お仕事ブログ

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13分

2011年09月29日 | Weblog

(こ、これは……)


(とうっ!)


(ニャーって言ったらめくるように)

というわけで、浦野七段の新版3手詰ハンドブックです。僕はさっきタイムトライアルやって13分でした。ひっかかったのは、115番。しばらくたったら、もう一度チャレンジします。

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以下は近況など。


(リトルエデンのJRA最後のレース。このあとは園田に行く予定らしいです。森のぶ先生、よろしくお願いします)


(ペンクラブ大賞のお祝いでいただきました。嬉しかったです)

最近は仕事の合間に、25周年ドラクエをやっています。やはりドラクエ3は最強ですね。
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第35期棋王戦▲橋本崇載七段-△山崎隆之七段(敗者復活戦)

2011年09月11日 | Weblog
【第1譜】▽始まりのゴング
 特別対局室に現れた山崎はスッと上座についた。年齢は橋本より2歳年長で、奨励会入会も2年早い。マスクをして具合が悪そうなのは毎度のことだ。
ほどなく橋本も入室し、記録係に灰皿と空気清浄機を頼んだ。最近は対局室で煙草を吸う棋士も少ない。開始直後、始まりのゴングを鳴らすように缶コーヒーのプルタブを押し上げた橋本は、すぐに前傾姿勢になった。山崎は右に左に揺れている。

 山崎は先手番なら相掛かり、後手番では一手損角換わりを主軸にしている。準決勝では相掛かり引き飛車棒銀で佐藤康光九段に敗れたが、局後に「ハッキリ駄目と理解するまでは指し続けます」と話していた。相手に狙い撃ちされる危うさの中で高い勝率を挙げているのは、山崎の地力の証明といえる。
 後手番一手損角換わりは、自ら手を遅らせることで駒組みの幅を広げる作戦。先手にとっては、手得をどこに生かすかが命題となる。橋本は途中図のように9筋の位を取り、手得を目に見える形で残した。

 指了図▲5八金は昼食休憩を挟んで指された。山崎の出前は無かったが、以前「対局中は食欲が無いのですが食べなきゃとは思っています」と話していた。外で軽く済ませるのだろうか。
 一方の橋本は力強く、ととろせいろ大盛りを頼んでいた。こちらは会館内の控え室で、他の対局の棋士と一緒にとる。

【第2譜】▽橋本作戦勝ち
 両者の過去の対戦は山崎5勝、橋本3勝。面白いのは、後手番を持った方が7勝1敗と大きく勝ち越していること。どちらも受けが強いため、相手の攻めを待ち構える後手番のほうが指しやすいのかもしれない。

 指し始め図からの△6二金に、橋本は「たまげた。△7二金以外は意味が無いと思ったので」と率直な感想を漏らした。先手の9筋の位に反発するのであれば、△7二金~△9二香~△9一飛から、突き上げていくしかない。他の手順では9筋の位が残り、必然的に先手作戦勝ちになると見ていたのだ。金を7二に上がらなければいけないのは、△9一飛から△9四歩▲同歩△同香と動いたときに、▲9二歩△同飛▲8三角の筋を消すため。6二金は何の防ぎにもなっていない。

 山崎も「△6二金は予定変更。△8一飛と指したのだから、当然△7二金でなければいけない」と、これを認めた。先手の銀が8八にいるので、端は固い。ならば相手が▲7七銀と上がるのを待って端を攻めようと考えたのだが、さすがに虫が良すぎた。▲7七銀型ではなく、機敏に銀冠に組まれた。
 指了図は、橋本いわく「端の位を取った完璧銀冠」。上部の厚みはもちろんのこと、玉の広さも際立っている。はっきりと先手が作戦勝ちになった。

【第3譜】獲物を狙う仔ライオン
 指し始め図を前にして、橋本は頭をグルングルンと動かしながら、なめ回すように盤面を眺めている。髪の色は金、茶、そして少しの黒が混ざり合っており、まるでライオンのたてがみ…いや落ち着きのない所作に、そこまでの風格はない。大人になりきれない仔ライオンが、獲物を前にウロウロと歩き回っているような感じだろうか。

 局面は大を付けてもいいくらいの作戦勝ち。9筋の位と銀冠、手得を最大限に生かすことが出来ている。しかし、橋本は悩んでいた。作戦勝ちを優勢に結びつける順が見えてこないのだ。
「▲8八玉と上がり、相手に攻めさせたいところなんですが…」と橋本。山崎は「▲8八玉には△6五歩▲同歩△同桂▲同桂△同銀と行くかもしれません。そこで▲6六歩なら△5六歩と勝負します」と話し、▲8八玉ではなく▲4七金を指摘した。これなら△6五歩から動かれても、最後の△5六歩が成立しない。

 整理すると指し始め図からは▲4七金が良く、次に▲8八玉と入城すれば万全。後手は6筋か8筋で桂交換するくらいだが、タイミングを見て反撃すれば陣形の差を生かすことができた。

 本譜は47分考え、▲4五歩からの仕掛けを決行。飛車捨ての強手で後手陣の欠陥をとがめに行ったのだが…。

【第4譜】▽まさかの攻め合い
 橋本が大の付く作戦勝ちから、派手な技を繰り出した指し始め図。▲2四飛はあまり見ない筋だが、△同銀なら▲4四角から▲6二角成で、駒をボロボロと取ることが出来る。したがって△2三歩の受けは仕方ない。
 飛車先の歩を切ったのは大きく、控え室では先手良しの声が出ていた。……しかし驚くべきことに、実際の形勢は逆になっていた。強襲は成立せず、さっきまでのリードが、いつに間にか吹き飛んでいたのだ。

 局後、橋本は技を掛けに行ったことを大いに悔やんだ。「せっかくの作戦勝ちなのに、なぜこんなことになったのか。私は▲2八飛に対する△4一飛を軽視していました。まさか、そこから攻め合いに来るとは…」。
山崎も「準決勝の佐藤九段戦でもひどい作戦負けになって、今日も全然駄目なのかと思っていました。仕掛けられずに陣形を整えられていたら苦しかったです」。
 そこからは、お互いが負けた準決勝の話に道がそれた。山崎が「杉本七段との将棋、最後は詰んでたんやろ?」と軽口を叩けば、橋本も「そっちは序盤からひどかった。こっちの準決勝は今日の将棋よりずっと良かった」と返す。こういったやり取りは仲の良さと対抗心が垣間見えて面白い。

【第5譜】正統派の橋本将棋
 見かけによらないと言ったら失礼になるかもしれないが、橋本の将棋はプロ間でも正統派と評価されている。姿良く立って自然に間合いを詰め、そのまま面で一本取る剣道の達人がそのイメージ。しかし本局では相手の構えが崩れすぎていたため、気が急いてしまっていたようだ。

 橋本は指し始め図の△4一飛を甘く見ていた。自分だけ攻めまくる展開になると踏んで仕掛けたのに、この一手で攻め合いに持ち込まれてしまった。それも分の悪い攻め合いに。
 山崎の狙いは単純な△4六歩~△4七歩成。橋本玉は7九にいるため、一直線の攻め合いは横から飛車を成り込まれる展開になる。玉の脇が滅法弱いのだ。

 △4一飛に対して受けに回ろうにも、ピッタリした手がない。そもそも橋本が一歩損のこの局面で、▲4八飛や▲4七歩のように一方的に利かされる手を指す姿は想像できない。
 ▲1五歩からの攻めは部分的に見れば非常に厳しいが、相手に攻めさせられている意味合いが強い。利かすだけ利かして打ち込んだ▲5一角に△5二金も良い判断。▲7三角成なら△4七歩成から飛車を成り込む順が回ってくる。

 ▲5一飛と打ち込まれた指了図。山崎は形勢の好転を感じていた。

【第6譜】▽怪獣山崎
 山崎の将棋は、よく言えば大胆。誤解を恐れずに言えば大雑把なところがある。とはいっても決して読みが荒くてミスが多いというわけではない。大きな枠で考えて、盤面全体を飲み込めるかどうかを瞬時に考え……いや、考えるよりも感じるといったほうが実像に近いかもしれない。
 例えるなら、懐石料理を少しずつ上品に食べるのではなく、怪獣が大きな口で何でも丸呑みにするような印象。パックリとやって味や舌触りを確かめ、良い手は飲み込み、不要な手は吐き出す。元が面倒くさがりなので良くないものを食べて具合が悪くなることもあるが、それでもどうにか消化してしまうだけの胃腸の強さが持ち味だ。
 指し始め図からの△4五銀について「良くなったと思って前に出てしまいました。△4三銀のほうが良かった」と反省していたが、本譜でもまだ後手良し。この将棋はすでに山崎の体内に入ったかに見えた。
 しかし指了図の一手前の△4七歩成は良くなかった。ここは△2五銀直と目障りな桂を払っておけば後手玉に寄り付きが無かった。
 金を逃げずに迫る▲4四桂は渾身の勝負手。一度は離れた形勢が、再び接近してきた。橋本はスッと手洗いに立つ。部屋を出る間際、襖のへりをパンと叩いた。思わぬ好転、興奮を隠せない。

【第7譜】形勢接近
 指し始め図の▲4四桂を着手して橋本は席を立った。残された山崎は「なんだ、なんだよ……ひどいな」と漏らし、自らに呆れたのか薄く笑う。先に2五の桂を外しておけば、こんなことにはならなかったのに。
 橋本が前かがみで、アゴを突き出すようにして戻ってきた。山崎は首を2度振ったあとに、強く自分の頬を張る。ピシッと乾いた音が特別対局室に響く。その音に反応してビクッと顔を上げた橋本は、赤く染まった頬に一瞥くれてから、ことさら大きな音を立てて鼻をかんだ。

 図からの△4三金左は盤上この一手。代えて△5八との攻め合いは、▲3二桂成△同金に▲3三歩の叩きが厳しい。
 数手進み、金頭に△4六歩と叩かれたところで、橋本が「いや、わからん」と大きな声を出した。山崎も「うん、わからんな」と、かすれた声で返事をする。橋本は大きく身を乗り出し、盤の半分くらいを隠してしまっている。山崎は頬を膨らませたり、唇をとがらせたりで動きが大きい。まるで子供大会の光景だ。
 ▲3一歩成に14分使い、橋本は残り12分。指了図、山崎玉は上部に逃げようとている。局後に「ここはもう自信が無い」と話したように、形勢は接近していた。橋本が、次の手を指すまでは。

【第8譜】煙草の味
 橋本は平成6年に関東で奨励会に入り、平成7年、3級のときに関西に移籍した。山崎はすでに三段リーグ入りを決めていたため、両者は奨励会で対戦していない。

 関西に移籍する少し前、代々木駅裏手のゲームセンター近くで、橋本と二人で仲間が出てくるのを待っていたときのこと。ガードレールに寄りかかって、「あのね、最近テレビで、カッコイイ煙草の吸い方を見たんすよ」と、橋本は親指と人差し指をくっつけて口元に持っていく仕草をしてみせた。まだ12歳、煙草の味を想像するように目を細めている。

 指し始め図からの▲5三成桂で、形勢は再び山崎に傾いた。本局一番の駒音で△4四玉と上がられ、もう後手玉の脱出は防げない。
 図からは▲4五歩が優った。以下△3五歩▲5三成桂△3四玉▲4三成桂△同金▲4四金△同金▲同歩となれば、次の△5四飛成が受けにくい。厳密にはそこで△2七桂とすれば後手が残しているようだが、実戦ならどう転んだか分からない。

 △2八桂成を見た橋本は体を起こし、ゆったりとした動作で煙草を一本取り出した。人差し指と中指で器用に挟み、静かに火を付ける。細く紫煙をくゆらせてから灰皿に落とし、大きな声で投了を告げた。

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