPad」を使ってとんでもないことを実現したのが「将棋世界 for iPad」。一番の長所は、図面の駒が動くことだ。▲7六歩△3四歩▲2六歩と符号ばかり並んでいては、頭の中で追いきるのは面倒。それを視覚的に解決した画期的なスグレモノなのである。
 つんつんつんと触って図面を動かす木村八段。「すごいすごい、便利な時代になったもんだ」と感心していたのだが、しばらくしてページをめくる手が止まった。どうやら、動かそうとしても動かないものがあるようなのだ。
 画面に向かって突いたり、はじいたり、揺らしたり。何を熱心にやっているのだろうとのぞきこむと、そこにはA級順位戦の星取表が載っている。「図面だけじゃなくて、ここも動かせたらいいのに」。そうつぶやきながら、木村八段は何度も自分の黒星を触っていた。

【某月某日】
 年が明けてまだ間もないころ、都内某所の小さな居酒屋で渡辺明竜王を囲んだ宴席があった。大の渡辺ファンである紳士に「これから、60期も70期もタイトルをとらなきゃいかん」と発破をかけられた渡辺竜王。「いや、それは現実的に無理筋でしょう」と冷静に答えて、ちびりと焼酎の水割りに口をつける。
 そんなやりとりが何度か続いたあと、渡辺竜王は何かを発散するように焼酎水割りのコップを一気に空にして「くぁー、でも名人戦には出てみたいなぁ……」ともらした。酒があまり強くない彼の突発的な行動と、そのあとに続いた言葉。
 この先の棋士人生で、どのくらいの実績を積めるのかなんて分からない。ひっかかりなく言葉に出せるのは、手が届くかもしれない範囲での願望だけ。未来は誰に対しても平等に、その時点での過不足ない答えを用意している。

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NHK将棋講座テキストで連載している「渋谷系日誌」です。
このときはまだ【某月某日】(いまは【某日某所】)だったり、文体も常体だったりで毛色が少し違いますね。2011年ということはもう3年前。
一番上のエピソードは、小暮さんを中心にしたジャンジャンの話。なぜ名前が出なかったかというと、小暮さんの説明でスペースが埋まってしまいそうだったからです(笑)
ふたつめは、たぶん第23期竜王戦の第6局の移動中のこと。みっつめの都内某所は、たしか阿佐ヶ谷の居酒屋。焼きうどんが美味しいお店でした。振り返って見てみると、感慨深いものがありますな。
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