凄い芝居を見た。シアターグリーンで催された劇団俳小公演「殺し屋ジョー」(作/トレイシー・レッツ、演出/シライケイタ)だ。狭い舞台で裏切り、エゴ、性欲が剥き出しになり、怒号と暴力が飛び交う。俳優たちは生傷を負うばかりか、女優は全裸になる、男優はおしっこを漏らす。そこまですることないだろと思われる位の演技とアクションが全編を貫いた2時間10分。いつも小劇場の芝居が長すぎると文句を云っているけど、ここまで凄いともっと見たくなる。そして、この芝居はこんな長い芝居なのに出演者がたった五人と云うことだ。五人で2時間10分。五人が五人、密度の濃い芝居が要求されたし、俳優陣は全員それに応えていた。これが何処かの小劇場の様に十人、二十人も登場人物がいたらそうはならない。集客の為にただただ出演者を増やす演出家よ、死んでしまえ。この芝居は五人とも特別有名な俳優ではないけど、集客が難しいといわれる土曜の夜でも噂が噂を読んで補助席が出る程の超満員だったのだから。こんな芝居を見た後は飲みたくなる。折角池袋に来たのだから、劇場からは同じ池袋でもかなり離れているけど、以前ウチの芝居に出てくれた女優のSさんがバイトしているオデン屋に行ってみることにする。芝居の興奮は芝居をやっている人にしか分かって貰えない。処が残念なことに今日はSさんがお休み。それでもこの店の女将さんだってウチの芝居を見に来てくれたし、俺もこの店に二度ほど来たことがあるから女将さんとも顔見知りだと思って、そのままカウンターに坐ろうとしたら、「後30分ほどで閉めますけどいいですか?」と女将さんに言われる。後30分って?まだ9時半過ぎじゃない?ええっ?そんな早く閉める店だったっけ?だったらいいよと内心の声で呟きつつ店を出る。私も店をやっているから分かるけど、「後30分」はイチゲン客を追っ払う口実だ。つまり俺はイチゲン客と見られた訳だけど、店に入った時に「××(私の名前)ですけど」と名乗ったのに。私と同年代の女将さんは耳が遠くなって聞こえなかったのか?それ以前に私のことを覚えていなかったのか?すっかり芝居の興奮が冷めてしまった私は、もう新宿あたりで飲む気力を失って電車帰宅。録画しておいた妹が出演している「詐欺の子」を観る。妹やイッセー尾形などベテランと中村蒼と云う人気俳優を使ってのドキュメンタリードラマ。意欲的作品だった。★テアトロジャージャン第15回公演「緑のサイクリング」は無事千秋楽を迎えることが出来ました。本当に有り難うございました。尚、第16回公演は7月10日(水)～7月15日(月・祝)で「ナイチンゲール症候群(仮)」(作演出・桃井章)を予定しております。詳細は後日。ご期待下さい。