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★ 『灰と幻想のグリムガル』11巻・感想 父と子と、死と生と

2017年08月16日 | ★その他


『灰と幻想のグリムガル level.11 あの時それぞれの道で夢を見た』
 
(著:十文字青 先生/イラスト:白井鋭利 先生)
 

 作品紹介ページ(試し読みあり)

 グォレラの襲撃を迎え撃つも、苦境に陥るハルヒロたち。
 そこで起きた衝撃の出来事に悲しみを覚える間もなく、戦い続けますが・・・

 と始まる第11巻。
 倒しても倒しても次々現れるグォレラの群れに、ハルヒロたちは消耗してゆき、
 もはや絶体絶命化といった状況にまで追い込まれ、息苦しい展開が続きます。

 一方、逃走中のランタは、彼らしいしぶとさで今を生き抜いていたものの、
 ついにタカサギに追いつかれてしまい、こちらも大ピンチ・・・
 といった感じに、それぞれの苦境が描かれていました。

 
 そして、ハルヒロたちに訪れる試練の時。
 ジェシーの行動がもたらす未来に希望はあるのか?
 パーティ各人の心情に、変化はないのか?

 ランタとタカサギとの関係も気になりつつ、重大な局面を迎える今巻。
 メリイの戸惑いと、ハルヒロの覚悟に注目せざるを得ませんね。

 

 

以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)

 

  

 

【ネタバレ感想】

●窒息しそうなほどの連戦

 苛烈を極めるグォレラとの戦い。

 メリイの身に起きた出来事を顧みる暇もないまま、戦い続けるハルヒロたち。
 倒しても倒しても次々に現れる敵が、皆の気力体力を削るギリギリの戦いとなります。

 リーダーだから余計なことを考えている場合じゃないと思うハルヒロからは、
 責任感の強さと同時に、目の前の悲劇から意識をそらそうとする切なさを感じましたね。
 ある種の現実逃避のような、そうした心情。

 この戦いで成長を見せたクザクも、だいぶ疲弊していて、他の皆も同様。
 それでも戦い続けなければいけないのが、厳しく、辛く、息苦しい所でした。

 もしかして全滅まであり得るか?
 と緊迫ムードが漂うものの、ジェシーたちの介入から形勢逆転して、
 あっけない幕切れに至っていたのは、失ったものに釣り合わない不条理感があります。

 

 
●ランタの戦い

 タカサギから逃げるランタ。

 フォルガンから抜け出し、逃走を続けるランタでしたが、食事の問題に直面しつつ、
 カエルを捕えて食べるなんて場面が描かれていたのは、なかなか面白い所。

 その後、タカサギに追いつかれ、間の抜けた見つかり方をするランタには笑いましたが、
 やはり実力差はハッキリしていて、苦しい戦いを強いられながらも、なぜフォルガンを
 抜けたのか尋ねられるランタの返答は、興味深いものでありました。

 ランタにとってフォルガンは居心地の良い場所だった。
 けれど、そのまま染まり切って、フォルガンを好きになってしまったら、自分ではなくなる
 といったようなことを述べていて、このあたりにランタの強い自我を感じましたね。

 そして、ランタをフォルガンから抜けさせる動機の根底に、モグゾーとの約束があることは
 彼にとって、モグゾーの存在がいかに特別であるかを思わせます。

 ランタは他のメンバーから嫌われていることを自覚していて(マナトは少し違いましたが)、
 その中で、モグゾーだけは「不思議なやつだった」と評価して、親しみを覚えていた様子。
 そんなモグゾーとの思い出が、フォルガン抜けを決意させる原動力だったのは感慨深い。

 また、ハルヒロに関しても、嫌われているのは当然としても、あれこれ背負わせ過ぎたかも
 と反省していたのは、ランタの成長を感じさせ、今後の彼の関わり方を期待させますね。
 あと、ゾディアックんの“成長”も楽しかった。

 

 
●ハルヒロの苦悩

 メリイへの想い。

 メリイの名前を呼んでしまい、現実へ引き戻されるように懊悩するハルヒロ。
 ジェシーの作戦の結果、彼女を失ったことが頭によぎりつつも、元々は自分が失敗したため
 招いた結果だと考えて己を責めてしまうあたり、何とも言えない苦さがあります。

 それから、「君の手を強く握りたかった」や「力いっぱい抱きしめたかった」など、
 メリイへの想いを心の中で語っていたのが、印象深かった。

 ただでさえ、仲間の死に対して精神的に限界近くにあったハルヒロが、
 大事な人を失ったという事実の重さを痛感します。

 しかし、ここでジェシーから1つの提案があり、前巻の予想通りの展開に話が進むことに。
 これについては賛否両論ありそうですけど、難しい所ですね。

 

 
●死と生の問題

 蘇生という奇跡・・・

 事務的というか、感情のこもってない言葉で、死を扱うジェシー。
 自分の死にすらも興味なさげなあたりに、何かしら異常性を感じてしまいます。

 これに関しては、以前の彼はこんな風ではなかったように思えるのですよね。
 10巻冒頭で死に瀕した彼は、生きることを願ったからこそ、ここにいるわけで・・・

 となると、彼に施された“蘇生”が、そうした変化をもたらした可能性は高そう。
 それは、なかなか死ねない体になったことの反動なのか、はたまた、多くの記憶を
 共有することによる自我の希薄さから来るものなのか、大いに気になります。

 なぜなら、同じことがメリイにも施されるわけで、ジェシーの異様さに気付いている
 ハルヒロたちが、そのデメリットを気にして二の足を踏むのも納得というもの。

 何より、メリイ自身が「よかった」と思えなかったとしたら?
 というのは、大きな課題になりそうですね。

 そして、ジェシーの行なった儀式のグロテスクさが、今後の不安としてつきまといます。
 もし、ハルヒロが命を落としたとしたら、今度はメリイが同じ行動に出るのでは・・・
 なんて考えて、身震いしちゃいましたよ。

 
 

●父と子と

 父親との関係。

・ランタの場合
 元世界でのランタは、父親との関係が希薄だったようで、そのことで荒れてもいて、
 おかげで母親との関係も険悪になっていたことが描かれていました。

 ありがちな不運なのかもしれませんが、それでもランタにとっては大事なこと。
 ゆえに、“父親”の存在を無意識にでも求めてしまう部分はあるのかもしれませんね。

 タカサギとのやりとりも、師匠という以上に父親と接する息子のような
 雰囲気を感じましたし、何よりもランタを追いかけてきたタカサギの“親心”に、
 ランタが感じ入る場面には、まさに父子の関係を見た気がします。

 
・メリイの場合
 元の世界でのメリイの父親は、穏やかな人柄で、娘をビデオカメラに記録するのが
 趣味の子煩悩な人物だったものの、事故で亡くなってしまったのだとか・・・

 それが影響しているのか、彼女はどこか上の空で生きている風でもあって、
 ハカマダくんとのエピソードでは、危うさを感じてしまいました。

 とはいえ、相手を傷つけないために気づかった結果、より傷つけることになった
 不器用さを抱えていることがわかりますし、そこからは彼女の優しさを汲み取れます。
 いずれにせよ、ランタもメリイも、父親の存在が大きかったことを感じさせますね。

 
 

●ジェシーの記憶

 メリイが視るジェシーの記憶。

 10巻でも語られていたジェシーの過去を覗き見るメリイ。
 しかし、それ以外にも、アゲハだのヤスマだの、知らない人物たちの記憶が 
 次々と浮かび上がってくるビジョンは、興味深くも不吉なものがありました。

 これらすべてが、ジェシーの中にあった記憶、これまで“生き返った”者達の記憶
 だとして、それを視たメリイが自分を見失いつつあったことが、気になります。

 また、一匹の鼠へ行きつく記憶の意味することは何なのか?
 これは完全に妄想ですが、何者かが鼠を使って、“蘇生”の実験を行なった?
 その結果、宿主を変えながら記憶を受け継ぐ、得体のしれないモノが生まれた?

 もしかすると、“不死の王”と何かしら関係のあったりするのかも?
 ジェシーは“不死の王”の本名らしきものを知っていましたし、「蘇生」と「不死」
 という生命の神秘に関する部分も共通していますし・・・

 まさか、ジェシー(だったモノ)が“不死の王”という可能性も無きにしも非ず?
 けれどジェシーは、“不死の王”の名前を呼んでいましたし、別人と考えるべきかな。
 などなど、色々と妄想してしまいます。

 
 

●ハルヒロの覚悟

 メリイの変化と周囲の反応。

・「死んだ者は、蘇らないぞ」
 セトラがハルヒロに語り掛けたその言葉は真理。
 しかし、その不可逆の現象が起きようとしているときに、
 セトラはハルヒロに1つの重大な決断を迫っていました。

 イジワルに考えると、ハルヒロの心に気付いたセトラが、メリイを邪魔に思った
 とも言えますが、やはりそれ以上に、メリイが別の何かに変わってしまうことを
 恐れての進言だったのでしょうね。

 ハルヒロが誰を想っているのか、気付いてしまったセトラにとっては、
 色々と辛いことになりそうですが・・・
 

・メリイ自身の戸惑い
 襲撃してきた敵に応戦するハルヒロたち。
 当然、メリイも参加することになりますが、この時点では
 今までと変わらない彼女で、それだけに安心感がありました。

 しかし、その後の窮地に陥った戦いでは、やはりジェシーのような行動をとり、
 大きな変化を見せていて、そのことに一同が唖然としたり、ユメがメリイから
 目をそらすなど、周囲の反応に不穏な気配が高まります。

 何より、メリイ自身がそんな自分に戸惑っていて、混乱している様子。
 この時の彼女の心中がどのようなものかは語られませんけど、
 大きな不安の中にいることは、間違いないでしょうね。

 
・ハルヒロの決意と、明日への出発
 だからこそ、ここでハルヒロが手を差しのべていたのは、救いだったのではないかと。
 彼は覚悟を決め、全てを受け容れると考えていたのが、頼もしかった。

 ジェシーから提案されたときには迷っていたハルヒロ。
 それでも心を決め、確固たる意志をもってメリイの手を引っ張っていたのは、
 とても立派なことですよね。

 メリイの変化は、ハルヒロたちに様々な影響をもたらしそうですが、
 これが物語にどう関わってゆくのか・・・ ますます今後も楽しみです!

 それにしても、あとがきで次巻は「明るく楽しい」内容になるとか書かれてますけど、
 はたして信じてもよろしいのでしょうかね? 期待してますよ!

 

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